探し求めて
「ここが宿だよ」
アルカにそう言われて、俺は先ほどこのやや狭い宿の部屋に入った。
────。
俺は、今日起こったことを振り返っていた。
まず、大会の帰り道、謎の男に殴られて。
異世界に転生して。
ゴブリン似のモンスターと戦って。
都市拠点でアルカ、リンに出会って。
アルカたちのパーティに入ることになって。
俺は、ここでふと思った。
………意識輝玉に関わること、何にもやってなくね?
すると、ガブリエルはまたも俺の心を見透かす。
(意識輝玉集め、順調に進んでいますか?)
毎度毎度………鋭いやつだ。
おっと失礼、毎度毎度鋭い神様だ。
「あー、まあ、とりあえず戦力は揃ったっていうか、準備だったというか……」
まあこれは、言い訳は混じっていれど大半は本心だ。
一人で意識輝玉を集めようものなら、どんな困難があるかわからないゆえ心細いところがいくつかある。そういった場合に、仲間がひとりふたりいるだけで大きく負担が変わってくることだろう。特に、一人と二人のときでは。
それに、まあ………都市拠点まで送ってもらった恩返し、もあるし。
俺は、どさっとベッドに腰掛ける。
「そういや、この間現実世界の方ではどうなってるんだ?俺がここで何週間何ヶ月もいたら、現実世界の俺は………」
(ああ、それについては心配いりません。貴方がこの世界にいる間、現実世界の時間は止まっていますから)
なるほど、遅くなっている、じゃなくて、止まっている、と。
「んで、意識輝玉だが……たしか凶竜が持ってたとか言ってたな………だけど、そもそも俺の意識輝玉は、どのくらいあるんだ?」
数。
それが大体ででもわからなければ、全く絞りこめない。微々たる情報とはいえ、少しでも集めておくのが吉だろう。
(わかりません。一個の意識輝玉に、どのくらいの期間の意識が入っているか、それはランダムなので)
ふーん………。
俺は疲れたので、ベッドに横たわる。
低反発のマットレスが体にフィットして、なかなか気持ちいい。
「なら、まずこの世界の広さを知りたい。地球の表面積は、大体5億(※㎢)ちょいだったか」
そして日本は38㎢ぐらいだったような気がする。
その広さをくまなく探すだけでも大変だ。まあこれを目安として考えると。
(そうですね………大体、8900万㎢といったところでしょうか)
………まあ。
地球の5億㎢と比べればけっこう少ない方だが、それでも日本の大きさを比べればわかる通り相当大変な面積だ。地球の5億㎢の中には、海の分が多く含まれているため、陸地と海洋の面積比が7:3だからきっと一億五千万㎢くらいだろう、それでも骨が折れる作業だ。
この世界にどのくらい海や都市───凶竜が現れない場所があるかわからない。
まあ、そもそも海のど真ん中に落ちてる可能性もあるが………。
………なんて退屈な………。
俺は、寝返りをうつ。
(ですが、ヒントとなることがあちこちに散らばっているかも………って、寝てるんですか!?)
次の日の朝。
「なあ、ちょっと鉱石採掘のクエストやらねーか?」
俺は二人に提案した。
鉱石採掘、これならもしかすれば意識輝玉が二人の目には鉱石に映るかも知れない、それを俺が知ることができれば回収できる。
まあ二人に罪悪感を感じる節もある。言い方を変えれば、二人に探させているとも言えるのだから。
「いーよー。なんか最近討伐系ばっかやってて、なんか大変だったから」
「わたしもオッケー。ユウト君の加入祝いとして、なんか好きなのやらしてあげる。見本も兼ねてね。まああれだよ、チュートリアルってやつ」
二人は、快諾してくれた。
………なんともありがたい。
「サンキューな。じゃ、受けてくるぞ?」
「「はーい」」
俺は、二人の少女を背にしてクエストを選び始めた。
これがいずれ、大きな出来事につながることを知らずに。




