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STRUGGLE  作者: 春巻き系男子
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3rd Card 射手

二話の直後の話です。


一話あたりの分量が長いので今後は、二部構成で行こうと思います。

 なにか妙な感覚がした。これはこの古代人がモンスターに襲われていることを察知したあの感じと似ている。いま、誰かがモンスターに狙われている。おれにはそれがわかる。わかってしまったからにはじっとしてなどいられなかった。それからのおれの行動は実に早いものだ。まるでどこへ向かえばよいのかわかっているかのように、おれの足は自然と、そして速く動いていた。この速さ、明らかに世界記録を超えている。これらの特別ななにかは、すべて守護者の力のおかげだろうか。だとしたら、凄い。凄すぎる。

 また、エルーの足の速さも驚くべきものだった。守護者の力で肉体強化されたと思われるおれの走りに、なんとかではあるが遅れることなくついてきている。古代人は自動車を使わなかったぶん、健脚なのだろうか。現代人が見習わなければならない。

 辿り着いた場所では、モンスターがまさに人を襲おうとしていた。頭は硬そうな兜のようなもので覆われていて、その奥には黄色く光る目がある。身体は人間のそれに近い。しかし、このモンスターも先ほどの逃がしてしまったやつとは別個体だった。それならそれで、こいつを倒すまでだ。

「あのモンスターは二体に分身します。気をつけてください」

「了解」

 モンスターに横から体当たりして人への危害を防ぐ。間に合った。

「逃げろ」

 とにかく人を逃がす。モンスターがこちらを見てくる。標的はすっかりおれとなってしまった。実に単純でとても助かる。

 よし、ならやりますか。刀よ、来い。

 おれの右手に守護者の刀が握られる。それに応じるかのように、モンスターも武器をその手に掴む。やつの武器は剣だ。刀と剣の戦いか。さっきも同じ戦闘だったな。

 モンスターは剣を振り下ろしてくる。その攻撃をかわし、距離を置いた。

 やつの能力は分身。発動される前にカードへ戻さなければならない。そのためには、黒いカードを使う必要があった。あれは必殺技の発動条件なのだ。しかし、すぐに出てはくれない。発動条件を導く条件をおれはまだ知らなかった。なんということだ。

 考えていたらモンスターがその能力を発動してきた。二体に増えたモンスターは遠慮なんてなしで攻撃してくる。防ぐよりも避けることに意識を置いた。ふと考えが頭に思い浮かんだ。

 もしかすると、黒のカードは使えなくても、倒したモンスターのカードは使えるのではないだろうか。

「おい、さっき還元したカード、あれ貸してくれ!」

 攻撃をかわしながら声を大にして言った。

「で、でも! この状況で手渡すのは難しいのでは……」

「投げていいから!」

 こんな状況で手渡しなんてできるかい。そして漫才なんてもっとできるかい。

「わかりました。えい!」

 彼女が投げたカードをおれは受け取る。青のカード、これを使ってみるか。人を傷つけるためにその力を使うわけではないのだから、モンスターは生まれない……はず。理論的には間違っていない。それでも生まれたなら、生まれたときにまた考えることにしよう。

 このカードの能力は生物以外のものをコピーすること。ならコピーの対象は、おれの刀だ。発動。一瞬、力が抜けたような気がした。一体なんだろう。よくわからないが、青のカードは光に包まれ、刀へと変化する。これで二刀流だ。

「けんいちさん、そのカードで敵の能力を模写することもできるんですよ!」

「はあ? それを先に言ってよ!」

「すみません」

 しかし過ぎてしまったことは仕方がないので、おれは二刀流でどうにか戦うことにする。二体のモンスターからの同時攻撃を、こちらは二本の刀で防いで押し返した。一体はすぐに反撃してくるが、もう一体は様子をうかがっているようだ。一本で敵の反撃を防ぎ、もう一本でこちらが攻撃する。一体は倒れた。しかしその直後にもう一体からの、剣による攻撃でおれの右手を狙われてしまい、コピーではない、本物の刀を落とすこととなる。剣で攻撃されたのにも関わらず、手が切断されなかったことは不幸中の幸いだが、痛みは尋常ではなかった。この様子だとしばらくの間は使えない。

 モンスターから離れてから左手にあるコピーの刀を捨てた。本物の刀が手元に戻ってくることを念じ、再び手に刀が握られる。これはあくまで気持ちの問題だから実際のところはわからないが、コピーした刀よりも本物の刀のほうが強いと思えたのだ。

 だからといって、二体の敵による同時攻撃を左手に持った刀だけで防げるはずもなく、攻撃は見事におれの身体へとヒットした。地面に叩き付けられた衝撃のせいで、前も後ろも関係なく痛みが走る。

