余談: 高糖度な(とても古い)ワインの話
去年の夏なのですが、流しの下の扉を開けたら、口からちょっとべたべたしたものが出ているビンが出てきました。どこかにあるのかなー と思いつつそのまま20年ほども放置していたワインの瓶でした。
ワインセラーにでも保存していたのなら熟成ともいえるのでしょうが、夏は35度にもなる室内にずっと放置。まあ普通ならどうにもならなくなっているのでしょうが。
ドイツのワインは、等級付けがあるようで、上から
・トロッケンベーレン・アウスレーゼ
・アイスヴァイン
・ベーレン・アウスレーゼ
・アウスレーゼ
とあるそうです。一番上のトロッケンベーレンアウスレーゼ(TBA)は貴腐ワインという事になっています。そして、隣国オーストリアでも、同じ格付けをしているようです。
三大貴腐ワインというと、フランスのソーテルヌ・ドイツとオーストリアのTBA(産地はあんまり言及されないみたい)・ハンガリーのトカイ、という事になっていますが、出てきたのは一応オーストリアの、多分名もなき出自のTBAハーフボトルでした。エチケットでは1991とあるので、30年物、ということになります。
とりあえず、割と劣化しているコルクを何とか抜いて、コップに注いでみたところ、出てきたワインはまさにコーヒー色。まあアメリカンぐらいだと思いますが。そして中に黒い薄片が泳いでいました。元は白ワインで、琥珀色まで色づいたのはよく見かけますが、もう本当に冗談でなく焦げ茶色。
普通のワインなら、良くてお酢になっているところ。恐る恐る飲んでみると。
なんとほのかな貴腐香が残っているような気がして、かつ甘味のあるアルコール感。腐敗臭やお酢の酸味は感じられませんでした(大した舌や鼻ではないのは確かですが)。薄片は多分タンニンが凝結したもので、指でつぶすとさっと分離して消え去ってしまいました。
ちびちびと、結局数週間かけて、飲み切ってしまいました。
お酒のアルコールは、もともと糖が分解されて生ずるものですから、甘口のお酒と言えど例えばジュースの様に甘味が残っているわけはありません。TBAのように発酵しても極甘のワインって、要するに原液が発酵に使いきれないほどの糖を含んでいた、という事を意味しています。
糖度の凄く高いワインって、保存性(寝かせている段階や、開封してからも)が良い、という話はありますが、ここまでひどい扱いを受けたものが、まだなんとか飲めるっていうのはやはり凄いものだと感じました。糖度は強し! 糖度の高いぶどうは正義!
もう一生のうちに30年物w のワインなんて飲むことないでしょうから。一つのネタとして。
貴腐ワイン、たいして飲んだ事あるわけでもありませんが、クラッハーのベビーボトルのは好きです。
安いトカイとか、コストコで売っていた南アフリカのとか飲んでみましたが、なんか上の30年物にも勝てないんじゃないか、という感じでした。良いものじゃないとやっぱり駄目ですね。