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第0話(序章)

これは「自由を選んだ主人公が、結局“国を背負う”ことになる」異世界転移×内政(国家運営)ものです。


序章は、主人公がまだ“背負わない”側にいるところまで。

軽い空気から、一気に歯車が噛み合う瞬間を楽しんでもらえたら嬉しいです。


もし少しでも面白いと思っていただけましたら、

ブックマーク・評価をいただけると励みになります。


死ぬ前に、同じ夢を何度も見た。

見知らぬ少女が、泣きながらこちらを見上げている。


銀に近い髪。透き通る瞳。

泣きながら何かを訴えているのに、声だけが聞こえない。

目を覚ますたび、頭が割れるような痛みと、胸の奥の不快なうずきに襲われる。


俺はいつも、その夢の途中で目を逸らしていた。

――俺がやらなくても、誰かがやる。

それが、スズキ・マサヒトの生き方だった。


法人審査。投資案件の精査。リスク評価。

数字は読める。未来の損益分岐も読める。

だが、自分の人生の分岐点だけは、いつも安全側を選んだ。


親に言われるがまま、そこそこの地方の大学に進み、

地方の銀行か公務員になろうとおもった。

学生時代は剣道に打ち込み、全国へはいけず地方の大会を優勝する程度。


――なにものでもない人生。


起業も、政治家でも、キラキラの芸能人も。

やろうと思えばできたかもしれない。


けれど――覚悟が足りなかった。

「安定」という正解を選び続け、

気がつけば三十代半ば。


なにものにもなれなかった。

それでも人生は続くはずだった。

はずだったのだ。

________________________________________

仕事帰りに事故にあった。

その瞬間自分の周りの世界が、割れた。

視界が黒に塗りつぶされる。

音が消える。身体の輪郭が溶ける。

時間が裂け、空間が反転し、

何か巨大な意思に、魂の芯を掴まれる。


宇宙のような空間に一人漂っている。


これは召喚ではない。選ばれたわけでもない。

事故だ。スピリチュアルを信じないが、たしなむ程度にアニメやファンタジーを楽しんでいたマサヒトは勘でわかった。


時空の歪みに、肉体と魂ごと巻き込まれた。

映画のように無数の光景が流れ込む。


ーーー


東京駅の竣工。

焼け焦げた東京。

工事が進む東京タワー。


見たことのない廃墟で、食べ物を求めて歩き回るエルフの子供。

斧を持つドワーフと人間が戦う戦場の光景。

国境線が塗り替えられる瞬間。


ーーー


そして――

あの少女の瞳。

俺の中で、何かが軋んだ。


目を開けると、石の天井だった。


「知らない天井だ。」


人生で言ってみたかったセリフを一人でつぶやき、

一人で恥ずかしくなる。


冷えた空気。湿った土の匂い。

洞窟だ。ゆっくりと上半身を起こす。


身体が軽い。スーツと眼鏡をしたままだが、世界がぼんやりしている。

眼鏡をはずして目をこすると驚いた。


視界が、異様なほど澄んでいるじゃないか!


洞窟の外へ出る。朝の光が降り注ぐ。

目を閉じて、深呼吸した。空気の中に、濃密な“力”が満ちている。


流動するエネルギー。

この世界は、生きている。

――まずは水を確保かな。


水のせせらぎが耳をなで、音のする方へ向かうと、

水面に映る自分の顔を見て驚いた。


――なんといっても若い!!


どうやら、異世界への転移と転生の中間くらいの事故に巻き込まれたらしい。

関節の軽さ。水面に映った顔は、十七歳前後の少年だった。


前世の自分の面影はあるが、かなり美化されているぞ??


