47th Card ぼくらのリターンマッチ 長刀の章
紫苑編。
扉を開ける。いくつかの長テーブルが、長方形を描くように並べられている会議室のような部屋。ホワイトボードの前に立っている姿がある。やはり待ち構えていたのは女帝シオエルドだ。暗くても、白い顔に青い瞳はよく見える。長テーブルを挟んでわたしたちは互いを見ていた。
「やはり、お前が来たか。セト・シオン」
「あんたを倒す」
他のみんなには任せたくない。これはわたしのための復讐戦だ。わたしがモンスターから解放されてからずっと、このときを待ち侘びていた。わたしを利用したお前だけは、絶対に許さない。
「誰も来なかったら術を使って呼び寄せたのだが、相手がお前なら不足はない。妾も全力で戦おうぞ」
シオエルドは筒のような棒を掲げる。すると筒の上の部分から赤い光が伸びていき、刀身を形成する。赤い光刃が、シオエルドの顔を鈍く照らし出す。
「どこからでもかかってくるがいい」
赤い刃をわたしに向ける。
「その余裕、いつまでもあると思うなよ」
長刀を構え、すぐさま攻め込む。
刃が空中を切る。
一閃を光刃で止められた。力は互角。
「なかなかの力だ」
鍔迫り合いの最中、シオエルドが感心したように言った。それがかえってわたしの怒りを買う。
「黙れ!」
両手で長刀を押した。
弾かれたシオエルドはホワイトボードを蹴って空中を移動し、わたしの背後へ跳んだ。すぐさま振り返るが、一歩遅かった。光刃が、わたしの腹を捕らえる。わたしの身体はホワイトボードに叩きつけられた。いまのでボードにヒビが入る。
「さあ、立ち上がれ。まだ戦いは始まったばかりだぞ」
その言葉が聞こえた直後、わたしの身体は意志とは勝手に立ち上がる。シオエルドの能力、人の行動を操ることができる力によるものだ。無理やり立たされるのは痛みが伴う。わたしはやつを睨みつけた。シオエルドは手を伸ばし、引っ張るような素振りを見せる。
「かかってくるがいい」
わたしの身体はシオエルドに向かっていく。やつの力に抵抗できないまま、斜めに剣を振り下ろされる。無理やり腕を動かし、なんとか長刀で防ぐも耐え切れずに弾かれた。そのとき、やつの操作から離れる。その瞬間にわたしは距離を取る。
やっぱり、あいつの能力は強い。わたしだってあのときから比べれば強くなったはずなんだ。
それでもシオエルドには敵わないのか。一人で立ち向かおうとしたのが間違いだったのか。
なにか使えるカードがあるはずだと思い、ポケットに手を入れる。触れた一枚を出してみる。暗い赤色のカード。まるで血を連想させる色を持つそれは、木崎がくれた一枚。
長持ちはしないと言っていた。どうせ使うのなら、いま使うしかない。わたしはそのカードをかざし、発動する。
どうなるのかわからなかった。
使ってみて、そのカードが持っているカードと融合させて、マナを増大させることができるものだとわかった。そしてマナの流れがわかるようになる。
「ほう。それがお前の本気か」
シオエルドが人差し指をわたしに向けて、くい、と引き寄せる。
やつの手から流れてくるマナが、わたしを捕らえようと弾丸のようなスピードで伸びてくるのが見える。避けようとわたしは左に動く。思った以上のスピードが出た。そういえば、いまのわたしはスピードアップともトリニティとも融合している。速さは折り紙付きだ。
マナに捕まらないように振り切る。その勢いのままシオエルドに接近し、長刀で斬る。やつに攻撃が当たり、わたしはその横を通り過ぎた。
「おのれ!」
振り返ると、今度はシオエルドが睨んでいた。しかし、すぐに平静な態度を取り戻す。
「よかろう」
シオエルドは構える。
持っているカードの力はすべて使える。スピードアップ、トリニティ、重力操作、氷の力。
やってみるか。
わたしは左掌をシオエルドに向ける。そして、冷気を放つ。フェンリーの力だ。ところが、慣れていないせいか上手く操れない。シオエルドの素早い回避も相まって、わたしの攻撃は当たらなかった。
「フェンリーの術か。だが、当たらなければどうということはない」
シオエルドがわたしに左手を向けると、マナが放出される。相変わらずそのスピードは速いが、わたしだって素早さで負けているわけではない。すぐに動く。相手の技だって当たらなければどうということはない。しかし、シオエルドもさすがに二度目は捕らえてくる。わたしの動きは止められてしまった。
シオエルドはゆっくりと歩み寄ってくる。動こうとしても、わたしの意志に身体は応じてくれない。
「すぐに倒れるなよ」
不敵な笑みを浮かべたまま、やつは剣を振り下ろす。動けないまま攻撃を受ける。トリニティのおかげで防御力は上がっているけど、どれくらい持つかわからない。
シオエルドはわたしが動けないことをいいことに、何度も繰り返して剣を振る。成す術もなく斬撃を受けるしかなかった。




