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勇者一行、ラーメンを食べる

 俺たちは、適当に近くにあるラーメン屋に入った。


「シャッセエエエエェェェェイ!!!!」


 店に入った瞬間に店員の元気な挨拶が響き渡る。


「何名様でしょうか!!」

「犬も入れて5名だ」

「はい5名様ご来店ラッシエエエエェェェェイ!!!!」

「ラッシエエエエェェェェイ!!!!」


 犬がいる事にもツッコミは入らず、すんなりと入店出来た。

 しかし店員は商売だからともかく、客として来ている魔族の目は険しい。


 敵対的な視線を感じながら適当に空いているテーブルに座った。


「ご注文はお決まりですか?」


 早えなおい。

 まだ座ったばっかりだっつうの。


「もうちょっと待ってもらってもいいか?」

「ラッシェイ!」


 よくわからない返事をして店員は去って行った。


「それで、アディ様の考えってのはどんななのよ?」

「いいかお前ら、俺が指示を出したらいつでも出れるようにラーメンは小さいサイズのやつにしとけ」

「「「?」」」


 首を傾げる女性陣を置き去りして、俺は店員を呼んだ。


「すいません」

「ッシエェ~」


 さっきとは違う店員の様だ。

 基本的に店員ごとに掛け声は違うらしい。

 しかし今はそんなことはどうでもよかった。


「シャイニングアトミックラーメン一つ、ミニで」

「ミニアトミック一丁ラッシエエエエェェェェイ!!!!」

「それと魚介豚骨のレディースサイズを3つなのじゃ!」

「ちょっとエリー勝手に決めないでよ」

「良いではないか!」

「レディース魚介豚骨三丁ラッショッ!!げほげほっ!!」


 店員が噛んで咳き込んだ。


「おいあんた大丈夫か?」

「ッシェイ!!」


 店員は去って行った。

 雑談をしていると、ラーメンはすぐに来た。


 シャイニングアトミックラーメンは味噌ラーメンをベースとしたよくわからないラーメンの上から豪快に唐辛子的なものをぶちまけたかなりアトミックなラーメンだった。

 濃厚なスープは腰のある細麺だけではなく、ほうれん草や水菜、そしてシイタケなどと巧妙に絡み合い、まるでここが天国だとでも言わんばかりの壮大なオーケストラを奏でている。


 アトミックという言葉の意味はあまり考えない方がいいだろう。

 半分程ラーメンを食べた頃、一人の男が注文をする声が聞こえて来た。


「魔王軍の幹部ラーメン一つ」

「幹部ラーメン一丁ラッシエエエエェェェェイ!!!!」

「シェアアアアアア!!!!」


 それを聞いた他の客の話声も聞こえる。


「おっ、幹部が来てんのか」

「いつもご苦労様ってやつだな」


 それらを聞きながら俺は席から立ち上がった。


「ビンゴだ。あいつが魔王軍の幹部だな」

「えっ……あんなラーメンを注文しただけで幹部とかってわかるの?」

「ああ、あれは幹部だけが注文出来る特別なセットなんだ。幹部は顔も魔族たちに割れてるしな……先に出てあいつを待ち伏せするぞ」


 金を払って店を出る。

 店を出て少し離れたところで待ち伏せをした。


「リリスが地獄に帰って来たなら実家には寄るはずだ。そしてあいつの実家ってのは魔王城。魔王軍の幹部ってのは大体魔王城に住んでるから、幹部ならこっちに戻って来てからのリリスの様子を知ってる可能性はかなり高いってわけだ」

「店の中で声をかけたんじゃダメなの?」

「さっきも言っただろ、あいつらは魔族以外を敵視している。店の中で魔王軍幹部に聞き込みをするような事があれば、下手をしたら店の客全員と戦闘になる可能性だってある」

「本当にそんな事になるのかのう……」


 疑うエリーの視線に答えてやる。


「前回ラーメン魔王四天王を討伐しに来た時に同じ様に幹部ラーメンを注文してるやつを見かけてな……幹部ラーメン?何じゃそりゃ……もしかして幹部なのかって思って、様子見でその幹部を切り倒してみたんだよ。そしたら周辺にいる魔族全員と戦闘になった」

「それはアディが悪いのではないのかのう」

「わん!」

「ふふ、暗黒邪竜ちゃんも『そうだそうだ~』って言ってますよ~」


 そんなやり取りをしていると、幹部ラーメンを注文した男が店から出て来た。


「よし、行くぞ」


 俺たちは男を尾行し、人気のない場所に出たところで話しかけた。


「おい、あんた」


 男が振り向いた。

 見た目は普通で、どこにでもいそうな感じの兄ちゃんだ。


「リリスを知ってるよな?今あいつがどうしてるか知りたいんだが」

「リリス様だと……?俺がそんな事を簡単に教えるとでも思っているのか?クックック………」

「…………」

「魔王城で魔王様に捕まっているぞ」

「ありがとう」


 すんなり教えてもらえたので退散。

 歩きながらマリアが話しかけて来る。


「あっさり教えてもらえてよかったわね」

「ああ、とにかく魔王城に向かえばいいみたいだ。しかし、リリスを捕まえるとは許せんな」

「魔王と言うのはリリスの兄上なのじゃろ?どうして捕まえるという様な事をするのじゃ?」


 エリーの指摘はもっともだ。


「色々と推測は出来るが、行ってみないとはっきりしたことはわからん。とにかく魔王城に行くぞ」

「場所はわかるのかの?」

「魔王城がある街まで行けばわかるんだが……毎回地獄へ入った時に出る町が違うみたいでな。ここからどう行けばいいかがわからん……暗黒邪竜」

「わん!」

「この辺にはラーメン屋はないが、今なら匂いはたどれないか?」

「クゥ~ン」

「無理か……リリスにラーメンの匂いが染みついちまったんだろうな」

「この辺なら人気もないし、待ち伏せして聞き込みするしかないわね」


 そして物陰に隠れ、一人でここを通りかかる魔族を待った。

 何だかやってることが完全に犯罪者な気もするが、今はそんな事を気にしている場合じゃない。


 やがて上手い具合に魔族が一人で通りかかった。


「よお兄ちゃん、魔王城がある街への行き方を教えて欲しいんだけど」

「あぁ!?てめえ何だコラ!そんなものを俺がはいそうですかって教えるとでも思ってのかコラァ!!!!あん!!??」

「…………」

「あっちをあっちに行ってこうだ」

「ありがとう」


 またもすんなりと教えてくれた。

 魔族ってのは意外に親切なのかもな……。


「よし、場所はわかった。魔王城に向かうぞ」


 俺たちは街道を魔王城のある街に向かって歩き出した。

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