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ドン爺討たれる

ざわざわ ざわざわ


ドン爺がまず神殿にいる皆に神官長にした説明を行った。


「し、信じられません・・・」


神殿にいる人々は口々にそう言う。


「皆のもの、ここにおられるドンウェリック様の仰ることは全て事実である。私はそう確信している」


神官長はすでにドン爺に下って皆にそう伝えた。


「陛下は神ではないと言う事でございますか?」


「さよう。神の名を悪用する大馬鹿者じゃ。そのような者はこの国には不要。しかし、いきなりこう言うても信じんじゃろ。そこで皆の者がこの話を国民に広めて行くのじゃ」


「しかし、これは反乱と同じ。国で争いがおきます。軍、そして王族が反逆者として我々を制圧するのではありませんか?」


「その可能性はあるの」


「多くの死人がでるのは耐えられませんっ」


「そうじゃ。ワシもそのような事は望んではおらぬ。消えるのは汚魂だけでよい。そして、人同士の争いが発生すれば魔族が現れて人々の恐怖を煽り、戦いを止めざるを得なくなるのじゃ」


「ま、魔族が来る・・・」


「もし魔族が来ても皆の者は魔族に攻撃をするでないぞ。魔族は攻撃してこないものは襲わん。その事をしかとその目で確かめるが良い」


ざわざわ ざわざわ


そしてドン爺の言葉を信じろと神官長に命令された神官達はそれぞれ信者を集め同じ話を広めて行くのであった。



「陛下、報告にございます」


「なんじゃ?」


「は、貴族街で反乱の動きがございます」


「何っ?」


「本物の神が現れて、偽物神である王を討つとの動きがございます」


「誰じゃっ、そのような戯れ言をぬかす奴は?この国でワシ以外に神を語る奴は重罪であるぞっ」


「そ、それが・・・」


「誰じゃっ。早よう申せっ」


「し、神殿にございます」


「はぁっ?あそこは神殿長を末弟に任せてあるであろうがっ。あやつは何をしておるのじゃっ」


「は、儀式の時以外は私邸にてご静養を・・・」


「たわけがっ!さっさと神殿の動きを抑えに行かせぬかっ」


「はっ」


「軍統括を呼べっ」


マナーカ王は反乱の目が大きくならないうちにとっとと軍を投入することにしたのであった。



貴族街で本物の神が降臨したとの噂は瞬く間に広がり、利権をがっつり持っているものは現王に付き、そうでない者は新しい体制を求めてドン爺の方に付く。そして聡い者は様子見をすることにしたのであった。



