46th Card ぼくらのリターンマッチ 銃の章
絢十編。
階段では戦いにくい。すぐに隠れられてしまうし狙いをつけにくい。場所を変えて戦ったほうがいい。そうと決まれば下準備だ。
オレは階段を駆け上がり、ヘビ頭のモンスターを跳び越える。くるりと回転して着地。振り返り、やつを狙い撃つ。
「狙いは正確じゃな」
杖で防がれたが関係ない。やつはもう一人のオレに気がつかず、まんまと撃たれた。ヘビ頭は二人のオレに、上の階と下の階から挟まれる形となる。
「なに、二人じゃと!」
幻を操るモンスターが呆気にとられる様子は滑稽だ。
「くそっ」
さすがにこの空間で挟み撃ちはまずいと判断したのか、ヘビ頭は廊下へ逃げる。
予定通りだ。
場所を変えるために、わざわざこちらの意志を見せる必要はない。相手に変えたいと思わせれば、その通りになる。オレはすぐに分身を解き、一人でやつを追う。
下の階の廊下に向かうと……あれ、いない。見失った。気配を探ってみたものの、ヘビ頭のジャミングのせいでやはり意味がなかった。
こうなったら、青のカードの効果もすぐに止めたほうがいいな。そう思った瞬間、後ろから近づいてくる足音がした。振り返らずに瞬時に前に転がる。
「避けたか」
ヘビ頭の手には、杖と剣。いま、やつが後ろからオレに攻撃してきたようだ。やっぱり、これは解かないほうがいいのか? でも、解かないとやつに守護者の感覚を狂わされたままだ。面倒な相手だぜ。
ヘビ頭が杖を前に出す。木崎たちが、あれは幻の世界を見せる合図だと言っていた。オレは手で顔を覆いながら前方を撃つ。そのとき、閉じていても周囲が明るくなるのがわかる。
「当てずっぽうとは、無駄なあがきじゃな」
当たらなかったか。
光が止んで正面を見ると、すでにあいつの姿はない。また隠れられた。周囲を見回す。すると、さっきと同じく背後から斬りかかってきた。今度は避けずに、向かってくるやつを撃つ。オレに攻撃が当たるよりも早く、ヘビ頭が光弾を食らって姿を消した。幻か。でも、オレは杖の光を見ていない。どういうことだ。
「甘いな~。杖から出す光だけが、幻を見せるわけではないのじゃ」
姿は見えないやつの声が廊下に響く。声の出所を探りたいが、その前にまたヘビ頭が背後から攻撃してくる。回避して射撃。姿は消える。
「お前さん一人で、いったいいつまで持つかな~?」
オレが倒れるよりも先にお前が負けるよ、と口には出さずに返しておく。
さて、いままででわかったことはいくつかある。光を見なくても幻を見てしまうこと。幻は攻撃されると消えること。そして、幻を一体しか出してこないこと。
最後の項目はまだ確定したわけじゃないから、それを決め付けて作戦を立てることはできない。ただ、オレを倒したいなら二体、三体出してきてもいい、いや、出すべきだろう。にも関わらず一体でしか攻めてこないというのは引っかかる。マナの節約か。あるいは……。
とにかく、このまま戦っていてもやつをさっさと倒せない。木崎たちを先に進ませたのは正解だった。
足音。やつが近づいてくる。今度も避けずに撃つ。幻は消える。その直後、背後から斬られる。
「馬鹿め。ひっかかりおったわ」
オレは斬られた勢いで前に倒れた。
「さあ、お前さんの最後じゃ」
首を捻ってやつを見ると、剣先を向けられている。
これも幻なのか。でも、たしかに背中を斬られた。
残弾は一発。……撃つ。
ヘビ頭に命中すると、やはりその姿は消えた。
起き上がり、壁に背中をつける。やつの幻による攻撃にはしっかりと質量がある。幻だから受けてもいいかという判断はできない。面倒を通り越して厄介な相手だぜ。そうなると打つ手は一つ。
フュージョンを使う。今回選ぶ一枚は、耐久力を上げる力だ。重要なのはそこではない。マナの流れがわかる目になることだ。
フュージョンによって身体が変化するとき、光が波紋のように広がる。そして、視界の変化によって変身が完了する。
銃に弾を装填しつつマナの流れを辿っていくと、壁に背をつけて様子を窺っているヘビ頭の居場所が一目でわかった。そこを撃つ。
「なんじゃと!」
今度こそ本体に命中。
「我輩の場所が見えるとは……。変わったのは姿だけではないようじゃな~」
舌を出し入れするヘビ頭。
もう一度、やつに向けて発砲するがかわされた。さすがに何度も当たってはくれない。
ヘビ頭は剣を逆手に持って接近し、横振りする。オレは回避せずに受けた。が、その程度の攻撃では、いまのオレがダメージを受けることはない。やつの腹に銃口を突きつけて、接射。ヘビ頭が後方へ吹っ飛ぶ。床の上を二、三回転がって止まる。
「やってくれるじゃないか」
膝をつきながら立ち上がろうとしている。もうそろそろ終わりにできそうだ。
「我輩の本気、見せてやろう」
ヘビ頭は杖を床に突き刺す。また幻を見せるつもりか。オレは目を逸らす。しかし、光は辺り一面から放たれた。
気がついたときには、オレはH.O.P.E.の廊下ではない空間に立っていた。紫とも赤とも言えない、絵の具が混じり合って滲んだような空間にいる。雰囲気が気持ち悪い。
「我輩の幻想空間へようこそ」
正面に立っているヘビ頭が両手を広げて言った。どうやらこの空間はマナで覆われているようだ。それも禍々しいマナ。守護者には作れそうにない。
「ここではお前さんの記憶から作られた幻が敵となって襲う」
ヘビ頭の前にマナが流れていき、それが二つ人の形を作る。一つは炎のモンスター、ファジニとなり、もう一つは木崎の姿に変わる。ファジニと木崎は杖と刀をそれぞれ握り、オレに向かって攻めてきた。




