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はじめての能力(3)

「この力、使いようによってはお主を助けるやもしれぬが……修練が必要じゃな」


 先ほどの眩暈と不快感から少し落ち着いてきたのを見て取ったのか、水の巫女が少しずつ、言葉を切りながら語りかけてきた。


「わしもこのような風変わりな能力を視るのは初めてじゃからな」


 水の巫女――見た目は十七、八歳のかわいらしい女の子なのだが、その物言いから老練な風格を漂わせている。


「どのように伸ばせばいいものか……

 そうじゃ、お主、聖剣を易々と持ち上げたな、あれは、どうやった?

その力、どのように使ったのじゃ?」

「ちょ、ちょっと待って。その前に、俺の力って、どんな能力なんですか?」

「うむ、そうだな……」

 水の巫女は、しばらく考え込むようにしていたが、ふと思いついたように、ぽつりと言葉を発した。

「強く思い信じることで、その信じた事象を具現化する能力。とでも言えばいいかな」

「それって、どういう……」

「単純に何かを成すようなものではない。炎の術に長けていたり、水の術に長けていたりするようなものではないのだ。お主が願い信ずることで、この現実に作用する力が生み出される」

「え?信じれば何でも思い通りになるってこと?それ、すごいことなんじゃないの?」

 正直、俺は思った。この能力、チート過ぎてマジヤバイんじゃないの!?何でも俺の思いどおりになるなんて、夢みたいな力。俺、この世界で最強なんじゃないの!?『俺を助ける』なんてレベルの話じゃないと思うんだけど……。

 胸の高鳴りが抑えきれないほどに、高揚してくるのが自分でもわかった。

「まあ、待て。事はそう簡単ではない。お主の想いに一片の陰りでもあれば、その能力は発揮されないだろう。つまり、お主が願っても、少しでも迷いがあったり、願った結果が実際に起こることを信じ切れなかった場合には何も起きないということだ」

「は?」

 俺の感じた疑問に答えるように水の巫女は言葉を続けた。

「そうじゃ。人にとって、僅かな迷いもなく何かを信じ切る、というのは、そう簡単にできるものではない。無になり、ある種の悟りのような領域に心を持ってゆかねばならぬ。お主にそれができるか?」

「…………」

 ついさっきまで感じていた、これから始まる俺の物語への期待感と、ワクワクの希望が早くも打ち砕かれて、血の気が引くように冷めていった。マジでただのぬか喜びだったってことなのか……。

 超能力みたいな、非現実的な技をポンポンと繰り出したりできる場面を想像して舞い上がっていたのに……そうだよなぁ、非現実的な事柄ならなおさら信じ切って行使するのは難しいだろう。例えばだ、俺自身が掌から炎の玉を打ち出す火炎魔法を使っている姿が信じられるか?どんなに信じ込もうとしたって、『そんなのできるわけないだろ』っていう気持ちが心のどこかにきっと生まれるはず。それじゃ、意味ないんだよなぁ……。

「待て。待て。お主はどうも結論をきすぎるきらいがあるようじゃな」

水の巫女は、相変わらず俺の考えていることを先読みして語りかけてくる。そして、少し間をおいて、今度は諭すような口調で、ゆっくりと言葉を続けた。


「思い出してみろ。お主はその能力を一度使ったじゃろ?使い物にならないような能力ではないということは証明されておる。一度使えたなら、二度、三度……そして、使いこなすこともできるようになる、ということだとは思わぬか?」

「聖剣……」

「そうじゃ。お主には聖剣を手にして振るう能力ちからがある。正に勇者の能力ちからだ!その能力ちからがお主を助ける!この国を助け、この世界を助けるのだ!」


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