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緑の勇者は世界樹の下で今日もおやすみ。 ~世界最強の少年は楽園から一歩も出たくない~  作者: ほうせんか
第1章 そして、 12歳の少年は心に誓った。
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001 転生した僕は、 幼馴染のエルフに恋してる

※第1章は少々シリアスになります。

※第2章以降は日常編になる予定です。



 世界樹、 というものがある。


 その大きさは比類なく、 大きすぎててっぺんが全く見えないほどだ。


 世界に7本しか存在しない世界樹は、 7つの大陸それぞれに存在し、 神話級の樹齢であるらしい。


 僕が転生したのは、 そんな世界樹のうち『ガルキア』と呼ばれる世界樹が君臨する大森林、 ジュブネッタ大森林のエルフの村だった。


 

 人間だった僕はエルフ”シフィ・レア・ファルミル”として生まれ変わった。


 若草色のくせ毛に緑の瞳。なんだかいつも眠いからか、 エルフなのに少し間抜けた顔をしてるのが今の僕だ。 どうせならもっと普通の、 かっこいいエルフに転生したかったけど、 ()()()()()()()()()()()()()()()()2()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()から、 誰に文句を言えばいいのか分からないんだよね。

 

 そう。 僕は確かに転生した。

 でもその記憶、 とくに前世でのエピソード記憶がほとんどない。

 あるのは地球の知識と()()()()()という感覚だけ。


 だから転生したといっても、 前世の知識を使って特別なにかをしようという気持ちになれない。

 エルフとして生まれ、 エルフとして生き、 そしてなにをするでもなくゆったりとした生涯を送る。

 

 僕の夢は、 物語にすらならないような円満な老衰だ。


 そう、 物語にすらならないような……。


─・─・─・─・─・─・─・─・─


 「シフィ、 朝よ」


 いつも僕を起こしてくれる子の声がする。


 僕より3つ年上の幼馴染、 フリュの声だ。


 ……起きないと。


 「ん……おはよ……フリュ……」


 声は出るけど、 身体が目覚めてない。


 昨日は早めに寝たというのに、 なんかまだちょっと眠いし、 目が半分くらいしか開かない……。


 それでも僕はゆっくりと上半身を起き上がらせて、 ベットに腰かけるフリュの方を見た。


 いつも通りの眠そうな顔ね、 とフリュはくすくす笑ってる。


 ……そういうフリュだって、 人のことを言えないでしょ。 フリュのとろんとした目は、 初対面の人に『ふにゃん』とした印象を持たせるんだから。


 そんなことを思っていたら、 若草色の少し伸びた寝癖でくりんくりんなっている僕の髪を、 フリュは優しく手で梳かしてくれた。



「おはよう。 シフィ」


「……おはよう。 フリュ」



 朝日に煌めく彼女の金色の長い髪が、 森から運ばれる甘い風に揺れている。


 僕の髪を梳かしながら、 風に揺らめく髪を耳にかけて微笑む彼女は女神さまのように綺麗だった。




「今日はシフィ、 『天恵(てんけい)の日』でしょう? 鏡で自分の顔を見てきてごらん?」


 僕の髪を撫でるのをやめて、 フリュは立ち上がって言った。


「……びっくりするくらいの美少年が鏡に映ると思うよ」


「残念ながら、 鏡に映るのはいつも以上に眠そうなお寝坊さんの顔よ」



 いっそう目をとろんとさせ、 くすくすと笑うフリュ。


 さっきの綺麗さはどこへ行ったのか。 フリュはもとのかわいい顔に戻っていた。




 『天恵の日』とはこの世界の誰もが通る特別な日のことだ。


 生まれてからちょうど12年と半分が『天恵の日』とされ、 その人に最もふさわしい才能の片鱗を女神さまから与えられることになる。


 あくまでも片鱗であるため、 その後の努力によって同じ与えられた才能でもその能力はピンキリだし、 才能に適する職に就かなければいけない決まりもない。


 あるのは『この才を与える』という、 ただそれだけの啓示である。



 3年前に与えられたフリュの才能は『巫女』だった。

 

 特殊な儀式や祭りにおいて女神からの信託を直接受け取ることのできる最高クラスの才能だけど、 フリュ本人としては不満らしい。


 なんでももっと生活に役立つ才能が良かったとか。




「ふぁぁああ~」と着替えながら僕は大きく欠伸(あくび)をして、 フリュに質問する。


「そういえばフリュ。 女神さまの啓示とはいうけれど、 実際どんな感じで聞こえてくるの?」


 フリュはキョトンとした顔をして、 ふむう……、 と自分の金色の髪をくるくるしだした。 髪を人差し指でくるくると(いじ)るのはフリュの癖だ。


「わたしのときは~~……ん~~。 たしか昼前に川で水浴びをしていた時だったかなぁ……………はっ!!」


 そういうとフリュは突然顔を赤くして、 「ちゃんと服は着てたからね~!」と当たり前のことを弁明した。


「わかってるよフリュ。 幼馴染の僕だってフリュの裸を見たらドキドキするんだから、 服をきてなかったら大変だ」


「……はぁぁうぅぅぅ……しふぃぃ~……」


 変な弁明をしてしまった恥ずかしさで、 長く伸ばした金色の髪で顔を隠すようにしながらフリュは縮こまってしまった。


 すごくかわいい。


「それじゃあ僕は」


 そういって縮こまって湯気が出ているフリュを部屋に置いたまま部屋から出た。




 シフィ・レア・ファルミルこと僕は、 金髪の長い髪をした少しふにゃけた幼馴染の少女フルウ・ヴィ・ビジュロントが大好きだ。



 生まれたときから見てきているけれど、 多分、 一目惚れだったと思う。


 いつの間にか好きだった、 という気持ちよりも『昔からずっと好きだった』という気持ちの方が大きいのだから、 きっと生まれたときからずっとフリュのことが好きだったんじゃないかな。


 彼女のことをフリュ、 と呼ぶのはこの村で僕だけだけど、 舌がうまく回らない幼児の時『フルウ』と呼べなくて「フリュ」と呼んでいたから、 以来ずっとフリュはフリュだ。


 これからもそう呼び続けるのかと聞かれたら、 きっとそうじゃなくなる時が来ると思う。


 でも、 もう少しだけ。 僕だけのフリュって呼び方でいたいかな。



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