そして、布教活動をしてした神官達が慌てて神殿に戻って来た。


「どうしたのじゃ?」


「神殿長が軍と共にこちらにっ」


「わかった。皆の者っ!神殿に立て籠るのじゃ。神殿長と軍にはワシが対応するでの」


「はいっっ」


ドン爺は神官長に指示をして皆を神殿の中へと誘導していく。


「さっ、扉を閉めるのじゃ」


「しかし、それではドンウェリック様がっ」


「心配は無用じゃ。ワシは神じゃと言うたじゃろうが。ワシは死ぬことは無いから何があっても心配するでない」


「しかしっ」


「かーーーーっ!要らぬ心配をする前に皆を神殿の中に早う誘導するのじゃっ」


「かしこまりましたっ!ご武運を」


「うむうむ、それで良い」


ギィィィィ バタンッ


ドン爺を外に残して神殿の扉は閉められた。





「貴様が神の名を語り反乱を企てているものか?」


「貴様は誰じゃ?」


「ワシはマナーカ神を崇める神殿の神殿長だ。貴様こそ誰だっ」


「ほう、貴様が儀式と称して信者においたをしておる神殿長か。やはり汚い魂をしておるの」


「何をふざけた事をぬかすっ。神聖な儀式をおいた等とほざくな」


「何が神聖じゃ。この世界にマナーカ神などおらぬ。おらぬ神への儀式等あるわけがなかろう」


「貴様っ!マナーカ神を愚弄するつもりかっ」


「愚弄しておるのは貴様じゃ。神の名を騙りおって。その罪は魂を滅することでしか償えぬぞ」


「うるさいっ!軍統括よっ!反乱軍の首謀者を捕まえて処刑しろっ」


「はっ!皆の者この不届き者を捕らえよっ。但し殺すな。皆の前で神の名を語った者がどうなるか見せしめに処刑せねばならんからな」


軍の皆は一斉にドン爺を取り囲み、槍や剣を向けた。


「カーーーーーッ!」


ドン爺は軍人達に王の威圧を放つ。


ビクッ


「神に向かって(やいば)を向けるとは何事じゃっ!どんどん魂が汚れていっておるわっ!(やいば)を下ろさぬかっ」


ガシャ ガシャ ガシャ


王の威圧に屈した軍人達は槍や剣をその場で落とした。


「うむうむ、それでええ。それぐらいの汚れなら天で洗うたら落ちるじゃろ。軍人どもよ。国を守るのは重要な事じゃ。しかし、命令とはいえ、罪なき者に刃を向けるでない。お前達の仕事は人を殺めるのではなく、守るのが仕事じゃ。神殿長を守る騎士どもも同じじゃ。目的を見失うでない」


騎士達も馬から降り、臣下の礼をドン爺に取った。


「な、何をしている貴様らっ。早くあの反乱の首謀者を捕らえぬかっ」


「神殿長よ、そう思うなら自らワシを捕らえてみよ。丸腰の年寄りぐらい造作もないことであろう?」


「貴様っ!貸せっ」


神殿長は騎士から剣を奪い取り、ドン爺に斬りかかった。すでに汚魂の神殿長にはドン爺も遠慮はしない。


「カーーーーーッ」


威圧を放つとビクッと立ち止まった神殿長。ドン爺はすかさず魂掴んだ。


「こってりじゃのう。しかもよくもまぁ、これだけおいたをしたものじゃ。その罪は万死に値する。消え失せろっ」


ブチュっ


「ぎゃぁぁぁぁぁぁっ」


断末魔を上げた神殿長はこの世の者とは思えない形相でその場で倒れた。


ひぃぃぃぃぃっ


何も武器を持たない老人が剣を振りかざした神殿長を殺したのは明らか。軍人達は震え上がった。神殿長は神の怒りに触れたのだと理解したのだ。


「か、神よ。おっ、お許しをっ」


一度ドン爺に刃を向けた軍人達はその場で土下座をして許しを乞う。


「ええいっ!何をやっておるかっ。こいつは神では無いっ。世を惑わす魔族に違いないっ。矢を放てっ。魔族を討ち滅ぼすのだっ」


後ろに居た軍人達には王の威圧もあまり届いては居ない。軍統括の命令に従い次々と矢を放った。


トス トス トス トスっ


無数の矢がドン爺に次々と刺さる。


「この不埒な奴めっ!ワシは魔族では無いっ。それに魔族も人類の敵では無いっわーーーーっ!」


ドン爺の雄叫びに軍人達は硬直する。



「カーーーーーッ!」


「カーーーーーッ!」


「カーーーーーッ!」


硬直した軍人の中で汚魂を握り潰して行くドン爺。



フラッ


「いかん、死なぬとはいえ、血を流し過ぎたようじゃ」


全身に矢を受けたドン爺は気を失い、その場で倒れてしまった。



「ひっ、引っ捕らえよっ」


軍統括はドン爺に怯えながらも軍人達に命令した。


血まみれのドン爺は縄でグルグル巻きにされて王城に連れていかれてしまったのである。




「こいつが神の名を騙り、反乱軍を先導した奴か」


「はっ、陛下。さようでございます。素手で神殿長や部下を・・・」


「まぁ、末弟はどうでも良い。軍人も死ぬのも仕事のうちだ。それよりこいつはまだ生きておるのか?」


「はっ、全身に矢を受け、大量の血を流しながらもまだ生きております」


「ふむ、やはり魔族の類いであろう。このまま中央広場に張り付けておけ。3日後に皆の前で火炙りの刑に処す。国民への周知も行えっ。神の名を騙り、反乱しようとしたものがどうなるのかみせしめするのじゃっ」


「はっ」


そして、処刑の事は瞬く間に国民達へ周知されて行くのであった。



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