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8話 ぐァつぐァつぐァつ

着席したテーブルに並んだ、異世界で初めての食事。パンにスープに肉料理というメニュー。

実に質素。実にシンプル。そんなギレム家の朝食のお味は……。


「ゥンまああ~いっ! こっこれはああ~~~っ! この味わあぁ~~~っ!!!」

「ははは、口に合ったようで何よりだ。そこまで良い反応だと私も嬉しいよ」


美味! 実に美味!

カリカリに焼き上げられたバケットはそのまま食べても絶妙な風味と甘みが素晴らしい! さらにバターを塗れば、その塩見でより甘さが際立つ! チーズと一緒でも良し、スープに浸けてもよし。一口味わっただけでわかる、これは上質なパンだ!

それにこのスープ。一見シンプルなオニオンスープだが、見た目では想像もつかないほど奥深い味わい! 現代の顆粒ダシとは違う、より新鮮なうま味が濃縮された素材自体のコクがあふれ出している。しかし決して飽きの来ない、一口飲んだらもう一口、また飲んだらさらに一口と、自然と口が求めてしまう。

さらに主菜の鴨のロースト。香ばしく焼き目のついたパリパリの皮を切り開くと、ぷりっぷりの身が目に飛び込んでくる。皮目のクリスピーな触感とムチムチの肉質のコントラストがたまらない! 火入れの加減を間違うと肉が固くなってしまいがちだけど、この柔らかさはあまりにも絶妙。極めつけにかかっているこのソース! 見た目は赤ワインソースかと思いきや、パンチ抑え目で主張しすぎない、染み渡るような上品な味付けだ。そして後味に残るさわやかな風味……これはオレンジ? 朝食として、重すぎず、しかし満足感のある一品にするための隠し味としてあまりに過不足がない。これ以上の組み合わせはないんじゃないかとすら思える!


とんでもなく美味い味付けの料理。それに加え、今の僕は空前絶後の空きっ腹。

空腹は最高のスパイスとも言うけど、これはまさしくその通りだ。

結論、何が言いたいかって? この食事、死ぬほどウマい!

ダメだ、食事を口に運ぶ手が止まらない!


「ガシャガシャ! ぐァつぐァつぐァつ! ……ンぐッ!?」

「……ちょっと大丈夫かい? ほら、水も一緒に飲みながら、ね」

「ンビ! ンビ! ンビ! ンまあーいっ!!」

「……」


うっひょ~~~! うんめぇ~~~!!!




「……落ち着いたかい?」

「……はい、すみません。あまりにも美味しくて、つい……」


あの後僕は、正面で困ったような呆れたような顔をしたウィリアムを尻目に、デザートのブドウも2房全て完食した。

ため息をつきながら水を差しだしてくれるウィリアム。……すみませんマジで。

でも本当に美味しかった。この家の料理は運んでくれたメイドさんが作ってるのかな? それともシェフか何かいるのかな。どちらにせよ作った人に直接お礼を言いたい。あわよくばもう一回同じものを食べたい。

というかサペ太郎も切り分けた鴨肉の一切れをこっそり食べてたよな。味付けされた調理済みの肉食べても大丈夫なのか? ……まあ満足そうに寛いでるからいいか。一応後で餌になりそうなもの何かもらっておこう。


そんなことを考えている間にメイドさんに食後の食器を片付けさせたウィリアムが、僕に向き直って口を開く。


「さて。食事も済んだことだし、早速話をしようか」


ウィリアムはにこやかにそう言った後、一転して真剣な眼差しに変わる。


「ルイナ君。私は私の屋敷の前に横たわっている死にかけの人間を見過ごせなかったという理由で君を保護した。その結果として君は一命をとりとめた。つまり君は私に恩がある、そうだね?」

「は……はい。その通りです」


何だ? この圧は。

先ほどの穏やかな雰囲気はみじんも感じられない、厳粛かつ威圧的な存在感。

敵意にも近い、警戒したような緊張がびりびりと伝わってくる。


「ならば対価として、正直に答えてくれ。単刀直入に聞くが……君は一体、何者なんだ?」

ジョジョ面白いですよね。

4部が日常感あって好きです。

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