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4話 かわいいは正義

「ハァ……ッ! ハァ……ッ!」


あれから走りに走ってどのくらい経ったか。

気づいたら後ろにゴブリンの姿はなかった。


今の顛末で一生分走った気がする。呼吸器酷使しすぎてまともに息もできない。

勘弁してくれよ、走るの苦手なんだよ……。

呼吸が落ち着くまで一旦休まないと。


「……っあーーーー! 死ぬかと思ったぁ〜〜〜!!」


実際だいぶ危なかったな。

どう見ても魔物なゴブリンたちに囲まれて、自分は丸腰。いくら体格差があったとして向こうは3匹もいるし、圧倒的に不利な状況だったの間違いない。

敵意むき出しな相手からよく逃げ切ったぞ僕。偉いぞ僕。

自分で自分を褒めてあげたい。


しかし殴ったダメージ全くなかったな。あれどういう理屈なんだ?

流石に全く効かないっていうのはおかしな話だ。文字通りの全力で顔面ぶん殴ったのに、結果はちょっと怯んだだけって。バカにしてんのかチクショー。

どんだけ鍛えてても顔思い切り殴られたら多少の怪我とかダメージ負うもんだろ。


大体無策であんな敵に挑むなんて、たとえ誰かを助けるなんて理由があっても基本やっちゃダメ……って、そうだヘビ!


「大丈夫か!?」

「……(チロチロ)」


咄嗟に首に巻き付けたヘビに目をやると、舌を出し入れしながらつぶらな瞳で見つめ返してきた。

よかった、大丈夫そう!

この子を助けれたなら危険を犯した意義もあるってもんだ。


落ち着いてきたところで、この子のことよく観察してみるか。

最初は白色かと思ったけど、ちゃんと見てみるとウロコがキラキラ光ってるな。なんだこの色……ちょっと金属室の光沢? みたいなのもあるし、例えるならプラチナみたいな発色だ。

目は青くてサファイアみたい。体の太さは……ラップの芯の中にちょうど入れるくらいか。

結構なイケメンさん。


「よーしよし、おいでー」


試しに地面に下ろして右手を差し出すと、そのまま登って巻きついてきた。あらかわいい。

野生のヘビにしちゃ懐きすぎてないか? さっきまでゴブリンどもにボコボコにされてたのに警戒心がなさすぎる。

というかあれだけ蹴られまくってたのに外傷がないのも不思議だ。動き的に骨とかも無事みたいだし、もしかして異常に体が頑丈なのかな。


じっと見つめてると、散々にょろにょろと右腕を這い回った後に「なぁに?」みたいな様子でこっちを見つめ返してくる。

ちょっと何よこの天使。母性目覚めちゃうじゃない。


せっかくだし名前つけるか! 蛇は英語でサーペントだし……よし!


「お前の名前はサペ太郎だ!」

「(チロ…)」


サペ太郎、我ながらいい名前だ。何よりわかりやすい。

サペ太郎も舌チロチロしながら喜んでる、ように見える。いや間違いない。

不服そうな顔に見えるけどそんなわけないよな。きっと素敵な名前もらったことに感動してるんだろう!



しばらくサペ太郎とじゃれていたら、突然左腕に痛みが走り、サペ太郎を取り落としてしまう。


「やべ……そういえば噛まれてたっけか」


必死だったからすっかり忘れてたけど、逃げる直前に左腕に思いっきり噛みつかれたんだった。

ガチャガチャの歯並びの形をした傷跡がかなり強めについていて、その周りは赤紫に変色してきている。

改めて意識を集中すると、心臓の鼓動と共にズクン、ズクンと深い痛みが響いてくるのがわかる。


……絶対やばい菌みたいなのついてるじゃんこれ。

だってあんなに不衛生な生き物に噛まれたんだぜ? なんか傷口周り唾液みたいなのでネッチョリしてるし。キッショ、オエッ。

今までアドレナリンドバドバで気付かなかったけど、時間が経てば経つほど痛くなってきそうな雰囲気だな。

早めに水で洗い流さないとやばそうだ。

ここでただ休んでても仕方ないし、考えるより先に行動しないと!


「よしじゃあサペ太郎、改めて水場探しに行くか!」

「(チロン!)」


声かけたら了解! とばかりに大きく舌をぺろっとしてきて、首の方に登ってきた。

もしかしてこの子言葉わかってるのか? 普通蛇とか爬虫類って言語理解しないし積極的に懐かないものなんだけど……。


でもまあかわいいからなんでもいっか!

かわいいは正義!

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