40th Card 孤軍奮闘 長刀の章
vs エレメンタルシリーズ!
紫苑編です。
雪原の吹雪は見えるものすべてをかき消す勢いを見せていた。足元は雪で埋もれ、思うように歩けない。まるでわたしが進むことを拒んでいるかのようだ。
特に考えもなしに北を選んで旅をしてきたが、進むにつれて白い景色が増えていった。いま歩いているこの地が一番真っ白なことは言うまでもない。
上着を何枚か着て防寒しているので寒さを凌げてはいるが、それに比例して動きは悪くなる。
モンスターとの戦闘は市街地が多かった。住民が除雪作業をしてくれていたおかげで困ることはそんなになかった。それにモンスター自身、冬の滑る地面に慣れているわけでもなかった。だが、いまこのような雪原で戦闘をおこなうとなると困るものがある。おかげで初めて、地形の重要性を理解した。
わたしの目の前に現れたのは、氷のモンスター。見た目はサーベルタイガーに似ている。金澤くんたちから聞いていた話と照らし合わせると、名前はフェンリー。
「セト・シオン。私の相手がお前で嬉しいぞ」
「嬉しい? なに言ってんの、あんたはここでわたしに倒されるんだよ」
本気で足を動かさなければ上手く動けない。わたしは全力でフェンリーに向かう。普段の倍以上体力を使う戦いになりそうだ。
長刀を振り下ろしたところ、フェンリーは氷の剣で止めていた。
「どうした。シオエルド様に仕えていたときのお前はもっと強かった」
シオエルド……女帝か!
「そんな屈辱、二度と味わうか!」
長刀を支えにしてフェンリーの腹に蹴りを入れる。やつは後方に浮かぶ。すぐに重力操作の力を使い、フェンリーの周囲の重力を大きくする。飛んでいたフェンリーはすぐに雪の上に落ち、沈んでいく。
跳躍し、上空からフェンリーに迫る。落下のとき、赤のカードで衝撃波を放つ。フェンリーとその周囲に影響を与えた。積もっていた雪を吹き飛ばし、やつの周りには白くない地面が見える。
あいつの動きは重力で封じている。このままわたしが攻撃を続ければ勝てる。着地と同時に長刀で斬りつけた、何度も繰り返して。
わたしの感情の高ぶりが黒のカードを呼び寄せた。すぐに発動する。
以前と違って意識は消えない。長刀が光を帯びる。腕と得物に力がみなぎるのを感じる。そのせいか酷く重い。わたしは思いっきり振り下ろした。
「それがお前の必殺技か」
食らっていない。
長刀をよけると、砕け散った氷の盾がフェンリーの身体の上にある。防がれていたのか。
くそ、視界が悪いせいで見落としていた。
「なかなか強力だが、我が盾を砕くのは不可能」
フェンリーはそう言うと、わたしに冷気をぶつけてきた。咄嗟に長刀を盾にする。あまりの冷たさに、やつから逃げるように距離を取ってしまう。そのせいで、重力の縛りからの解放を許すこととなった。重力操作はわたしが攻撃することを考えて、フェンリーにのみかけていたがそれを向こうは攻撃の手として利用してくるとは。
フェンリーは起き上がり、雪上を滑るように移動する。斬撃がわたしを襲う。長刀でなんとか押さえるが速さは向こうのほうが上だ。いや、違う。この環境下での戦いに向こうのほうが慣れているのだ。
わたしはフェンリーとの間合いを取るために下がる。やつも攻撃の手をやめた。
「先ほどの言葉は撤回しよう。いまのお前のほうが断然強い。わたしも本気を出す価値があるというものじゃないか」
こいつ、わたしを本気にさせるために煽ったのか。またこんなやつらに利用されるとは、つくづくわたしも馬鹿だな。
「わたしも、あんたを全力でぶっ飛ばすよ」
吐き捨てるように告げ、わたしは長刀で攻め込んだ。




