奴隷にならせろ、ボケッ☆
彼の瞳は、柔らかさに溢れている。
彼の指は、しっとりさに包まれている。
彼の行動は、優しさに満ちている。
彼の優しさは、天を突き抜けている。
彼のクシャッとなる笑顔に、私は癒され続けている。
こんな軟質の集合体の人、今までに出会ったことがなかった。
こちらからの優しさを、傘のようにこんなに弾く人に初めて出会った。
彼は、私の優しさを呑み込もうとせず、逆に天性の気遣いを垂れ流す。
私だって、あなたの為に何かしたい。
「誕生日は何が欲しい? 何が食べたい? 私が何でもしてあげるから、何でも言ってね」
「気持ちだけで嬉しいよ。誕生日は僕が感謝する日だから、何もしなくていいよ」
「でも、それだと私の気が済まないから。何でもいいから言って」
「紗絵は何もしなくていいんだよ。そばにいるだけで癒されるから」
「私は何もしてないのがツラいの。好きな人に頼りにされて、好きな人のために尽くすくらいさせてよ」
「いやっ、でも」
「だから、お前の奴隷にならせろ、ボケッ☆」
一度も見たことのなかった、彼の硬い表情を見られたことに、少しの快感を覚えている私がいた。