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ろくでなし勇者、犬に無視される

ストックなしでやっているので、予告なしに一日二回更新したりします!

 俺たちが案内されたのは、質素な建物が並ぶ村の風景の中で少しだけ立派に見える家屋だった。


 中に入ると、そこには無駄に髭をたくわえた弱そうな老人が座っている。


「村長……伝説の勇者『家畜以下』のアディ様が例の依頼を受けてくださったそうで、お連れ致しました」

「お前はさっきから俺に敬意を払うのか喧嘩を売るのかどっちかにしろ」

「これはこれは、よくぞおいでくださいました。若者の無礼をお許しくだされ……どうぞ、おかけになってください」


 指示通りに俺たちが適当に座ると、村長と呼ばれた老人が話し始めた。


「まずは依頼を受けてくださり、ありがとうございます。エルフの里に住んでいる者は外の者を必要以上に警戒する気がありましてな、普通はこういった依頼は出さないのですが……」

「それほど緊急の案件ということなんですね。その女の子は一体……」


 リリスの問いかけに、村長はすぐに答えた。


「彼女の名前はサラ。ワシの娘で、ゆくゆくはこの里のリーダーとして村長の座を渡そうと思っております」

「この里の重要人物ってわけね」


 マリアは会話をしながら美味な棒を食べている。


 ちなみにこの『美味な棒』というのはジミーダ村の名産のお菓子で、サクサクとした食感が人気のお菓子だ。


 棒状の形をしているからか、いつもマリアが俺の目の前でこれ見よがしに食べているので、あいつは本格的にやばい奴だと思う。絶対に手は出すまい。


「何か手がかりとかはあるのか?」

「お恥ずかしながら何も……気付いた時にはいなくなっておりまして、最初は私たちだけで何とかしようと里周辺の捜索も行ったのですが……」

「なるほど、大体の事情はわかった。でも、そうなると俺たちはどうやって捜索したらいいんだ?手当たり次第に探すしかないけど、それだと時間がかかりすぎる」

「それなのですが……全く当てがないというわけでもないのです。おい、連れて来てくれ」


 村長が側で待機していた先ほどの青年に指示を出すと、青年は一度外に出てから明らかに嫌がる様子の犬を無理やり連れて戻って来た。


「これがサラの愛犬、暗黒邪竜と申します」

「どう見ても雑種じゃねえか。何でそんな名前なんだよ」

「この犬は心を闇に支配されておりましてな……美女にしか懐かないのです」

「ただのスケベ犬ってことだろ」

「わあ!かわいいわんちゃんですね!ほらおいで!」


 それまで静かに話を聞いていたリリスが両手を広げながらながら高い声をあげると、犬は素直に走り寄って来る。


「かわいいかしら?まあブサカワって感じよね」


 マリアにも大人しく顎を撫でさせていて、嫌がる気配はない。

 村長はその様子を見て目を丸くしている。


「おお、あの暗黒邪竜が懐くとは……」


 まあ、二人とも見た目はいいからな。

 リリスに関しては中身までいい。マリアは痴女。


「暗黒邪竜ならばサラの匂いを嗅ぎ分けることが出来るはずです。何か新しく掴めることがあるかもしれません……どうかその暗黒邪竜を連れ、サラを見つけ出してください……どうか、どうかよろしくお願い致します……」


 こうして俺たちのサラ捜索はスタートした。

 と言っても最初は犬が何かを発見してくれるのを待つしかない。


 サラの外見的な特徴としては銀髪のロングヘアーで歳はリリスとマリアの間ぐらいらしい。ちなみに、マリアはリリスの二つか三つくらい年上だったはず。


 特に銀髪はエルフの中でも珍しく、サラぐらいしかいないとのこと。


 そして何より、あのスケベ犬が懐いていたと言うことは美女であることはほぼ間違いない……この依頼は受けて正解だったな。


 俺たちは最初に、エルフの里の中央にある広場の様なところに来た。

 ここから暗黒邪竜が示す方向に行ってみようということになっている。


「よし暗黒邪竜。早速サラを探してみてくれ」

「…………」

「…………」


 こいつ……本当に美女の言うことしか聞かないのか。

 俺の言葉が耳に届いているかすら怪しい。


「ちょっとクロちゃん?だめじゃない勇者様の言うことを聞かなきゃ」


 リリスはこのスケベ犬のことをクロちゃんと呼ぶことにしたらしい。


「そうよ、私たちなんて毎日アディ様の言いなりで毎晩あんなことやこんなことをされてるんだから」

「おいマリア、犬にそんな嘘吹き込んで何になるんだよ」


 まあ犬にどうこう言っても仕方がない。

 とりあえず犬への命令は二人にやってもらうことにした。


「はい、それじゃクロちゃんお願いね」


 まあ、この犬の気持ちもわかる。

 たしかにむさ苦しい男よりも女の下で生きていきたいもんだ。


 暗黒邪竜は少しの間フンフンと何かを嗅ぎまわると一度こちらを振り向き、ついて来いと言わんばかりに歩き始めた。


「おっ、もう見つけたのか?中々やるじゃねえか」


 のんびりと犬の後をついて行くと、やがて暗黒邪竜はある民家の庭で立ち止まってある物を見上げながら尻尾を振っている。


「こ、これって……」


 驚愕の表情を浮かべるマリア。

 次にその正体をリリスが告げる。


「女性ものの下着……ですね」


 そこには物干し竿にかかった下着が。

 もちろんサラのものではない。


「ワン!」

「いやワン!じゃねえよ」


 思わず犬にツッコミを入れてしまった。

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