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龍の少年と二度目の襲撃

始まりました第三幕、ようやく移動を開始した魔殺家の面々に待ち受けるものとは?

「今日も空が青いなぁ~」


雲一つない快晴、銀色の瞳は天高くどこまでも続く青空を見上げていた。

少年は瞳と同じ銀色の一対の翼を背中に生やしていたが今は休ませるようにそれを閉じ、複雑な紋様の魔法陣の上に寝そべりながらゆったりと空中散歩を楽しんでいた。


「この前、大暴れしたせいでどの街でもすっかりお尋ね者扱いだし…つーか最初に喧嘩売ってきたのはアイツらじゃねーかよ…何でこっちに全面的に非があることになってんだよ」


少年は銀色の鱗に覆われた尻尾をユラユラと揺らすと小さく溜め息を漏らす。

何故、少年が指名手配になっているのかというと、それは数日前に遡る。

その日も呑気に空中散歩を楽しんでいた少年は突然何者かに翼を撃ち抜かれ撃墜された。

それを獲物を狩る好機と捉えた愚かな狩人たちが集団で襲いかかってきた。

その卑怯なやり方に激怒した少年は狩人たちもろとも周辺を一瞬で焦土へと変え、その後も怒りは収まらず三日三晩暴れ続けた結果、被害を受けた多数の種族によって指名手配されるまでになってしまったため、今はこうして誰にも見つからないように透明になれる魔術を自身に掛けて空を漂っていたのだった。


「何か世界がひっくり返るような面白そうな事でも起こらないかねぇ…」


普通であればそんな事はまず起こらない、少年自身もそんな事は百も承知だった。

異種・同種間での戦争が頻発するこの世界で国家の転覆などは当たり前のように起こるが世界ごと転覆するような事は起こらない、それが(なが)時間(とき)この世界を見続けてきた少年の結論だった。

