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伝説の勇者、王国を追放されて美少女暗黒騎士と出会う

「ぐうっ……まさか、この私が敗れるというのか……」

「ハッハッハ!さあ!魔王味噌ラーメン醤油味よ!とどめだ!」


 そんな芝居じみた台詞を叫ぶように読み上げた後、俺は声高らかに宣言した。


「めっちゃすごい通常攻撃!」


 剣を魔王に向かって振り下ろす。


「グワーッ!しゅごいいいいいい!」


 そして俺は膝から崩れ落ちた魔王に歩み寄った。


「魔王もこの程度か。あっけないもんだな」

「クックック……笑わせるな。私は四天王の中でも最強……」

「じゃあいいじゃん」

「そうであったな……クックック……」


 不敵な笑い声と共に、魔王の身体は灰になって消えていく。


 こうして俺、勇者アディとラーメン魔王四天王とか言う頭悪そうなやつらとの戦いは幕を閉じた。




 そして月日は流れ、気づけば世界に平和が訪れてから数年が経っていた。

 俺は最強の魔王を倒した報酬としてでかい屋敷と美女たちと金銀財宝という、およそこの世の全てを与えられ、最高の酒池肉林生活を送る。


 そんなある日のことだった。


「すまんが、この国から出て行ってくれないか」


 突然王城に呼び出されたかと思うと、王様からそんなことを言われてしまう。


「いやいや王様何でだよ。俺はこの国の英雄だぜ?俺が魔王を倒す前はみんなめちゃめちゃ困ってたじゃんか」

「うむ。確かにお前が魔王を倒すまでは、皆『味噌ラーメン醤油味って結局味噌味なのか醤油味なのか』と気になって夜も眠れぬ日々を送っておった。おまけに魔王によって何人もの人々が殺されたしの」

「そっちはおまけなのかよ……」

「しかし魔王の脅威が完全に消え去った今、もうお前は必要ないのじゃ。褒美にしても充分過ぎるほどに与えたであろう」

「約束が違うぜ。王様からもらえる資産を当てにしてこのまま老後までハーレム生活を送ろうと思ってたってのに、いきなり供給を断たれたんじゃあと数日しかもたないじゃんか」

「そこじゃよ」


 王様は玉座から立ち上がった。


「お前は勇者とか英雄ではなく今やただのニートではないか。働かずに飲み食いして遊び呆け、金がなくなれば毎度のように王家にたかって過ごしおってからに」

「だってそういう約束だろ。魔王を倒したら好きなだけ褒美をくれて今後の生活も保障するって」

「何事も限度というものがあるであろう!それにな、勇者というのは大体『褒美に何でも好きなものをくれてやろう』と言えば、『私にはそんなものは必要ありません。人々の笑顔が私にとって何よりの褒美ですから』とかいうのものであろうが!ところがお主はどうじゃ!即答で『でかい屋敷と金と女』とか抜かしおって!もはや魔王よりお前の方が国の脅威じゃ!」

「それはあんたの偏見じゃねえか。俺はもらえるもんはしっかりもらう主義だ」

「とにかくこれまでじゃ。お前には国を出て行ってもらう。これは決定事項じゃ」


 謁見の間にいた兵士たちが俺を取り囲む。


「それとじゃ。わしがお前にやった装備品なんかは全て置いていけ。あれは国のものじゃ」


 正直、こいつら全員相手にしても勝てるんだけど……。

 そんなに嫌われてるんじゃ強引に国に残るのも微妙だな。


 俺はその辺の怪しい露店から王様が買い付けたという「聖剣エクスカリンバー」を置いてから言った。


「わかったよ……出てくから、そんな目で見るなよ」


 ずっと味方だと思っていた国の兵士たち。

 彼らは今、敵意を宿した目で俺を見つめていた。


 俺は肩をすくめて謁見の間を後にする。


 こうして、俺は国を追い出された。



 

 俺を追い出したはいいけど、もうすぐ魔王復活の噂もあるのに、あいつら大丈夫なんだろうか。

 まあ、俺の知った事じゃないか……。


 無慈悲に追い出しはしたものの、王様はジミーダという小さな町にぼろいながらも家をやるからそこで暮らせと言っていた。ひとまずはそこに行ってみよう。


 まずは王都から出るため、出口に向かって歩いていると。


「やーい、魔王だ魔王だ~」

「魔王がいるぞ~」

「やっ、やめてください……」


 なぜか魔王がいじめられていた。


 元ラーメン魔王四天王は冒険者組合の掲示板なんかにも似顔絵が張り出されているので結構有名で、顔も知れ渡っている。


 懸賞金もかけられていたので一番弱い魔王を除いて全て討伐されたはずだから、目の前にいるのはその四天王最弱の魔王のはず。


 なぜこの魔王だけ討伐されなかったのか?理由は簡単、美少女だからだ。


 美少女だから助けてやればその内俺の事を好きになるかもしれないという下心から、この最弱魔王を倒そうとする冒険者を全てこの俺が倒したのだ。


 その時の冒険者たちの「えっ、あんた勇者やん……」みたいな顔を、俺は一生忘れることはないだろう。


「おいガキ共、野良魔王をいじめるのはやめてやれ。かわいそうだろ」

「あっ!アディだ!元勇者だけど今は家畜以下だって父ちゃんが言ってた!」

「逃げろ!」

「待てやコラぶっ潰してやる!」


 くっ……あいつら逃げ足速いな。まあいい。


「おい、大丈夫か?」

「ううっ……ありがとうございます、ありがとうございます」

「お前はたしか……」


 全身を黒いローブで覆われているものの、その豊かな身体のラインまでは隠せない。フードからこぼれるピンクの髪が存在を主張し、震えながらもこちらを見上げる双眸は見入ると吸い込まれてしまいそうな程に大きい。


「貴方様はいつぞやの……お優しい勇者様……うう……そうです、私はあの時助けていただいたリリスです」


 リリスが泣き止むのを待ってから、そこらにあった喫茶店に入った。


「元々魔王は兄の味噌ラーメン醤油味がやっていて、四天王にしたいからあともう一人魔王が必要だとのことで、無理やりバイトとしてやっていただけなんです」


 まじであいつ頭悪いな……。


「今は心を入れ替えて暗黒騎士に転職し、世の為人の為に働こうと考えているのですが、中々仕事もなく……明日の宿すらもない状態なのです……」


 おっ、これはチャンスだな。

 ハーレムを失った俺としては、とりあえず女の子を身の回りに置いておきたいところだ。リリスなら申し分ない。


「それじゃ俺と一緒に来るか?今からちょうどこの街を追い出されるところなんだけど、まだ金はあるし家ももらったから生活にはしばらく困らないぜ」


 俺の言葉を聞いたリリスは俯きがちだった顔をあげると目を見開き、ぱあっと顔を輝かせた。


「本当ですか!?ありがとうございます、ありがとうございます」


 こうして、元最弱魔王の美少女暗黒騎士が仲間になった。

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