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壊れた意識を取り戻せ!  作者: できれば匿名希望でお願いいたします
2 新たな世界で戸惑う理由
8/13

都市拠点

「おお・・・」

そこは、まさに大都市だった。

現実世界での東京のような───ビルが立ち並ぶ、なんとも賑やかな街だった。

「・・・?ユウト、ここに来るの初めてなの?」

ああ、そうだ。初めてだということを、伝え忘れていた。

「まあな。ずっとアーテルにいたからな」

「えー!?は、初めて!・・・まあ、いいや。ならついでだし、案内したげるよ」

「え、さすがにそれは悪い」

だがアルカはいいのいいのといった様子で答えた。

「いいよ。・・・あとで代償払ってもらうから」

「はっ、代償?」

「さ、まずはギルドに行ってみよ」

「サラッとスルーしたな」

「あそこらへんかなー?でっかいタワーになってるんだよ」

まあ、代償(?)の話は置いといて、タワーとはね。ギルドというもんだから、てっきり酒場みたいなものかと。

「高いのか?」

「うん、すごく。聞いた話だと、350階まであるらしいよ」

さ、350階!

現実世界にももちろん超高層ビルはあるけれど、そんなに高いものはないはずだ。第一、一階分3メートルとしたら、1キロ超えるじゃないか。

「そ、そりゃ高いな・・・」

俺はここで、ある疑問を持った。

「・・・そういや、それだけ高いのに、なんでこっからは見えないんだ?」

するとアルカはふふふと笑って、

「ギルドのまわりには結界が張ってあってね、まわりからは見えないようになってるんだよー。あ、でも結界の中から外は覗けるけどね」

と答えた。

へー、なんとも高性能な。

たがうなずける話でもあった。もし万が一街の中に凶竜(ナイトドラグーン)が入ってきたら、真っ先に馬鹿でかい建物を狙うだろうから。

「そりゃ不思議だな。で、あとどれくらいでつくんだ?」

「んー、そろそろかな?だけどここらへんは道が複雑でねー・・・」

そう言ったアルカの顔は、だんだん引きつっていく。

───もしや。

「・・・迷子、か?」

するとアルカはあわててこっちを振り向き、

「ばっ、んなんじゃないわよ!ただ、これからの未来に繋がる・・・そう、わたしたちの新たなる扉を探し求め・・・」

「ようは迷子ってことだろ」

「うっ、うううっ!迷子じゃ・・・迷子なんかじゃ・・・っ!」

アルカは否定しようとするが、真っ赤になった顔では説得力は皆無だ。俺は追及をやめ、ギルドにたどり着ける方法を模索し始めた。

「んで・・・まず、方角はどっちなんだ?」

「え?・・・それは、こっちの方だけど」

そう言ってアルカは右側を指差す。

「いやっ、待って、こっちだったかも」

そう言って指差したのは、左側。

「んーー?いやいや、それともこっち・・・?」

今度は斜め後ろ。

「おいおい、どっちなんだよ・・・。案内されてる側の俺が言うのもなんだけどさ・・・」

「い・・・や・・・こっち、だっ!うん、よし、こっちに行ってみよう。うん、きっと、そこが正解だ、うん」

「『うん』多くないか?」

「いや、そんなことないって、うん」

・・・・・。

返す言葉を無くした俺は、とりあえずアルカが最後に指差した方向に歩き始める。




とことことこ。

しばらく、無言で歩いていた。

そして思ったのだが・・・

「車、少なくね?」

もうそこは先ほどの大都会というイメージとはかけ離れた、古ぼけた一軒家ばっかりの住宅街だった。

「・・・まあ、大丈夫。きっと」

「その安全性は何が保証する?」

「わたしの勘」

ならだめだ。出会って数十分だが、わかりきっている。

「いや、これ本当に着くのか?なんかもう、都市拠点(シティビルド)を抜けそうな気も───」

言い終えぬうちに、俺を不思議な感覚が襲った。

ぐにゃりと、一瞬視界が揺れる。そして、体がスウウッと緑色の光に包まれ、無重力をも感じた。

「おわっ!?」

なんだこの感覚は、と言いかけたになったところで、アルカが言った。

「やった、結界の中だ!」

「はぁ!?」

「うん、わたしの勘は間違ってなかった!ほらユウト、着いたじゃん」

・・・何も言い返せない。

だがまあ、ここまで連れてきてくれたのはアルカの厚意というものだろう、それには感謝しなければならない。

「ま、まあアルカ、ありがとう」

するとアルカは微かに笑って、こう答えるのだ。

「さ、行こう?・・・わたし(⚫︎)(⚫︎)の、"たったひとつの家(ギルド)"へ」

俺は、次なる一歩を踏み出した。

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