魂が干渉された影響か。

理由は分からない。


だが。悪くない。

むしろ、好都合だ。

前世では踏み出せなかった挑戦を、

今度こそやれるかもしれない。

会社経営も。

政治も。

社会変革も。


……いや。


いきなり重いな。

まずは。

まずは、自由に生きよう。


背負わない。

抱え込まない。

この世界を見て回る。もしかしたら日本のままかもしれないし、、ムフっと笑う。


「このビジュなら日本の学園でモテモテハーレム生活も夢じゃないな」


異世界なら、ひとり旅の冒険者として。

そのくらいでいい。俺は、そう決めた。


数日後。ボロボロのスーツのまま。

石造りの城壁に囲まれた人間の町へ辿り着いた。


――どう見ても異世界じゃん。


学園ハーレムものの主人公の夢が崩れ落ちる。


ギルドの看板。掲示板に並ぶ依頼書。

討伐。

採取。

護衛。

行方不明者捜索。


ざっと目を走らせる。

危険度S×報酬高額。

……却下。


危険度C×森の魔獣討伐。

これだな。

俺がやらなくても、誰かがやる。

だが。


“俺でもできる”依頼なら、

自分でやった方が経験になる。

魔力鑑定でも、一人で討伐可能といわれた。


合理的判断だ。

受付で登録を済ませる。仮登録の冒険者証を受け取る。


胸が、少しだけ高鳴った。

自由だ。

俺は今、自由だ。


森は静かだった。

低レベルの魔獣が現れる。

熊型。

突進。

速い。

だが単純だ。


真正面で受けない。

横にずらす。

地面の傾斜を利用する。

足を取らせる。

喉元へ短刀の一撃。

鮮血とともに倒れる。


この世界、レベルやマナ量だけで勝敗は決まらない。

情報。

位置取り。

判断速度。

資金効率と同じだ。

最小限の投資で、最大の効果を。


――悪くない。今まで金融で培った知識と、前世で読んだフィクションの知識があれば、この世界では、“なにものか”にはなれるのかもしれない。


それに身体能力も転移の影響でかなり向上しているみたいだ。


そのとき突然、身体の奥で、何かが脈打つ。

一瞬。

時間が、遅く見えた。

視界の端に、黒い影が走る。


鼓動が早まる。

そして、微かな違和感。

何かを“削った”ような感覚。


だが、すぐに消えた。

……気のせいか。

考えすぎだ。


討伐は完了。報酬は十分。

最寄りのギルド事務所へ戻る途中。夕暮れの森を、一人で歩いていた。


――ギルドの報酬で何をしようかな~ この世界にも夜のお店みたいなものがあったしな。たんまり入るわけだし、報酬を受け取ったらこないだ見かけたエルフちゃんのお店にいってみよう///


そのとき。王都方面へ続く道から、魔力の気配がした。

振り返ると、


ロングの銀髪。

細身の体。

そして長い耳!!


どう見てもエルフ!!!

キターーーーーー!っと思うと同時に、

明らかに様子がおかしい。


背中には肩のあたりに矢が一本と、腹部にも矢が一本。

顔は青ざめ、くちびるも紫に、目にはクマもできている。

そして、胸にはタオルにくるまれた子供を抱えている。

一瞬で理解した。王都方面の都市から逃げてきたのだと。


マサヒトの顔を見て、一瞬おびえた顔になったが、

限界を迎え、倒れこんでしまった。


そして、


「……お願い……」


女は俺を見上げる。

その瞳。

夢で見た、あの少女と同じ色。


心臓が、強く打つ。

「この子を……連れて……」

背後で、追っ手の気配。

俺は一瞬、目を逸らした。

関われば、面倒になる。

背負わないと決めたはずだ。

自由でいると、決めたはずだ。


だが。小さな手が、俺の服を掴んだ。


「お願い!!」


行き絶え絶えに力を振り絞った気迫に気おされる。


母の言った「この子」を見ると、、

銀の髪。

透き通る瞳。

首元のネックレスが、淡く光る。

時間が、止まったような感覚。


視界が研ぎ澄まされる。

世界が薄くなる。

黒い何かが、背後に立つ。ような気がした。

胸の奥の命の芯が、軋む。


――危険だ。


使えば、何かを失う。

直感が告げる。

それでも。

俺は子供を抱き上げた。

「……分かった」

母親の身体から、力が抜ける。

遠くで馬が歩く音。


子供と母を抱えて俺は走り出した。

無名の廃墟が、森の向こうに影を落としている。

地図にない街。

法の届かない空白地帯。

迫害された者たちの、最後の吹き溜まり。


俺はまだ知らない。

この選択が、

どれだけの重みを持つのかを。

いずれ、この少年は国を背負う。


だが今はまだ――

逃げきれなかっただけだ。

そしてその胸の奥で、

本人には想像もつかない力が、静かに目を覚ました。



ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

主人公は今はまだ「背負わない・自由に生きる」と決めたばかりですが、子供との遭遇で、人生が強制的に動き出します。


次のお話しからは、序章ですっ飛ばした内容を丁寧に描きつつ、

10話まで急速に展開・収束していきます。


面白いと思っていただけたら、ブックマーク・評価で応援してもらえるとめちゃくちゃ励みになります。

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