少年のこの世界への諦めにも似た些細な一言、しかし、これまた気まぐれに少年のその願いを神様が聞いたのかそれは何の前触れもなく、突如として少年の目の前に現れた。


「こんにちは」


「は?」


突如、空を漂う少年の眼前に1人の女性が音もなく現れた。

女性は彼のような翼も持たず、それどころか空を飛ぶための魔術を使うこともなく宙に浮いていた。

見たところ彼女は人類(ヒューマン)、数百年を生きてきた少年でも生身の人類が空を飛ぶなど見たことも聞いたこともない。

それが己のすぐ(そば)で起こったことに少年は一瞬理解が追いつかず目を(しばた)かせた。


「あまり時間が無いので、ちょっと一緒に来てください」


「ひゅ…人類(ヒューマン)がどうやってこんな所に!?つーか何で不可視化の魔術を使ってる俺が見える⁉︎」


すると、少年の前に唐突に現れた女性は、彼が考える間も無く腕を掴まれると重力に従ってゆっくりと落下し始める。


「えっ…あっ…ちょっ…離せよ!!」


「それは無理な相談ですね。私たちは貴方に尋ねたい事が山の様にあるので少々お付き合いください」


「イヤイヤイヤ!!そういうのじゃなくてこのままじゃ、地面にぶつかるから!!」


少年は慌てて女性の手を引き離そうとするが、その華奢な見た目からは想像もつかない程の握力で腕をガッチリと掴まれ逃げ出すことはできなかった。

そうしている間にも身体は地上に向けて落下していく。

少年の耳に入るヒュウゥゥゥゥッという風を切る音が落下速度の上昇と共に大きくなる。


「大丈夫です。私たちのいる真下は湖ですから」


「そういう問題じゃないから!水だってこんな高さから落ちれば死ぬから!」


そう言って2人が口論している間にも下に見える湖が大きくなっていく。

それはつまり、水面に激突するまでに時間がないということだった。

そんな切羽詰まった状態でありながらも女性は至って冷静に話しかけてくる。


「残念ですが、途中下車はできませんので諦めてください」


彼女は死ぬかもしれないという可能性を恐れていないのか、少年の腕を掴む手に更に力を込めて瞳に感情を宿さない口元だけの笑みを浮かべる。

彼女の表情に少年は得体の知れない物への恐怖を感じていた。

次に襲ったのは首筋への軽い衝撃。

それと共に少年の視界は暗転し、意識は彼方へ飛んでゆく。


「やっと大人しくなってくれましたね」


少年の首筋に手刀を落とし気絶させた女性は少年を抱き締めるような体勢になると、すぐさま着水方法を考える。

しかし、少年の持つ翼で安全に着陸する事が可能だったことを彼女は今の今まで失念していた。


「あー…失敗しました…彼に取って代わる良い着水方法が思いつきませんね」


そう呟くと同時にドパァンと大きな音を立てて着水する。

女性と少年が頭から湖へと落下した衝撃で波一つ無かった水面は大きく歪み、彼女たちの着水点を中心に高々と水柱を立てると散った水飛沫に太陽が反射して綺麗な虹を創りあげたのだった。



