2、お婆ちゃん家へ向かう準備
次の日、僕は朝7時に目を覚ました。
食事のため2階から階段を降りていると、1階からヒュッと何かが飛んできた。
僕は瞬時にその物体が毒針だと判断し、人差し指と中指で優しくつかんだ。
「やるじゃないか、棘矢」
パパが優しい眼差しで言った。
「ありがとう、パパ。僕もだいぶ成長したような気がするよ」
僕は、はにかんで答える。
「だが、まだまだだな」
パパが言ったのと同時に2階に潜んでいたママが、僕の背中に毒針を突き刺した。
僕の意識は一瞬で薄れた。
「お前は、才能があるからスパルタ教育をしているんだ」
解毒をし、意識を取り戻した僕にパパは諭すように言った。
「僕のことを思っていてくれて、嬉しいよ」
僕はパパに感謝を言うと同時に隠し持っていたマムシをパパに投げつけた。隙ありっ。
しかし、パパはまったく動じることなく瞬時に、そのマムシを空中でみじん切りにし、両手で落ちてくる肉隗を受け止めた。
「そう、その調子だ。棘矢」
パパは僕を褒め称えた。
その後、家族3人で仲良く朝ごはんを食べ、明日向かうお婆ちゃんの家への旅行準備をするためにホームセンターに向かった。
「何を買おうかしら」
ママは小首を傾げ真剣に悩んでいる。
「あれがいい、あれがいいよ。ママ」
僕は浮き輪や色々なお菓子を指差した。
「しょうがないわね」ママはしぶしぶ言いながらも、買ってくれた。こう見えても僕は普通の小学1年の男なのだ。
突然、歯が痛み出した。
「ママ、歯が痛いよ。奥のほうの歯が……」
僕は懇願するような声で言った。
「どれどれ、口を開けてごらん」
ママが言ったので、僕は大きく口を開けた。
「どこ、指差してみて」
「うん」
僕は痛い箇所を人差し指で指差す。
「親不知ね。我慢しなさい」
ママが険しい顔で僕を睨む。
「どうして? 歯医者に行ってもいいでしょ」
僕はママにお願いするが、ママは聞き入れてくれない。
「我が一族は親不知が早いうちに生える。その親不知は我が一族の宝だ。大人になるまで、むやみに触ってはならん。ましてや歯医者に行くなど、この私が許さん」
パパも鬼、いや大魔王のような形相で言ったので、僕はその迫力に圧倒され何も言えなかった。幸いすぐに痛みは緩やかになった。
準備を終え、ホームセンターから帰る途中、すれ違い様に数人を殺り、素早く知らない人の車のトランクに肉片を押し込んだ。いよいよ、明日はお婆ちゃんの家へ出発だ。




