0話 プロローグ
「どこだ……ここ」
頬を撫でる穏やかな風。鼻に通る緑の香り。暖かい木漏れ日。擦れる葉の音。
そう、森の中だ。
あれ、さっきまで教室の中にいたよな。
授業終わりにやることもなくてぼーっと机に座ってた、はず。いや間違いない。
今着てる服もいつもの制服に名前の書かれた上履き、おかしなところは一つもない。
唯一おかしいのは今いる場所。見慣れた人工物は何もない、ただただ自然の光景が広がるばかりだ。
急に鋭い頭痛がして、思考が中断される。
「マジで何が起こってるんだ?」
そう呟かずにはいられない。
なぜか分からないけど、ここに来るまでの記憶が一切無い。しかも全く見覚えのないところにひとりぼっちとは、どう考えても異常事態だ。
何か不測の事態が起こっていとしか思えない。
夢遊病? ……いや、攫われた?
もしかしたら寝てる間にフラフラ歩いてるのはあるかもな……でも今までそんなこと一度も起こらなかったから実際どうかはわからない。攫われたにしても、近くに攫った相手もいなければ拘束もなく放り出されてるのは流石におかしい。
じゃあ夢の中?
いや、それは有り得ない。五感で受け取る情報全てがあまりにもリアルすぎる。明晰夢でも説明のつかないくらいに現実味を感じる。
浮かんでは消えるさまざまな可能性を想像し、しばらくの長考の末、あまりにもぶっ飛んだ、常識的に考えればあり得ないような結論に辿り着いた。
思考の中でふと思い出したのは、最近友達に勧められてからどハマりしたラノベだ。特に好きなのは、ひょんなことから主人公が魔物や異種族の住む別世界へ召喚され、痛快な冒険を繰り広げるバトルファンタジーもの。
いや本当か? 普通そんなわけないけど、逆に今の状況でそれ以外何も思いつかない。
もしや、いや現実でそんなことはあり得ないけどこの状況は…….。
「もしかして……異世界召喚?」
初めまして、モブオブザモブと申します。
よろしくお願いします。