「ギャーッ!…夢…でもなさそうだな…」


軽くうなされていた少年が再び目を覚ました時、まず目に飛び込んできたのは、見慣れない装飾品で彩られた一室だった。

その不思議な空間に警戒しつつ自分の周囲を用心深く観察する。


「ここ…どこだ?」


辺りを見回すと自分の住んでる世界のものとは何から何まで明らかに違う。

木でも、石でも、金属でも無い異質な白い壁。

文字のようなものが並び、時々その謎の配列が変化する異質な箱。

少年の目に飛び込んでくる物は、どれも彼が見た事の無い物ばかりだった。


「…何だこれ?」


少年が気になり手に取ったのは、手を伸ばせばすぐ届くところに置いてあった細長い長方体に無数の突起が付いた黒色の物体。

俗に言う何の変哲も無いリモコンなのだが、電化製品という物体の存在自体を知らない少年にはそれが何なのか皆目検討も付かなかった。

その中に一つだけ目立つようにあった赤いボタン、つまりは電源ボタンに少年が触れた瞬間、当然の如くリモコンの赤外線の受信機であるテレビに電源が入り、そこから砂嵐と共にノイズが流れる。

少年からすれば、目の前に置かれていた四角い箱から不思議な模様とザーッという不気味で耳障りな音が流れ出せば当然のごとく驚く。


「ひゃあ!?」


突然の出来事に慌てて手に持っていた棒状の物体を放り捨てると、掛け布団を被ってベッドへ潜り込む少年。

ホラー映画を見た後の子どもの様に布団に潜りながらガタガタと震えていたところ、新たな気配を布団越しに感じ取った。


「何やってんのキミ?」


奇妙な音が鳴り止むと同時に彼の行動の一部始終を見ていたのか怪訝そうな少女の声が彼の耳に届き、恐る恐る布団から顔を出すと、どこかで見覚えのある整った顔立ちと長い黒髪を持った少女と呼ぶには大人の落ち着いた雰囲気を持つ女性がその赤い双眸を細めながら首を傾げて部屋の入口に立っていた。


「誰だお前…」


少年が警戒しながら視線を向けると女性は彼の警戒などお構い無しに彼の隣に腰掛ける。

警戒し続ける少年をチラッと横目で見た女性は「無理もないか」と呟いて僅かに苦笑するとすぐに表情を変えて微笑みながら自己紹介を始める。


「アタシの名前は魔殺(まあやめ) 狩葉(かるは)。キミをここに連れてきた人の妹よ」


「何が目的なんだ…人類が俺を捕まえて…そもそもここはどこなんだよ…記憶だと森精族(エルフィー)の森の上を飛んでたはずなのに…」


少年は隣に腰掛けた狩葉と名乗った女性を鋭く尖った犬歯を剥き出しにして威嚇するが、彼女が先程の得体の知れない女の妹だと知ってか更に警戒を強めて睨み付けた。

こんな状態でも何とか現状の把握をしたい少年は狩葉へと問い掛ける。


「俺は弟の零葉だ。んで、ここは俺たちの家の中。目的はこの世界の事を知りたいんだ」


しかし、その質問に答えたのは目の前の狩葉ではない別の声で、その声の聞こえた方向である部屋の入口に再び少年が視線を移すと、彼と同い年くらいの黒と銀の二色の髪をした少年がドアの枠に寄り掛かるようにして立っていた。


