2話 まったぐ若者ァ俺一人
さて、いきなりだけど良い知らせと悪い知らせがある。どっちから聞きたい?
なんてね。一回言ってみたかったんだよなこれ。
どこかで聞いた話だけど、心理学的には悪い知らせを先に言ってから良い知らせを言ったほうが安心できるらしい。多分ビジネスとかプレゼンとかではこっちの手法を使うんだろうね。
でも逆に人に物教えるときは良いこと言って褒めてから悪いところ小出しにしたほうがいい気もする。
この「どっちから聞きたい問題」に果たして答えはあるのだろうか。
まあ実際相場どっちからとかわからないし、今回は良い知らせから行ってみましょうか。
まずは良いニュース。飲み水を確保できました!
目覚めてからしばらく歩いてたけど、体感1時間くらいで湖? 池?ってくらいの水場が見つかったんだよね。大体25mプール2つくっつけたくらいの大きさ、だと思う。多分そんなに深くないのかな。
それにしてもめちゃくちゃ綺麗! いやーびっくりしたわ、森の中ガサガサ歩いてて急に視界開けたと思ったら、水底見えるくらい透き通った水場があるんだもん。気持ち木々も鮮やかに見える気がする。
もう喉カラカラだったから試しに一口飲んだけど、これがまぁ美味い! ひんやりと冷たくて全く臭くもない、ザ・天然水みたいな。顔突っ込んでがぶ飲みしちゃったわ。
え? 生水は危険? 知らんよそんなこと。
ちなみに魚も泳いでおりました。
数匹群れてたけどぱっと見普通の魚だったんだよなぁ、銀色でキラキラ光ってて。別に異世界魚! みたいな雰囲気もなく、普通に食べれそうな感じ。若干ブルーギルに似てたかも。
あ、僕魚全然詳しくないからあくまで雰囲気ね。
んで悪いニュース。
えー、近くになんか居ますね、ハイ。
なぜその結論に至ったか、理由はざっくり3つ。
その一。池の岸辺に何者かが水を飲んだ後がある。
その二。小さい人型の足跡がたくさん残ってる。
その三。明らかにクサい。
いや笑い事じゃないのよ?
ひとしきり水飲んでから気づいたけど、僕が水飲んでたところからちょっと遠い場所がやたらびしょびしょで荒れた感じになってたし。流石に気になって見たら露骨に足跡ついてるし。
オーウ、ヒトガタアシアト? ホワーイ?
もうね、これダメだね。
「人の」足跡じゃなくて「人型の」足跡だからね。どう考えてもちっちゃすぎるし、なんか若干細長くて不格好な足だし。
あと本当にクセェ。とにかくクセェ。
例えるなら足の裏と腐った肉、あと生乾きの洗濯物をミックスしたものの残り香って感じ。
運動部の部室にチーズのにおい足したみたいな? とにかく不愉快な臭いが残留してる。
現代の日本じゃそう嗅げないような不快臭でビビったもん。探偵の勘で「匂うぞ…」とかじゃなく、ガチの悪臭がぷんぷんですわ。
しかもなぁー……。どう考えてもここ通って戻ったべっていう獣道あるんだよなぁ……。
ねえ、これ行ったほうがいい? ちなみに僕今完全に生身なんですけど。道具は無ェ、情報無ェ、まったぐ若者ァ俺一人。
危ないよな流石に。
いやーでも実際何がいるのか確認できたらこの状況に納得がいくかもしれないしな。遠巻きに見るってことでちょっと行ってみよう!
流石に急に襲われるとかは無いでしょ!
読んでいただきありがとうございます。
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