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創造がもたらすアルテ  作者: 菖蒲
第1章
3/135

埃かぶりの本

仕事中ひたすらにストーリーを考えてた...

だがしかし、なかなかいい案は思い浮かばず

ぐだぐだになって帰ってきたら...!!!?

ブックマークが「1」!!ある!!


まだ1話しか作成、投稿していないのに!!

ハイテンションになって物語の続きをマッハの速度(気持ち的)で打ち込みました!!

俄然テンションあがってきたー!!!


 

 「さてと...今日はこんなもんか」



 始業式を終え、帰宅途中、新しい本屋ができたということで、ナツメとサツキは二人してその店を訪れていた。

 サツキは好きな作者の新作が出ていないか探しに行き、ナツメは店をぐるりと見て回ると、気になった本を5冊ほど手に取り、レジへと向かった。


 そのあと会計を済ませ店舗の入口へと向かうと、俯いているサツキの姿があった。

 


 「不作か?」

 (....こくり)



 期待の新作がでていなかったことに落ち込み、俯きずーんとした雰囲気を醸し出している。

 そんな妹を見て何も思わないナツメではない。



 「ほれ、新しい本を買ってきたから、1冊だけ先に読んでいいぞ」



 そういって、先ほど購入してきた本の中から1冊だけ抜き取り、サツキに手渡した。

 受け取ったサツキは俯いていた顔を少し上げ、手渡された本を一瞥すると訝しい顔をしながらスケッチブックをナツメに見せた。



 (これ私の好きな作者じゃない...)


 「文句を言うな。嫌なら返せよ」



 親切心で妹に本を手渡したが、帰ってきたのは不満な表情をするサツキの不服そうな言葉だった。

 そんなサツキに対して少しイラッとしたナツメは返せと手を差し出す。


 だが、サツキはその本を大事そうに抱え込み、軽く悪戯っぽく笑うと小さくべーっと舌を出し、小走りで店から出て行った。


 

 「なっ!?待て!!」



 サツキの思わぬ行動に少し面を食らったナツメは、一瞬戸惑うもサツキを追いかけ慌ただしく店を後にした。











 「お、おい...いい加減、止まれ!」


 (つ、つかれた)



 2人は店からずっと走り続け、いい加減体力も付きそうなところでナツメが制止をかけた。

 もともと運動系がダメなナツメにとって、走るという行為は自殺行為にも等しい。

 対してサツキは運動はできるが、普段から運動をしているわけではないので、体力はナツメ同様からっきしだった。



 「ぜぇぜぇ、無駄に.....疲れ、た」


 (激しく同意)


 

 ナツメはこれ以上は走れないどころか、言葉を口にするのも苦しそうだ。

 立っているのも辛くなり、ついには仰向けに寝転がってしまった。

 荒れた息を整えつつ、いつの間にか少し日は傾き、徐々にオレンジ色に染まりつつある夕暮れの空が広がっていた。

 

 

 「きれいだ.....」


 

 つい、そう呟いてしまうほど春の空は空気が澄み渡っていた。

 そんなナツメを上から覗き込むようにサツキの顔が映る。



 (風邪ひいちゃうよ)


 

 いつまでも寝転がっていると、かいた汗は冷め、火照った体を冷やしてしまい、ぶるっと悪寒を感じる。また、春先とはいえど、夕方にはそれなりに冷え込む。

 サツキの言うとおり風邪をひくまえにと、ナツメは起き上がった。



 「そろそろ帰るか」

 (こくり)



 そうして歩き始めるが....



 「.......ここどこだ?」


 

 そうサツキに問いかけるが、サツキは首を傾げるだけで場所を把握していないようだ。

 必死になって運動神経抜群の妹を追いかけた結果迷子になるとは、なんたる不覚! ナツメは内心そう思いながら、頭をガリガリと掻き、記憶の引き出しから地図を引っ張り出し、周りの光景と見比べるが....



