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はじめての能力(1)

 憧れていた異世界での勇者生活とはいえ、この長く続く戦争に身を投じたのだから、その道のりは生半可なものではなかった。


 元々、俺はただの中学生だ。

 本当なら、戦場に放り込まれただけで、あっという間に死んでいたことだろう。

 しかし、実際にはそうはならなかった。


 俺をこの世界に導いた風の巫女は、大国『アシュラット』の姫殿下の元でそのお役目を努めていた。

 アシュラット国は、魔族軍との戦いにおいて急先鋒であり、その中心的な役割を担っていた。


 つまり、最初っから俺はアシュラット国の全面的な支援を受けられる立場にあったというわけだ。

 見知らぬ異世界で、一人ぼっちではなかったこと。

 これが、何よりも心強かったし、感謝してもしきれない、ことだと思っている。


 そして、もう一つ――


 勇者として転移した俺には、チート的な能力が授けられていた。

 その能力とは、

 ――強く思い信じることで、その信じた事象を具現化する能力。


 このチート能力があったからこそ、戦場で戦うことができた。死なずにも済んだ。


 その能力を初めて自ら認識し、使用したのは案内された姫様の御前だった。


 この世界に来てすぐに、新たな勇者候補として俺は、姫様との謁見の場に連れて行かれた。

 絢爛豪華な、目映いばかりの宮殿内部の装飾に気を取られてキョロキョロしていた俺の前に、一振りの大剣が運ばれてきた。

 聖剣の授与式だという。


「は!?」


 俺は唖然となった。

 その剣は、中世騎士が携えているような先端が三角に尖っている両刃の剣だった。

 問題はその大きさだ。長さは二メートル近くもありそうに見える。刀身の幅も二十センチはありそうだ。

 とにかく巨大な剣だった。重量もありそうだ。

 運ばれてきた台車から、姫様の足下に置かれる時も、獣族の体格のいい男が二人がかりで降ろしているほどだ。『こんなでっかい剣、どうしようっていうんだ?』というのが、俺の最初の印象だった。

 その聖剣を俺に授けるという。


「ちょ、ちょっと待ってくれ。こんなでかいの貰っても……」


 そう言いながら、大げさな態度でひるみかけたが、『ちょっと待てよ』と、ふと思い直して言葉を切った。


 ――ここは異世界じゃないか。俺は勇者として召喚されたんじゃないか。勇者には聖剣が付きもの。岩に突き刺さって誰も抜くことができなかった剣を、かのアーサー王は、ひょいと簡単に抜いたではないか。それこそが勇者の証。ならば、勇者『俺』も、こんな剣、ひょいっと片手で持てるんじゃないの!?勇者だから、持てるのが当たり前なんだ。だからここにこうして、持ってきたんだろう、俺の前に。


 そんな考えが頭の中に閃き、黙って剣の前に進み出た。

 そして、片手でつかを握って、ひょいっと持ち上げた。

 本当に、なんの苦もなく簡単に、その大剣は持ち上がり、俺はそのまま天井に向けて突き上げた。


 その瞬間、大きな歓声が沸き起こった。

 その場に居た誰もが『信じられない』という顔つきで、驚きと喜びの歓声を上げていた。


「あなた様は、私たちが待ち望んだ真の勇者様なのですね」


 姫様が言った。少し目頭に涙が浮かんでいるのか、その瞳がきらめいていた。


「誰も一人では持つことさえ叶わなかったこの聖剣を、こうも軽々と持ち上げて……

とても嬉しゅうございます。この日が来ることを待ちわびていました」


 ――え!?そ、そうなの?ちょっと、待って……


 その状況がわからずに、俺は持ち上げた聖剣を降ろすこともできずに、そのまましばらく呆然と立ちすくんでいた。


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