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緑の勇者は世界樹の下で今日もおやすみ。 ~世界最強の少年は楽園から一歩も出たくない~  作者: ほうせんか
第1章 そして、 12歳の少年は心に誓った。
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002 そびえたつ世界樹は、 今日も静かに世界を見守る



 両親に朝の挨拶を終え、 朝食を食べ終えたときにフリュが僕の部屋から出てきた。


 縮こまっていたときよりなぜか少し服が乱れていて、 いつものふにゃんとした雰囲気に加えてお酒に酔ったような表情をしていたけれど、 もうほとんど毎日のことなので慣れちゃった。


 今日僕はフリュと共に友達の待つ世界樹の下の秘密基地へ行く予定だ。

「シフィ。 天恵の日でいつ女神さまの啓示があるのかわからないんだから家で大人しくしてなさいね」と朝食を食べ終えた僕はシルフ母さんに言われたけれど、 返事をしていないのでセーフだと思う。


 流石に15歳の少女エルフを、 服が乱れたままで連れ歩くわけにもいかないし、 家を出る前にフリュの服装は僕が直してあげる。


 フリュの日課が朝僕を起こすことになっているように、 家を出る前にフリュの服を整えることが僕の日課になっている。


 フリュは僕がどこを触っても嫌がるようなそぶりは見せることがないので、 その罪悪感からか、 それとも12歳の少年の身体だからか、 フリュに対して性的な欲情はできないのだけど、 されるがままになっているフリュを見ているとその無防備さにちょっと不安になる。


 誰に対してもそんなんじゃないよね……? フリュさん?


 そんなことを思いながらも薄いピンク色に高揚したままぽけーとしている完全無防備な幼馴染の、 ほのかに乱れた服をなおして、 僕たちは家を出たのであった。


 

─・─・─・─・─・─・─・─・─



 家を出て10分くらい、 僕とフリュは世界樹の真下で栽培されている『ピア』の果樹園にいた。


 リンゴと桃の中間のような果物ピアはこのエルフの村の主食であり、 世界樹のすぐそばでのみしか十分に熟れないという不思議な生態を持つ。


 僕たちの秘密基地はこの果樹園を通り抜けていく。


 一見すると世界樹の下、 広大な敷地に一定の間隔でピアの木が栽培されているけれど、 超巨大な世界樹を支える超巨大な根の周囲にはピアの木を植えない決まりになってる。



 つまり、 大人にばれない僕らの秘密基地はこの世界樹(ガルキア)の根の中にあるのだった。



 34番ピア果樹園から入って左に27列目、 前に14列目から真っすぐ根の方に行くと秘密基地の入り口に辿り着く。


 何十mもの高さを持つ超巨大な根は、 もはやそれが一つの建物のようでいて、 たまたま入ったわずかな亀裂が大人が1人はいっても十分な広さを持つ入口となっており、 僕らからしてみたらちょっとした公園くらいの空間を作っているのだ。




 秘密基地につくと、 1人の少年と2人の少女がすでに中でお喋りしていた。



「あ!リーダー!……とシルくんおはよー!」

 と三つ編みの少女、 フミが僕らに気付くと、 他の2人もこっちを見てきた。


「リーダー!と、 シフィくん、 おっは~!!」

 とボーイッシュな髪型の少女、 テア。


「フルウとシフィ!おそいぞ!」

 とむくれる赤い髪の少年、 ゼガ。


 むくれているゼガはとりあえず放置して、 僕たちは2人の少女におはようと返事した。


 三つ編みの少女はフミューパ・ビロ・パーティ。

 僕より1つ年上で13歳。 通称フミ。

 なぜか僕のことをシルくんと呼ぶ。


 ボーイッシュな少女はテア・ビロ・パーティ。

 呼び方はテアだ。


 フミが姉でテアが妹の双子の姉妹。


 この果樹園の責任者クグディメル・ビロ・パーティさんの娘なんだけれど、 父親が過保護すぎてこの果樹園以外の場所では遊んではいけないと厳命されているから、 遊べるのはこの秘密基地だけなのだ。



「……おはよう、 フルウ、シフィ」


 自分だけおはようと言ってもらえなかったのが寂しかったのか、 ゼガは挨拶をし直した。

 

 別に無視しようと思ったわけじゃなかったから、 僕らもゼガにおはようと言う。


 彼ははゼガデイン・ファースト・ラキュア。 通称ゼガ。

 僕の住むエルフの村『ラキュア』の村長の1人息子だ。 まだ15歳だけれど、 エルフの戦士として英才教育を受けており、 そこら辺の動物なら1人で狩れるほど強い……らしい。


 僕を含めて5人。

 というより、 もともとはフリュの友達だった3人に僕を紹介してくれるという形でよく一緒に遊ぶようになったのだ。


「ごめんねぇ、 シフィがお寝坊さんだったから~」

 ニコニコとフリュが話す。


 ……絶対に僕だけのせいじゃないと思うけど、 ここは黙っとく。


「フルウ! シフィをそんなに甘やかしたらダメだっていつも言ってるだろ! こいつはいっつもやる気のないへちゃむくれた顔をしているんだから!! エルフたるものキリッとしてないとダメだ!!」


「村長の息子なゼガはそうかもしれないけどさー。 普通のエルフってそんなにいつもキリリってしてないと思うよ?」


「お父さんとかね~。 シルくんは戦士っぽくないし、 果樹園でピアを作るのが向いているとフミは思うよ」


 ゼガが赤い髪をかき上げながらフリュにひとこと言えば、 フリュの味方のパーティ姉妹が擁護する。


 気質の荒い妹のテアはゼガによく噛みつき、 姉のフミはことあるごとに僕を果樹園で働かせようとしてくる。

 


 大体いつもこんな感じで僕らの秘密基地は始まる。


 といっても、 特にやることのない午前中に会っておしゃべりしようってだけ。


 僕はこういうのんびりとした毎日がすごく……いいと思う。


「……おい、 またシフィが眠そうな顔してるぞ」


「シルくん、 寝るの?」


 ゼガとフミがこちらを向いている。


「別に眠くないけど」


 流石の僕でもここまで歩けば目は覚めるし。


「そうだよ。 シフィはもともとこういう顔だよ」


 おっとテア、 若干けなしてる気がするけど気のせいかな。


「シフィは大体いつも寝てるよ?」


 いやフリュ、 寝てると断言はおかしいでしょ。


「「「たしかに」」」


 ……声をそろえて同意すること無いと思う。


 ほんとに今すぐ寝てやろうかこのやろう。



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