45th Card ぼくらのリターンマッチ 槍の章
最終決戦始まります。
雅志編。
ぼくは槍を構えたままネオを見据えている。ネオは剣と盾こそ持ってはいるが、構えは取っていない。悠然と立っている。
まるで西部劇で見るガンマン同士の決闘シーンのように、お互い一歩も動かない。いつ相手が動くのか、こちらが動くべきタイミングはいつか、探り合っている。
月とオーロラが照らすなか、空気の冷たさを感じる。辺りはしん、と静まり返っている。サンタクロースがソリを滑らせる音も、鈴の音も聞こえない。まだ、みんなも皇帝のところには辿り着いていなかった。
どこかで金属のようなものが(多分看板が)風に吹かれて飛んでいく音がした。
同時に動く。
槍を突き出す。ネオは盾で受け流し、片刃の剣で斬りかかってくる。それを槍の柄で捌いた。距離を開ける。
圧倒的に向こうが速いわけでも、こっちが速いわけでもない。接近戦だと互角の勝負。ならば先手必勝。こっちから本気で行かせてもらおう。一枚ずつカードを使えば、その瞬間に解放の力を使われて厄介なことになりかねない。それに、早く剣一たちにも追いつかないといけない。
そう考えると、マルチプルを使うしか選択肢はないね。
光の波が周囲に広がる。ネオは盾で衝撃を受け止めていた。波が収まるとぼくの変わった姿を見て、
「なんだ、その姿は」
と言う。お決まりの一言だ。そんな相手には、笑顔と一緒にお決まりの一言で返すことにしている。
「君が負ける相手の姿さ!」
鎧の力、飛行の力、パワーアップ、そして、地の力。いまのぼくはこれらすべてを同時に扱える。アーザング、早速君の力を貸してもらうよ。
槍を地面に突き刺す。すると突き刺した地面から衝撃が伝わり、ネオの足場まで迫る。地面を揺らすこの攻撃は盾では防げない。さあ、どう凌ぐ?
ネオは盾を前に出す。
え? まさか、盾で地震を防ぐつもりなの?
そのまさかだった。地面の揺れはネオのところに行く前に止まってしまう。
その直前にぼくははっきりと目にした。彼の身体から盾を通して、地面に向かってマナが流れていくのを。
「僕の力は『解放』という概念を行える力。地面が揺れているのなら、地面を揺れから解放してやるまでのこと」
ああ、そうなんだね。能力自体は知っていたけれども、こんな使い方をしてくるとは。ものは捉えようということかな。
でもぼくは知ってしまったよ、君の力の弱点を。それは膨大な量のマナを消費するということだ。現にいまの防御で、結構な量のマナを消費してしまった。何度も使える技じゃないのは明々白々。
……そうか、わかったぞ。だから皇帝たちはネオの力を使って、自分たちにまとわりつく柵から解放されようとはしなかったんだ。だから新たな力に、自分たちの未来をすがることにしたんだ。
彼らがどういう事情で神の力を使おうとしているか、という話はさておいて。こっちが地震攻撃を連発すれば、向こうからマナを切らして負けてくれるというのはわかった。地震を止めたところまでは良かったけど、詰めが甘かったね。まあ、向こうが防御に技を使ってくれれば、の話だけど。
もう一度、槍を地面に向ける。
「僕をみくびるな!」
ネオの身体から光が溢れ出る。辺り一面に光が飛び出した。まるでさっきのぼくのようだ。どうやら自分の潜在能力を解放したらしい。トカゲが恐竜に変身したみたいに、とてつもなく力が跳ね上がっている。
ネオを包んでいた包帯が剥がれ落ち、真の姿が露わになった。緑の蛍光色の身体を持つ人型のモンスター。髪は黒く、目は赤く光り、口からは牙が剥き出ている。これこそが、ネオの真の姿だ。
やっぱりね、と苦笑い。心のどこかで、そうなる予感はしていたよ。
盾を前に出し、剣を後ろに構えた状態で迫ってくる。枷が外れたみたいにスピードも桁違いに上がっている。剣撃を槍で受けるも、盾で突き飛ばされた。なんとか踏み止まっても向こうの攻撃の手が止まるわけではなかった。防御に使う盾を攻撃に使ってくるなんて。こっちもなりふりかまっていられない。鎧を装着する。
斬りつけ攻撃を鎧で受け、槍の柄部分で顔面を殴る。
おかしい。たしかに手応えはあったのに、彼はびくともせず剣を振ってくる。耐久力まで上がったのか。
「僕をみくびるなと言ったはずだ」
斬り上げを食らった。鎧の上から受けたというのに、ぼくの身体は空中を舞う。この状況を利用して飛行の力を使い、そのまま滞空することにした。
まずいな、ここまで豹変するなんて。いまのうちに体勢を立て直さなくちゃ。




