声が低いから王子様!
声が低い女子は可愛い。
「先輩! 放課後、教室に来てください! 誰もいませんからっ」
「あー、うん。気が向いたらね」
「大切な話なんで絶対に来てくださいっ」
「考えておくよ」
先輩、咲の言葉に後輩の女子はぱあっと笑顔になる。
罪悪感、と咲は思った。
「はあ…。
行くわけないだろ?」
放課後になるとすぐに学校を出た。
まっすぐ家に帰り、自分の部屋に入る。
部屋の壁には歌手のポスター。
棚にはその歌手のCD。
若者に人気、そして、咲と同じく『声の低い』女子。
アプリを開き、ラジオ番組を聴く。
「癒される…」
毎週水曜日に放送される、30分の番組。
咲は毎日聴くようにしている。
微笑み、番組を聴く。
たまにある冗談に、クスリと笑う。
かかるその歌手の曲に、つい体を揺らしてしまう。
それが終わると、
「私も、自信が持てたら」
違うのかな、と。
『女子なのに声が低い』と考える咲。
『女子だけど声が低い』と言われる、あの歌手。
自分の声に自信を持てない。
『憧れの王子様』と同じのはずなのに。
いっそ、あの放課後に来いと言ってきた女子のように高くて可愛らしい声だったら、と。
『声が低いからっていじめられると思った』
放課後、教室に行かず逃げるように帰った理由。
―次の日
「なんで昨日来なかったんですか!?」
朝、校門の前で咲は言われる。
『例の後輩女子』に。
「なんで来なかったのかって言われても…」
いじめられると思って、と口にすることはできない。なんとなく。
戸惑いながら、咲は言い訳を考える。
『例の女子』は、そんな咲をじっと見つめる。今にも涙を流しそうな、どこか必死な様子。
素敵な言い訳が思い付かない咲。
『例の女子』は、深呼吸をし、
「好きですっ、私だけの王子様になって下さい!」
「…は?」
「私、声の低い女子が好きなんです! それで、先輩の声がこの世界で1番好き!」
…。
「私が王子様なのはおかしいだろ…」
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