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9月11日(月)・神宮司パーティー・2

 神宮司の屋敷は山の頂上にあって、簡単に言えばもう城だ。門構えからしてデカくて、門番が居る。

 クラスメイトは全員チェック済みで、門番さんに頭をさげて入っていく。無駄に長い石畳は全部白い石で出来ていて、太陽に光で反射して目が痛い。

 金持ちはどうしてこうも白くしたがるのだろう。椎名の家の両親の部屋も真っ白なんだ。あれか、キープが難しいからそれが富の象徴なのだろうか。

 俺は基本的に黒めの服が多い。それは汚れても問題ないから……だから、白はその反対の理由だろう。

 目が痛えええ……と相変らず笑いながら三人で中に入る。

 大広間のような場所があって、その奥に巨大なフロアがある。ダンスフロアのような吹き抜けの空間で、三階立てくらいの高さが抜けいて、奥には真っ白な螺旋階段。

 下はまっ赤な絨毯で、外には湖が広がっている。木々の緑が美しくて、もう別世界だ。

「七海!」

 螺旋階段の一番上に、神宮司さくらが立っていた。

 その姿はピンク色の肩が出たドレスで、髪の毛は盛りに盛られている。毎回だけど、パーティー時の神宮司さくらのドレスはヤバい。

 ヒュ~~~っと浜島は口笛を吹いた。そして「相変らずキャバ嬢みたいだな」と言った。

 俺と七海は同時に浜島の方を見た。その視線に気が付いた浜島が「いやいや、よくホテルに同伴で来るからさ」と言うので「その方が気持ち悪いわ」と断言した。

 本当にホテルの客を毎回見てるのかよ。訴えられるぞ……。俺の視線を無視して、浜島はすでに出されているローストビーフを皿に盛ってもらっている。

 今までサービスしてる人なんて、しっかり見て無かったけど、ここで仕事をしている誰かの可能性もある。

 もちろん神宮司や椎名、それに三本の指示で。

 一気に胸が苦しくなる。この中の食事に、何か入ってるのか? あんな風になる劇薬が。

 七海が俺の手をギュッと握る。

 ……止めたい。全ての食べものをひっくり返して「犯人はお前か」と叫んで回りたい。

 でも犯人は気が付かれてないと思っている時が、一番大胆な行動に出るらしいと七海が言っていた。

 観察だ。もうそれしかないし、もう入っていたら、手のうちようはない。

 ……本当に無力だ。俺は俯いた。

「やっほー! やだ、本当に付き合いはじめたの。手をしっかり握って~」

 神宮司が螺旋階段から下りてきた。

「やっと、でしょ?」

 ここは友達の七海が一歩前に出た。

「いつ? 運動会の時? ご飯食べてる時? いつなのいつなの~?」

 神宮司は楽しそうに七海の頬をツンツンと触った。

「二人だけの秘密」

 七海は俺の腕を引き寄せた。フワリと甘ったるい匂いがした。

「えーー、ねえ、あっちで聞かせて! 七海が好きな燻製チーズあるよ?」

 神宮司は七海の腕を引いた。七海はその腕から、体を引いて、俺のほうに近づいた。

「ごめん、今日は付き合って初めてのデートなの。二人で居させて?」

「ヤダーー、ゴメン、気が利かなくて!」

 そう言って神宮司は七海の肩を叩いた。そして去り際に

「あ、今日は七海からの連絡通り、ドレススペシャル。シンデレラの衣装準備してあるよ!」

「ありがとう。着るね!」

 七海は他のクラスメイトの方に向かう神宮司の背中に手を振った。

「衣装多めにしてくれって、ラインしたのかよ」

「クラスライン見て無いの? 着替えをちゃんと見ないと。行こうか。もうみんな着替えてるよ」

 七海は俺の手を引いて、歩き始めた。

 俺は歩きながらクラスラインを確認した。そこには【今回はみんなでお姫様にならない?】という七海の提案に、みんながイイネー!と乗っていた。

「男の人でコスプレするのは少ないと思うけど、見られるだけ見てきて」

 俺は七海の言葉に頷いた。

 そしてお互いの更衣室の前まで来た。

 左側に女子更衣室。もう女子の甲高い笑い声が聞こえる。

 右側に男子更衣室。それなりに声が聞こえる。

 今までずっと離してなかった、手を離す瞬間が来た。

「……怖い」

 俺は七海の手を握ったまま言った。

「実はね」

 七海はタートルネックを少しずらして俺に見せた。

 そこにあるアザが、ほんの少しだけ薄くなっているように見えた。

「……マジか」

「ほんの少し効いてる気がする。でもね……怖がらずに聞いて、かなり体調が悪い」

「え?」

 血の気が引くとは正にこの事だ。体調が悪いって、どういうことだよ?

