080.どちらを捨てていたのですか……?
こんばんは!!
今日は臨時で投稿させていただきますが、少し控えめにしました。
それでは本編をどうぞ。。
その後は俺が空腹を満たすための食べ物でもと、結局のところチュロスをカラメル味一本だけ買ってから打ち上げ場所近くに行くことになった。
ちなみにチュロスを選んだのは決して水無月の事を意識したわけではない。断じてそう信じたい。
「んなぁ、俺が花火を見る場所を取らなかったのは切実に悪いと思っているが、それでどこで見るんだ?これじゃあ、見れる場所ももうないんじゃないのか?」
「限定的にしすぎなのよ、あなた。観覧席は1つだけじゃないのよ」
俺がどうしてこんなにも花火を見る場所に心配するのか、別に極度の心配性に陥ったわけでも痛い病にかかったわけでもない。現実的に考えてみれば分かるのだが、つまりは単純に落ち着いて見れるほど人が少くないということだ。
「固定観念にとらわれすぎ、何も土手の上からでしか見れないわけではないのよ、まぁ高みの見物が出来るという点ではそれも悪くは無いのだけれど」
「でも、高い場所に上らないと花火って良く見えないんじゃないのか?それにこの人だかりじゃ落ち着いて見れないだろ」
そう、一般的な訪問客は屋台が連なる河川敷にレジャーシートを敷いて場所取りをしておらず(そもそも歩行者が通りづらくなるので禁止されている)、ではどこで、という問題であるが、ほとんどの人々というか、いわゆる場所取りをしている人々は土手に沿って座っている。
「ほら、この辺なんていいんんじゃないか?ちょうと芝生の上だし背中も寄り掛かれるぞ」
場所取りがされた辺りの中でポツンと空白になっているところを指差すと「座ったら着物が汚れるから嫌よ」と即座に却下された。その代わり俺に特段対抗するわけでもなく、単にこうなるように仕組んでいたのではないかと思ってしまうほどの用意周到さには俺も普通に驚いた。
「これがあるんだからそこまで心配しなくてもいいわよ、ほーーら」
人差し指と中指でひらひらと舞い上げる紙切れは打ち上げ場所に最も近い有料席だった。
「見せびらかすようにポケットから出すんだったら早く出してくれたらいいじゃねーか。それに、場所取りをしていないのか訊いてきたのはお前が先だろ?」
むすっとほんの少しばかり怒ったように、口を開いた。
「それは彼氏として当然のことをしてきたのか、問いただけよ。それと……もう忘れたのかしら、私の名前ぐらい少し気を使っていったらどう?」
「ああ……そういえばそうだったな桜さん」というと、そっぽを向いて俺のことなど気にもしていないと主張するかのように無視を続けた。リアクションを取ってくれるのはいいが、何も言わないのは呼んだ俺からしてみればただ恥ずかしいだけじゃないか……
「ん、そういえば俺が場所取りをしていたらその取った場所はどうするつもりだったんだ?その口ぶりからすると、有料席で見ることは前々から決めたようだが……」
「捨てていたわよ」
いきなりの爆弾発言‼ん、でもどっちの選択を捨てるつもりだったんだ?俺の確保した確保したかもしれない場所か?いやそれともこのチケットか?
「ちょっと訊きたいんだが、それはどちらを捨て去るつもりだったんでしょうかね?」
「さあね、こちらかもしれないしあちらかしれないわね」と不敵に笑みを浮かべる桜。
本当に何を考えているのか、どこまで計算されて、どこから想定外なのか知りたいぐらいだが。
「じゃあ、チケットの方だと俺は予想するよ」
「好きにすればいいんじゃない」
そう、自分が知らないうちに答えを浮き彫りにしている不敵でも冷徹でもない、嬉しそうな意気揚々とした笑顔に俺は、
「ビンゴ」と誰にも聞かれないように心の奥底で一人呟いていた。
有料席というものの、椅子やテーブルが用意されているわけではなく、芝生の上に敷いてあったブルーシートが等間隔に並べられただけである。もうそろそろ打ち上げが始まるというので、なるほど花見の場所取りのように一人取り残された人や、もう酔いが回っている集団もいる。行事ごとなので騒がしくなるのは分かっていたが、有料席が限られているせいか、あまりうるさいわけではない。
「一つ一つシートが離れてるんだな、それにシートの数がそこまで多くない。なるほどこれはビジネスクラスというやつだな?」
「あら?ファーストクラスの言い間違いではないのかしらね」
「チッチ」と人差し指を小刻みに振りながら桜に向かって思わず笑みを溢してしまう俺。いつになく煽っているが、たぶん今だからだろう。でなくては編集者の彼女に対して顔向けできるどころか、即クビに(打ち切り)でもされかねない。
「ここをよく見てみろよ」
俺がとあるシートの上に置いてあるネームプレートの方へと意識を逸らせると、
「それがどうしたの?それは花火大会に補助金を出している会社の名前よ?」
無垢な少女のように顔を傾かせ俺に訊いてきた、まるでわざとそうしているのではないかと疑ってしまうほど純粋に見えてしまったのは、俺のただの見間違いなのか。
はっ、と意識を取り戻したように俺のくだらない言葉遊びに気付いた桜はもうすでに呆れ返った表情をしている。
「本当につまらないわね、協賛をビジネス呼ばわりするなんて、ボランティアとでも思わないのかしら?」
「この世はそんな甘っちょろい話で方は付けられないって相場で決まってるんだよ」
「まったくそれくらい今は忘れて欲しいのだけれど、ここでいいわね?」
周囲に人がいないシートへとたどり着いた俺と桜は腰を下ろして打ち上げを待つことにした。
ところで二人でこの場に来たわけではあるが、どうして俺が、俺だけが呼ばれたのか。そして、二人だけのシチュエーションというまさにラブコメ的展開をなぜ拒もうとしないのか。
俺の頭の中は疑問だらけだった。
読んでくださった皆様ありがとうございました!!
本章も半分を切ったところですがこれからもよろしくお願いします。。。
ちなみに次回はおそらく火曜日となりますのでどうかお待ちを。。