 「わからん。さっぱりわからん」


 

 どうやら、ナツメが通ったことのない道らしい。

 サツキに再度聞いても首を左右に振るだけで、どうも頼ることはできないみたいだ。

 さてどうしようかと、ナツメは少し悩んだが、考えても仕方が無いと割り切り、歩みを進めた。

 

 

 見慣れない道を歩いて1時間くらいは経っただろうか、一向に見覚えのある道に出ない。

 当たりは薄暗くなってきており、心の内に少しの不安が広がっていく。

 まぁ、なんとかなるだろうと楽観的に考えていた1時間前の自分を恨むナツメ。来た道を戻れば最悪知っている道に戻ることはできただろうに、と過去の自分に助言をしたい気持ちだ。


 それから更に30分くらい歩いたところで、1軒の古びた本屋が道の小脇にほそぼそと小さい明かりをつけて佇んでいた。

 こんな人気の無い道に、怪しさ満点である。しかし、ナツメはこれも何かの縁ということで、帰り道をそっちのけで古びた本屋へと入っていった。

 サツキはそんな兄を見て、「私も入るー」とでも言うようにナツメのあとを追うように店の中に入った。



 「外観からして思ったけど、この店薄暗いな」


 (こくこく)



 店に入ると、人通りが少ない通りだけに、入店者はナツメたち以外に誰もいなかった。店内は豆電球が4つほど天井から釣り下がっているだけで、本棚の裏に回れば明かりが極端に届かなくなる。

 また定期的に掃除をしていないのか、ところどころ蜘蛛の巣が張ったり、埃をかぶっている本もある。

 そんな本がある中でも、近年の本は入荷しており、先ほどの店舗で見かけた本もいくつか見受けられる。



 「サツキ、お目当ての本は........あるわけないか」


 (ガクッ)



 こんな古びた店に新作の本などあるはずもなく、店内を探しまわったサツキは膝と手を地に着け、四つん這いになり酷く落ち込んでいた。

 そんなサツキのことはさておき、何か珍しいものはないかと店内を見渡すナツメ。ところどころ薄暗いため、目を凝らしながら目線を移し、ひとつひとつ棚を確かめるように見る。



 どれもこれも見たような本ばかりだな。ここらにある本は大抵書斎や図書室にあるし、収穫はなさそうだな。



 店の奥まで探したナツメは店を出ようかと踵を返したとき、ふと視界の片隅に1冊の埃かぶった本に目が留まった。ナツメはその埃かぶった本を手にとり、もう片手で埃を払うように本を叩く。埃の下から出てきたのは何の変哲も無いただの真っ黒い本。表紙には――



 「arte....アート?...いや、アルテか?芸術?そのあとは擦れて読めないな」



 『Arte     』と書かれていた。後ろ半分は擦れて文字の溝が潰れたのか、読み取れない。



 こんな本見たこと無いな。ちょっと気になるし、買って家で読んでみるか。



 ナツメはその本を片手にレジへと向かい会計を済ませ、本日2度目の落胆している妹を引っ張りながら店を出た。



 「さて、掘り出し物っぽい本を見つけたはいいが、これからどうやってかえ――」


 (.......?)




 言葉を途中で切ったナツメを不思議に思い、俯いていた頭を上げたサツキはナツメを見て首を傾げた。

 そして、ナツメが見つめる目線の先へと視線を移すと、そこには登校中に通る見慣れた道があった。


 

 「いつの間にかいつもの道に戻ってきてたのか...?」


 (そうみたい?)


 「良く分からんが、知っている道に戻ってきたし家に帰るか」

 (こくり)



 二人は何事も無かったように今日の戦利品を抱え帰路へと着いた。

 








 「いただきます」


 (こくり)



 家に帰ってきてからナツメが用意した夕食を前に、いただきますと合掌を済ませ、食事をとっていた。

 今夜の夕食は魚の煮つけと生野菜のサラダ、そして白ご飯と筍入り味噌汁だ。春先ということで、新鮮な野菜と今が旬の筍が盛りだくさん。サツキはトマト以外の食べ物の好き嫌いはなく、美味しそうに頬張りながら食べている。


 

 「もう少し落ち着いて食べろよ。それより、少し疑問に思ったんだが」


 (.....?)



 ナツメの声に反応し、サツキが魚の煮付けに箸を伸ばしていた手が止まる。



 「さっきの古びた店なんだが、なんで人気のない通りに店を開いていたんだろうな。あんなところで店を構えても客足は伸びないだろうに」


 (......)