「体がすごく重いの。地面に引きずりこまれるような重み。それに頭もかなり痛い。ごめんね、でもちゃんと言わないとって……」

 七海は俺にフラリともたれ掛かった。その体は間違いなく発熱していた。

「七海、お前……」

「分かってる」

 七海が俺の手を握った。ちゃんと触れると分かる。手も汗をかいていた。

「かなり熱があるだろ。ひょっとして俺の風邪がうつったのか?」

「ううん、違う。これは違うって分かるよ。なんだろう、体の中が炎症してるっていうか、燃えてる感じ。でももう、仕方ないよ」

 七海は俺のほうを見た。そしてツッ……と手を離した。七海が俺から一歩離れる。

 ずっと手を繋いでいたので濡れた手に空気を冷たく感じる。

 思わず掌を握りしめた。

 汗がヒヤリと冷たい。

「更衣室見てくる。それに私もドレス着るね。ハイネックの上からで悪いけど!」

 七海はそう言ってニヤリと笑った。白い歯が見えて、その隙間から丸い舌が見えた。

 いつものように七海がしようとしている。だから俺もいつもの七海するように対応した。

「似合わねーだろ」

「大きなお世話!」

 七海は目に涙をためて、更衣室のドアをしめた。

 俺も視界がぼやける。でも泣いてる場合じゃない。すぐに男子更衣室に入る。すると目の前に巨大な裸……浜島が居た。

「ウス」

「う、す」

 俺はその肉に圧倒されながらも、背中を確認した。やっぱり現時点でアザはない。お前のお肉は相変らずだな~とわざとふざけて前に回り込み、見る。やっぱり無い。

「お、話題の人じゃないですか」

 振向くと織田が入ってきた。織田は部活帰りなのか、野球部のユニフォーム姿だ。いやー、神宮司のパーチーは服が借りれて助かるわーと言いながら全身脱ぎだした。

 いいぞ……俺は織田の背中も確認した。やっぱり何も無い。

 その後佐伯他数人を確認したが、アザは無かった。

 やっぱり今日なんじゃ。

 俺は「話を聞かせろよおおお」と追いすがるクラスメイトたちを手で追っ払い、マントだけ羽織って外に出た。

 するとドアの前に薄紫のドレスを着た七海が立っていた。長い付け毛もしている。

 俺は慌てて走り寄り、手を繋いだ。

「大丈夫か?」

 七海は静かに頷いた。

「アザも確認したけど発光しなかった。やっぱりアザの範囲は狭くなってるの。でも……」

「分かったから」

 七海の手を繋いだまま、俺の方に引き寄せた。姉貴に一度メールしたほうが良いだろう。でも発熱したからと言って手の打ちようが無いだろう!

 俺に抱きしめられたまま七海が顔を上げた。

「アザ、誰にも無かった」

「やっぱり。こっちもだ」

 キツく手を握りあった。やはり今日が怪しい。


 俺はずっと考えてた。今日が怪しいとして、どうやってナノマシンが「どこに入れられたか」を見破るか。それは無い脳みそを絞って考えたが、名探偵コナンも出てきたけど、スケボーで駆け抜けていくだけだった。結局出た答えは、「そんなの無理」だった。だって料理全てを見守ることなんて出来ないし、裏の調理場で入れられたら完全にアウトだ。誰も分からない。

 ただ姉貴から「あのナノマシンは50度以上の温度になると、平たく言うと壊れる。低温のほうが活性化するのよ」と言われている。

 つまり加熱してない料理なことは間違いない。

 でもそんなの無限にあるんだ。前菜だけでサラダにローストビーフにゼリー寄せに……もう無理だ。

 だから俺は考えた。

 この前菜を食べる人は、実は少ない。浜島のように食いしん坊は食べるけど、基本的にパーティーが始まる前にゲーム大会がある。

 そこで犯人を絞り込めないか。

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