第1話 妹からのメッセージ
「遼、まだ起きなくていいの?」
ドア越しに母親の声が聞こえる。
どうやら俺を起こしに来たようだ。
目覚まし時計で時間を確認すると、まだ時間には余裕があった。
「十分後に起きるよ」
母親に聞こえるように、大きめの声を出す。
「そう?ちゃんと起きるのよ」
一言残して、母親が階段を降りて行った。
「とはいえ、目が覚めてしまった」
二度寝をしようとしたが、今日は不思議と目が冴えている。
少し早いが起きることにした。
俺の名前は朝倉遼。
特に目立った特技のない、普通の高校生。学年は二年で、来年は受験が控えている。
「取り敢えず、制服に着替えるか、ん?」
電気を付けようとするが、パソコンがシャットダウンされておらず、明かりを放っていることに気づく。
「……昨日、消さなかったかな……」
シャットダウンをしてから寝たつもりだったのだが……
まあ、思い違いか。
まだ寝ぼけているのかもしれない。特に気にすることなく、机へと向かった。
「あれ、涼香からメールが届いている」
涼香は、俺より歳が一つ下の妹。高校一年で、同じ高校に通っている。
「珍しいな、涼香からメールなんて」
不思議に思いながら、メールを開ける。
「何だこれ?」
本文に書かれていた文は、更によく分からなかった。
『世界に隠された二つの秘密を探して』
件名は特にない。
「何かの流行か?」
不幸の手紙みたいな。
「んー、でも涼香がそんなことするかな?」
あまりこういうことをする性格ではない。
「考えていても仕方がないか、直接聞けば分かることだし」
俺はパソコンを閉じ、制服へと着替えた。