 サツキはそんなナツメの疑問に考える素振りを見せるが、わからないっ。といった表情をすると止まっていた箸をすすめて、これまた満足そうな表情で魚の煮付けを頬張る。さっきのナツメの言葉はガン無視だ。

 そんなことよりご飯っとでも言うように幸せ満開で食事をするサツキの表情を見ると、ナツメは「まぁどうでもいいか」と溢し、先ほどふと思った疑問を頭の片隅へを追いやった。


 そしてそのまま夕食を済ませ、サツキが入浴している間にナツメはリビングのテーブルの上に今日の戦利品を広げていた。

 その中でもやはり一際目立つのは古びた本。さっきの本屋で埃を幾分か落としたが、それでも完全には落としきれておらず、ナツメは濡れティッシュとタオルを持ってきてキレイに表面を拭き取った。



 「やっぱり擦れて読めないな」



 いくらキレイに拭き取っても、後ろ半分の潰れた文字までは読めなかった。

 埃を取り、キレイに拭き取ったことによって、隣に置いてある新書と見比べ、いかにその本が古びた物なのか一目瞭然だった。

 ところどころ染みができており、艶があっただろう真っ黒な表紙の一部が茶色くなっている。



 「もっと本を大事にしてやれよ.....」



 だが、それは言うほうも言うほうで、普段から本を棚ではなく、山積みにしているナツメに言われても、言われた店としては「お前には言われたくない!」とでも思うだろう。

 

 しばらくその黒い本を手に取り、『小口』や『天』、『地』に指を這わせたり取りきれていなかった埃を取っていると不意に後ろから床を踏みしめる音がした。



 「サツキ、あがったのか」

 (こくり)



 肩越しに後ろへと顔を向けると、水色のパジャマに熊のスリッパを履いて、濡れた髪をバスタオルで拭きながらリビングへと入ってきたサツキの姿があった。

 今日の戦利品に興味があるらしく、サツキもナツメの肩越しに覗き込んできた。そして、ナツメが手にしていた真っ黒の本を指差し小首を傾げる。



 「そう、さっきの店で買ったのがこの本」



 ふーん、とでも言うように他の本を見渡す。そして、一通り見てやはり気になるのか、真っ黒い本へと目線が戻る。



 「やっぱり気になるよな」



 もったいぶるように、ナツメが目を細め悪戯っぽく微笑むと、サツキも少し興奮気味にこくこくと頷く。

 ナツメも先ほどから中が気になっていたが、開けるまでには至っておらず、どうせならとサツキを待っていたところである。

 そして、表紙の『かど』に手をかけ『見返し(遊び)』を捲った。そこには―



 「白紙......?」


 (......?)



 まさかの印刷ミスの期待はずれの本かと、少しテンションの下がった二人は1

枚目の『扉』を捲り2枚目の『扉』を開け―



 「おい、また白紙かよ!」


 (.........)



 開けたページには表紙に反してキレイな白紙だった。

 古びた本屋で購入した埃かぶった本だけに、なにか珍しい本ではないかと少なからず期待していたナツメは訝しい表情になり、残念だと言わんばかりに本を閉じようとしたが、そこにサツキの待ったがかかった。


 怪訝そうにサツキを見ると、サツキはナツメに一度目を合わせ本を指差した。


 その指の先は本の中心を指している。

 正確には『のど』の部位だ。そこには薄っすらと文字が書いてあるようにも見えた。

 今の状態では良く見えず、『のど』を広げようと、ナツメは中指を『のど』に沿わせた、すると、徐々にその文字が見えてきて...


 

 「お、おいおい、なんだよこれ」


 (......!)


 

 ナツメの指が『のど』を上から下に這うにつれ、徐々に文字が『扉』を埋め尽くしていく。ついに『天』から『地』まで指が這った、そのとき―



 「な、なんだ!?」


 (ッ!?)



 鹿波家のリビングをすべて包み込む強く眩い光が覆った。

 三半規管が麻痺した感覚に陥ったナツメとサツキは突然の異常に理解が及ばず、目を潰されまいと本能からの行動により手で光を遮り視界を閉じた。


 その後、光が収束された鹿波家のリビングには2人の姿はそこにはなく、リビングのテーブルには新しい書店で購入した新書が4冊、キレイに並べておいてあるだけであった。

 







次回はいよいよ異世界へ!

よろしければ、次回もご愛読いただけたら幸いです。

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