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STRUGGLE  作者: 春巻き系男子
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4th Card 出口なき迷路

投稿が遅くなりすみません。


前回現れた新たな守護者によって、役割について悩む木崎の話です。

 自分だけの役割が欲しい。そう思っていたとき、おれに与えられたのが守護者の役割だった。もちろん最初は信じられなかったし、その重さに迷いを感じてはいたが、心のどこかでは待ち望んでいたことが実現したと思い、嬉しかった。それは否定しない。しかし、おれが求めていた役割というのは、おれにしかできないものだ。他の誰かにできるものなら、別におれがやる必要なんてない。それがおれの考え方。

 絢十も同じ役割を与えられたことを知ったとき、頼もしく思ったのと同時に衝撃のほうが大きかった。もしこれが絢十ではない他の誰かであったならば、まだそこまで気にしなかったのかもしれないが、相手がやつとなれば話は別なのだ。おれはあいつになにかで勝てたためしがない。だからといってこの役割においても絢十に負けるかどうかはわからないが、自信がわいてこないのはたしかである。

 そんなことを考えながら、夜の道を歩いていた。


 数時間前。

 エルーから、絢十はモンスターや古代世界についての一通りの説明を受けた。

「話はわかったか」

「まあ、大体は。ただいきなり役割がどうこう言われても実感わかないけどな。それでもやるしかないだろ。ならやるよ、木崎がやるんなら」

 おれはこの絢十の発言に違和感を覚えずにはいられなかった。中学時代の絢十は果たしていまみたいに熱いことを言う人間だったであろうか、いや、違う。おれが絢十への捉え方を間違っていなければ、絢十は自分が損だと思ったことを徹底的に嫌う人間だったはずなのだ。しかしながら、守護者の役割は明らかに損なものだというのに、あいつは受け入れようとしているではないか。不思議で仕方がない。あいつになにがあったのだろう。

「どうした、高校に入ってなにか変わったのか?」

「ああ、まあな。木崎といた中学の頃が楽しかったなあって最近思うんだよ」

 人は、そう長くない月日で変わるものなのだなと感じた瞬間だった。

「変なの。お前、そういうキャラじゃないだろ」

 おれたちは、つい二年前まで中学生だったのに、おれの知っているあいつは変わっていた。

「高校に行って気づくこともあるんだよ」

 そう言う絢十に、おれは笑って小突いた。以前に比べて、自然な形で接していると感じられた。

「モンスターを倒すの、お互い頑張ろうな」

 別れ際に絢十が言った。こんなふうに言ってくることも、中学ではあまりなかった。

「ああ、頑張ろう」

 絢十とならモンスターを倒せる。根拠のない自信を持てた。

「それと、あの子。しっかりと守れよ」

 余計なことを最後に言ってきた。


 現在。

 だが一人で歩きながら考えていて、どうも自分の考えは甘えにしか思えなくなってきた。絢十がいればモンスターを倒せる、なんてそれはあいつの力を頼っているということだ。つまり自分一人では役割を果たすことができないということではないだろうか。

 とは思うものの、この役割は自分一人だけではとてつもなく辛いものだ。もし絢十がいなければ、おれ一人で、すべての人間を守るためにモンスターへ挑まなければならなかった。

 守護者の役割は自分の役割である。しかし、自分だけの役割ではない。そのことがおれから自信を奪っていく。おれはあいつに勝てたことはない。だからこの役割においても、おれは勝てる気がしない。もちろん勝ち負けの次元の話ではないし、そんなことはやってみなければわからないが、今日の分身モンスターとの戦いで、おれの活躍とあいつの活躍を比較すればわかるだろう。要は気持ちの問題なのだ。

 本当におれはこの役割を全うできるのだろうか。それに見合うだけの器を持っているのだろうか。

 考えても納得のいく答えは見つからないかもしれない。だとしてもどうしても一人で考えたかった。

 周囲を見る。すでに空は暗い。そろそろ家に帰らないと晩飯の支度が間に合わなくなってしまう。今日からは自分一人の飯を作ればいい、というわけにもいかないのだから。

 家からそう遠くないところを歩いていたのですぐに着いた。ドアを開けてなかに入る。

「ただいま」

 普段の我が家とは違って、返ってくる言葉があった。

「おかえりなさい、けんいちさん」

 わざわざ出迎えてくれる古代人。帰ってくる場所があるとはこういうことを指すのだろうか。

「どうかしましたか?」

「……なんでもない」

 真っ先に台所へ向かうことにした。さて、人に食べさせられるもので、おれになにが作れたかな。

「けんいちさん、ご飯の支度ですか?」

「ああ」

「でも右手、怪我されているんじゃ……」

「あ」

 すっかり忘れていた。忘れていたということはそれほど重傷でもないということだろうか。そんな馬鹿な。あれほど痛かったというのに。しかし触ってみると痛みは随分と弱まっていた。

「手伝いますよ」

 さすがに、私が作りますよ、とは言わなかったか。古代の料理をここで作れるのかはわからないが、言われたらどうしようか一瞬悩んだ。

「痛みはもうほとんどない。おれ一人で大丈夫だ」

「そうですか? でも現代の料理の作り方も見ておきたいです」

 興味が出るのは自然なことだろう。ここまで素直に好奇心を出されては、隠してしまうのが罪という気さえしてくる。見せるほどの料理はできないが、現代のものであれば、古代人からしてみればどれも変わりはしないか。

「そこで見てろ」

「はい」

 そばに人がいるというのは、なかなか慣れないものだ。それに加えて、慣れない料理をするのだから動きはさらにぎこちないものになってしまう。勘弁してくれよ。

 この古代人は現代の世界にとっての希望。こいつがいなければ、おれたちがモンスターを倒しても意味はない。

 おれの役割は人間を守ることだが、それをやりつつ、こいつも守らなければならない。どちらか一方を選ばなければならなくなったとき、おれはどちらを選ぶのだろうか。

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