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金色とトマト

 頬を覆うは冷たい液体。ツーと流れ落ちる感覚で少年は目を覚ました。

 薄っすらといくつかの灯りが目に付く。

 少年はゆっくりと手を伸ばし頬を伝う液体を拭う。

 それはヌメッとしていて、灯りに照らされたその色は赤黒く・・・


 「これって血

 

 「じゃないよ、ケチャップ。おはよう、元気かな?」


 鈴のなるような小さな声が聞こえる。少年が見上げた上に、金色が映る。

 そこからポタポタと液体が垂れてきていた。

 

 「まるで死体みたいでいい感じ。コレクションにしようと」


 カシャリという音と共に光が舞う。そこには金色の女がいた。

 彼女は携帯片手に笑っている。楽しそうに笑っているのだが、少年は全身ベトベトになっていることに気づき全身を不快感が襲う。

 顔だけではなくいたるところがケチャップでコーティングされているようだ。

 一通り笑い終わった彼女は、どこから持ってきたの卓上ガスコンロで鍋を煮込んでいた。


 「ごめんね、ベトベトで気持ち悪いよね。私も楽しんだ事だし、奥に従業員用のシャワーあるから使ってきなよ。ガスが無いから水しか出ないけど。タオルや服は近くで取って来るからどうぞ」


 そう言って彼女は鍋に向き直る。

 少年は言いたいことがたくさんあったが、ひとまず水で全身を流す事にした。

 彼女の指示に従い、店の奥へと向かって行った。




 ベトベトの体を水で拭い、シャワー室から出ると白いTシャツにジーパンが置いてあった。

 少年はそれに着替え、彼女が鍋を煮込んでいた場所に戻る。

 少年が戻ると彼女は鍋を混ぜていた。

 長い金色をなびかせながら鍋を混ぜる姿は、黒のパーカー姿と相まってさながら魔女のようであった。

 

 「あ、水浴び終わったんだ。食べる?」


 彼女は、少年の方を振り向かず鍋をかき混ぜながら聞いてきた。

 

 「それ、何ですか?」


 少年は警戒心と好奇心か鍋の中身を訪ねる。もしも本当に魔女の作ったゲテモノ鍋であるのなら、逃亡生活中である少年にとってもさすがに願い下げであるからだ。

 てかそんなもの食べるぐらなら、餓死を選ぶだろう。現代人にとってはイモリやサソリはてまた到底食べれそうにない物で構成された鍋そんなイメージの魔女鍋食べられるはずがない。


 「これ、ミネストローネ。トマト缶やパスタなどがあったから、食べる?間違って倒しちゃったお詫び」

 

 「ああ、食べる」


 「どうぞ」


 彼女はそう言ってどこからか茶碗を取り出し、少年に渡してきた。


 「雷子(らいこ)、貴方の名前は?」


 「晃一(こういち)、もらうよ」


 「ふふ、晃一。これからもよろしくね」


 「は?」

 

 晃一は、口を開けて大きく固まる。

 晃一は、ここまま飯を食い終わると出ていくつもりだったのだが、彼女のその言葉はまるで


 「なぜ、付いてくるの?て思ってるでしょう。答え簡単、私も貴方も同類だから。何から逃げてきたかは知らないけど、人気の無いこんな場所に来るのは逃げてきた人か追ってくる人だけ」


 「浮浪者だとは思わないのか?」

 

 「浮浪者にしてはここに来た時の疲労感がおかしかったし、第一ここを縄張りにしている人たちなんていないよ。誰も好んで感染エリアに来ないよ。それにこんな世界で浮浪者なんかやってたら、いい実験動物としてどっち道狩られる側だよ」


 晃一はうつむいたまま、返事をしない。

 考えないようにしていた現実を、逃亡していて考える暇さえなかった現実を受け入れなくてはいけいない。

 どのような形にせよ、もう一市民には戻れないのだ。

 そんな晃一にいやらしい笑みを浮かべた雷子が近づく。


 「旅は道ずれ、ここで会ったのも何かの縁。私、一緒にいくよ。それに今ならお買い得、私そこそこ強いし、料理もできる。こんな機会を逃したら、駄目だよ」


 雷子をこれでもかと顔を近づけ、圧力をかける。

 晃一はその圧力に押され、うなずくしかなった。


 「OK、それじゃ荷物持ちよろしくね。ふふ、これからよろしくね。あ、呆けてないで早く食べないと冷めると美味しくないよ。ほら早く!」


 「ああ」


 異論をはさむ余地もせかされるようにミネストローネを食べる晃一。

  

 「あ、美味しい」


 「そうでしょ、そうでしょ。トマトは最高なんだから。あんなに美味しい食べ物なんてこの世に無いわ。それになんにだって使える最高の食べ物なのよ。そもそもトマトには・・・・・」


 雷子のトマト愛をBGMにミネストローネを食べながら、とんでもない奴に捕まったと考えている晃一だった。

 

 


ゴールデンウィーク2日目にして、このスピード。確実に休みの間に書き終わることは無理だと確信しました。頑張ります。

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