「この世界の事?なるほどな…あんたら異世界人か」


思わぬ返答に少年の目は零葉と名乗る少年を見つめたまま点になる。

しかし、すぐに合点がいったのか周囲を落ち着いた様子でもう一度グルッと一周見回す。

その少年の妙な落ち着き払った態度が意外だったのか、狩葉が彼の顔を覗き込んで尋ねてくる。


「よく分かったわね。それに驚かないのも意外、異世界から人間が来るなんて信じないのが普通だと思うし、そういうのが起こるのなんてマンガの中の世界だけだと思ってたけど?」


「この世界で見た事も無い物ばかりに埋め尽くされた部屋から考えて、人類が住む家にしては明らかに異質な部分が多い。それだけで異世界人(よそもの)だって判断できるからな。マンガってのがなんなのかは知らないが基本的にはその認識でほとんど間違ってねーよ、たまたま俺は長いこと世界を見てきたからな。その間に何回か異世界人がやって来たって話を耳にしただけさ」


「なるほどな…」


「そんで、俺にこの世界の何を聞きたいわけ?」


狩葉の言葉で少年の疑問は一つの結論へと繋がり、様々な不可解なことがその結論によって片付けることができた。

話を前に進めるべく今度は少年が狩葉たちに聞きたいことを尋ねてその先を促すと、ふいに花のような甘い香りが彼の鼻腔をくすぐる。


「理解が早い種族で助かりましたね。さて、でしたらこの世界で貴方が知っている事、全て教えてください」


淡い香りの元を探していた少年が視線を戻すと目の前には何処からともなく現れた漆黒の髪と翡翠色の瞳をした女性が狩葉と彼の間に座って感情の無い笑みを向けていた。


「ひっ…」


突然現れた女性を見た少年は先程の出来事がフラッシュバックしたのか、怯えて小さく悲鳴を上げた少年に出来るのはブンブンと何度も首を縦に振って頷くことだけだった。

どうやら初めての邂逅のインパクトによるトラウマが強過ぎたのか、彼女を見るだけで恐怖するようになってしまったらしい。


「自己紹介がまだでしたね。私の名前は魔殺(まあやめ) 斬葉(きるは)と言います。以後よろしく」


「アタシはさっきも自己紹介したけど、この人の妹の狩葉よ。よろしくね」


「じゃ俺も改めて、2人の弟の零葉(ぜろは)だ」


この時、少年の脳内には幾つかの選択肢が存在した。

その一つとして先刻、斬葉と名乗った女性から受けた屈辱の報復として、彼女たちを殺して逃げるという選択肢があった。

それを実行しようとし、気取られないようほんの僅かに殺気を放った瞬間、己の選択は間違いであったことを身を以て思い知らされることになった。

人類を遥かに凌駕する力を持つ龍である少年の殺気が、たった3人の人類の無言の圧力で圧倒されたのだ。

その瞬間、己の状況がいかに不利な立場に立たされているかを理解し、龍の少年は抵抗する事を諦めた。


「賢明な判断ですよ」


浮かしかけた腰を再び下ろした少年の金色の瞳を覗き込むように漆黒の女性が僅かに微笑んだ。

彼らへの降伏の意思の表れとして少年は自ら名乗る。

同時に少年の心には彼らへの興味が湧き始めていた。

己が初めて恐怖を抱いたこの人類たちこそ、この退屈で味気ない世界を自身の望む世界へと変える存在なのではないかと。


「俺の名前はヴァルディヘイト。種族は龍族(ドラグール)だ」


「よろしくな。長いから、ヴァルって呼んでも良いか?」


「好きに呼んでくれ。所詮名前なんざ飾りなんだからよ」


「なぁ、ヴァル。この世界だと俺たちみたいな人間の事を人類(ヒューマン)って言うんだよな?さっきの森精族(エルフィー)?だっけか、その男が言ってたんだ」


「森精族に会ったのか!?それって結構マズイかもしれないぞ」


「何でだ?」


「ヤツら、自分達の縄張りを守るためならどんな手段でも使って他者を排除する狡猾な種族なんだ…アイツらとまともに対峙するのはメチャクチャ面倒だぞ」


彼らについて行けば当面は退屈しないだろうなどとヴァルが考えていると、零葉の口から出てきた思わぬ種族の名によって現実に引き戻されて目を見開く。

そして、ヴァルが思考を巡らせて、これからどうするべきかを考え出す。

しかし、零葉の次の一言で再びヴァルは驚愕することになる。


「そうなのか。まぁ、ぶっ飛ばしたから当分は何もしてこないだろ?」


「はぁっ!?森精族をぶっ飛ばしたぁ!?」


「うん。アタシ達のお母さんが」


「それっていつの話だ…?」


「えーっと…君が起きるまで待ってたから…だいたい丸1日くらい前のことかな?」


「早いとこ、この場所から離れるのが得策だな」


ヴァルは驚きながらも半日以上眠っていた自分の危機感のなさに思わず苦笑しながらも狩葉の話から森精族の次の行動を読もうとする。

()の種族を敵に回すことがどれだけ厄介であるかを知っているヴァルは、一刻も早くこの場所を離れるべきだという判断に行き着いて慌てて立ち上がる。


「伏せてください!」


突然、立ち上がったヴァルの腕を斬葉が力一杯に引き倒した。

その刹那、昼前の暖かな陽の光が差し込む窓ガラスがガシャンッと大きな音を立てて砕け散る。

先程までヴァリの頭があった位置を通り、壁に刺さったのは窓ガラスを突き破ったであろう数本の矢だった。


「残念ながら、我が家は既に包囲されていますよ。」


「クソッ…一足遅かったか。森の侵入者への報復にしてはかなり早いお出ましだな」


「思ってた以上に大勢来てますが…姉様いかが致しますか?」


「俺の部屋が…」


どうやらこの部屋は零葉の部屋だったらしく、破壊されたショックで泣き崩れている零葉を無視して割れた窓から狩葉がコッソリと外の様子を伺う。

そこには馬引きの戦車や様々な武器を揃え、前衛には矢をつがえた弓を目一杯引き絞り構えている弓矢部隊、後衛には砲門を彼らに向けている無数の大砲、そして鎧を身に纏った森精族の大軍勢が家の周りを取り囲んでいた。


