出会いと謎
「君は・・・みない顔だね。まあ、こっちからは顔が見えないんだけど」
ふいに、後ろから声をかけられた。
見ると、青い帽子を被った小柄な女の子だった。
「・・・君は?」
俺は聞いてみた。
「───わたしはアルカ。アルカ=クレニス。都市拠点で、炎騎士として働いてる」
・・・炎騎士?
俺は知らない言葉に、眉をひそめた。
「・・・君は?」
だがそんな俺に構わず、質問をぶつけてくる。こちらの状況はおかまいなしといったところだ。
「俺は・・・萩坂雄人」
すると、アルカは眉をひそめた。
「ハ、ハギサ・・・?聞いたことないし、長いな・・・」
ああ、そうか、と俺は察した。
おそらくこの世界では、ラノベみたいに名前はカタカナで表されるのだ。だから、日本名の俺の名前が分かりづらかったのだろう。
「まあ、適当にユウトとでも呼んでくれ」
これなら、まだそれっぽいだろう。
「ところで、君は俺に何か・・?」
俺は話しかけてきた理由を訊いてみた。
「ああ、そうそう。ユウト、だっけ?君が使ってるその装備、一体どこで・・・?それ、なかなかレアなやつじゃん・・・」
知らんかった。
だが、大天使ガブリエルから貰ったと、言っていいのだろうか・・・?
すると、察したのかガブリエルが俺に話しかけてきた。
(わたしがその装備を授けたことは、秘密にしておいて下さい。どこかで拾ったとでも言っておいて下さい)
了解。まあ、そもそもガブリエルとあんなことがあったっていうのが知られていいものかどうか、わからないしな───
「ああ、これか。これは、あそこら辺で落ちてたから、拾った」
と言って、俺は遠くを指差す。
「ええ!?都市拠点の方なの!?わたしが来た時はなかったのに」
ええー!あそこが、都市拠点だったのかー!?
その場で、二人とも驚いた。
「まあ、いいや。ところで、ユウトのクランは?」
ク・・・クラン?
(クランというのは、自分の戦闘スタイルのことです。さっき彼女が炎騎士と言っていましたが、それも一種のクランです)
ふーん。・・・て、俺はなんて言えばいいんだ!?
「えーっと、・・・俺は・・・俺のクランは───」
「何よ、やけに溜めるじゃん」
ギクッ!
や、やばい。何も案がない。
一体。どうすれば・・・?
と、俺の頭の中に、一つの案が思い浮かんだ。
「なんだっけ?」
目の前でこける音が聞こえた気がした。俺は慌てて補足する。
「いやいや、あの、アレだよ、名前がわかんないんだよ。ほら、あの風の詠唱超術使って、剣で戦うやつ」
するとアルカは、ああ・・・とでも言いたげに、呆れた顔をした。
「なんだ、そういうことね。確か、それだと・・・」
頼む、でっち上げの戦い方が存在していてくれ!
「風魔剣士ね。・・・まったく、ちゃんと自分のクランくらい覚えておいてよ・・・。初対面でこんなこと言うのもアレだけどさ」
あってよかった・・・。なるほど、風魔剣士ね。
───って、そうじゃなくて!
「んで、俺、都市拠点に行きたいんだけどさ、方向とか・・・」
即答だった。俺が、言葉を言い終えぬうちに。
「ふふん。いいよ。案内してあげる」
「え、流石にそれは気が引け」
「いいのいいの。どうせ、わたしも都市拠点に忘れものしたし、それに」
それに・・・?
「──んま、いいや。じゃ、ついてきて」
・・・?
謎は、深まるばかり。
俺は、赤毛のこの少女に少し興味を持った。
───あー、もちろん、そういう意味じゃないぞ!?