「嘘だろ…アレって、エル・フィオナ軍の本隊じゃねーか…たかだか一つの家族を潰すためだけにしてはいくらなんでも大袈裟過ぎるぞ…」


「あの家を跡形も無く破壊しろ!」


自分で家を取り囲む大軍勢を目の当たりにしたヴァルは驚愕する。

外にいたのはこの森精族の森を管理するする樹海王国エル・フィオナを守護する軍、その本隊が殺気を放ちながら陣形を組んでいたのである。

その少し後ろで感情を露わにした声で軍を指揮しているのは、昨日零葉たちの母である百葉(ももは)が殴り飛ばした森精族の男だった。

男は身体のあちこちを包帯でグルグル巻きにして怒りと憎しみに満ちた表情で軍勢の指揮を執っていた。


「アレって昨日お母さんがぶっ飛ばしたヤツよね?」


「そうみたいですね。性懲りもなくまたおいでになりましたか」


「お前ら…今なんて…あの男をぶっ飛ばしたって言ったのか!?あの…"守護神(ガーディアン) ゼノン"を!」


狩葉と斬葉の会話にヴァルは四度、驚愕に目を見開く。

それもその筈、ゼノンはこの国に住む全ての森精族を統べる王、聖森帝(せいしんてい)ゼーブルの実弟なのである。

そんな一国の要人を殴り飛ばしたとなれば王国の軍本隊が動くのも当然であった。


「3人とも早く逃げるわよ、流石にこのままじゃ家に被害が出るわ!」


非常事態に一階に居た彼らの母、百葉が零葉の部屋に駆け込んでくると四人に避難を促す。

直後、零葉たちのいる部屋の右隣にある部屋に一発の砲弾が容赦なく撃ち込まれる。

と同時に爆発が起こり、その部屋が真っ赤な炎にあっという間に呑み込まれた。


「南側の部屋に被弾…なっ、炸裂弾!?……って、あ…」


「俺の…(以下略」


「?」


身を隠しながら音を頼りに状況を探っていた狩葉は、爆発音を聞いて数拍置いてからその位置にあるであろう部屋の主を思い出し一気に顔を真っ青にする。

今だに部屋の惨状から立ち直れない零葉、状況が呑み込めないヴァルたちの間に一瞬の静寂が訪れたが。


「フッ…フフッ…ウフフフッ…私とあの子の大切な部屋が…これは私に対する宣戦布告と受け取って良いんですよね?」


俯いたまま肩を震わせて笑う斬葉が、ゆっくりと顔を上げると不気味な笑みを浮かべ、翡翠色の瞳に明らかな殺意と怒気が渦巻いている様子が容易に読み取れた。

彼女が放つ禍々しいオーラが目に見えるほど荒れ狂っており、それを見た百葉を除く3人の本能が素早く眼前の危険を察知、全身の毛穴が開くような気味の悪い感覚に襲われ冷や汗が滲み出てくる。

気付いた時には斬葉はそこにはおらず、彼女のものと思われる声が響くとすぐに粉々になった窓の外から断末魔の大合唱が始まった。


「覚悟は出来ていらっしゃいますか?」


「ギャアァァァッ!」


「誰一人逃がしませんよ」


「ひっ…!グァァァッ!」


「あらあらあら、(わたくし)の大事なものを破壊しておいて無事に帰れるとお思いだったんですか?」


「馬鹿者!逃げるな!」


「あれは人類なんかじゃ無い!(いにしえ)の魔族の生き残りかなんかに違いねぇ!逃げろ、殺され…ギャアァァァッ!」


「ウフフフ…」


数分後、家の周辺は元の静けさを取り戻していた。

恐る恐る窓の外を覗き込んだ3人の目に映ったのは、地獄絵図と呼ぶに相応しい凄惨な光景だった。

数分前まで人の形をしていたはずの兵士たちは見るも無惨に斬り裂かれ、銀色に輝いていた鎧をドス黒い血でベットリと染めた兵士たちが呻きながら大量に転がっていた。


「エル・フィオナを敵に回して…ただで済むと思うな…小娘…」


「私、死への覚悟はとうの昔に済ませて生きてますから。職業柄、恨みを買うなんて日常茶飯事ですから、もちろんロクな死に方をするとは思ってません。その言葉そのままお返ししますよ、私たちを敵に回して無事で済むと思わないでください」


兵士たちの返り血で全身を真っ赤に染めた斬葉は、傷だらけのゼノンの首をガッチリと掴んで彼の吐き捨てるような言葉に冷たく言い放つ。

そんな惨劇を繰り広げた張本人である彼女の表情はゴーレムを破壊した時のように退屈そうで、つまらないものを見るような目でゼノンを眺めていた。


「それに貴方達の言い方だと、この世界の人類は随分と下に見られてる様ですね」


「下等な人類を下に見て何がおかしい…」


「でしたら、生きて帰れた際には貴方達の(おさ)に是非ともお伝えください…」


負け惜しみのように力無く喉を鳴らして嗤うゼノン。

斬葉はその言葉に面白そうなものを見つけたという表情を浮かべ、その華奢な身体を目一杯使うとゼノンを森の彼方へ投げ飛ばした。

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