 起き上がらないとまずいのは重々承知。しかし痛みのせいで阻まれる。このままでは殺されてしまう。おれには守護者の役割など向いていなかったということなのか。おれにはできないことなのだろうか。それともモンスターが強過ぎただけなのか。だが、古代の人々はやつらを封印することに成功した。くそ、なんて守護者だ。人間を守れずに死ぬなんて。

 おれは立ち上がった。痛みが消えたわけではないが、それでも立ち上がるしかなかった。刀を構えたまま、古代人に尋ねる。

「モンスターはあと何体いる?」

「……二十はいます」

 二十も、か。しかもそれより多い可能性があるときてる。なおさら倒れている場合ではなかった。

 二体同時に攻めてくるからこの状況はよくないのだ。ならば一体ずつ攻めてくる状況を作ればいい。そういえばそんなことを、以前に教わった気がする。誰が教えてくれたのかも覚えている。いまはどうでもいいことだけど。

 おれはひとまず相手に背中を向けた。古代人のいない方向へ逃げる。モンスターは迷うことなく追って来た。目指すは狭い路地だ。そこへ逃げ込めば、敵が二体同時に入ることはできない。地元という特性もあり、すぐにちょうどいい路地を見つけることができた。

 入って振り返ると、やはりやつらは縦一列で追ってきていた。狙い通り。まずは先頭にいるやつに、刀を振り下ろす。いきなりの攻撃でそいつは足を止めるが、その後ろのやつがぶつかってくる。バランスを崩した先頭のモンスターはおれの攻撃を食らってくれた。手応えあり。透かさずもう一体のモンスターに、跳んで攻撃。二体とも倒れた。

 路地から出ると、エルーが来ていた。

「怪我は大丈夫ですか?」

「そんなわけあるか。凄く痛いんだぞ」

 強がるのが男だろうか。そんな決まりがあったとしても、知ったことではないが。

「モンスターの能力を知ってるなら、対抗策とかはないのか?」

「すみません、すぐには出てきませんでした」

 ううむ、悩ましい。次に期待しておこうか。

 モンスターが路地から二体とも出てくる。古代人を下がらせる。もう路地作戦は使えない。早く来い、黒のカード。しかし、それでもカードは現れなかった。

 そのとき、モンスターに光の弾が直撃し、二体とも倒れた。弾が来たのはおれの後ろ側。そちらを見ると、立っていたのは同い年の男。おれに一対多数の戦い方を教えた張本人。

 その名は、金澤絢十。初対面の人間からは「けんと」ではなく、「あやと」と読まれてしまうのがお決まりだった。

 絢十は、容姿端麗、頭脳明晰、中学や高校での定番スポーツならほぼ万能と、まるで人生の勝ち組であるかのような人間だ。やつとは中学よりの、こう言ってはなんだが、親友である。中学を卒業してからはそれぞれが違う進路に行き、最近ではあまり連絡を取っていなかった。あいつはたしか、東高校に通っているはずだ。

 そんなあいつの手には金色の銃が握られている。あいつを見た瞬間から感じてはいたのだがそれを目の当たりにしていっそう現実味を増した。彼もおれと同く、守護者の得物に選ばれた人間なのだ。

 役割は、おれだけのものではなかった。

「木崎、大丈夫か」

 絢十が駆け寄ってくる。おれは右手に目を向けて答えた。

「ちょっと大丈夫じゃない」

「大丈夫そうだな。こいつらはなんなんだよ」

「古代の封印から解放されたモンスター、だとさ」

 さて、彼は突然こんなことを言われて信じるのだろうか。まあ、目の当たりにしているから疑うこともないと思うが。

「とりあえず倒せばいいんだな」

 銃を構えた。まさかもう信じたのか。少しくらい疑わないのか。と思ったが違った。モンスターがこちらに向かってきていたのだ。すぐさま銃で二体を撃つ。すると彼の手に黒のカードが現れた。カードが出た直後は戸惑いを感じているみたいだったが、なにかを察したのだろう。迫ってくるモンスターにそれをかざした。

 銃口から、映画やアニメなどで見られるビーム、あるいは光線が放たれる。雅志に倣って名前をつけたほうがいいだろうか。敵にとっては最後の一発ということで【ラストシューティング】と名づけよう。

モンスターは分身共々それを食らうこととなった。分身は消滅し、モンスターは青く発光し始めた。還元の合図だ。数秒でモンスターは青のカードとなった。

「おい、なにがあった」

 黒のカードを使うと意識が飛ぶのは絢十も同じだった。

「お前がモンスターを倒したんだよ」

「じゃあ、もうこれで一件落着ってこと?」

「まだ別のモンスターがいるから、そいつらをカードに戻すまでおれたちは戦わなくちゃいけない」

「役割っていうのは本当なんだな」

 絢十はカードのところまで歩いていき、それを拾い上げる。絢十も謎の声を聞いたようだ。

「これはどうすればいい?」

 尋ねてられたが、おれには答えられない。仕方がないので古代人へ目を向ける。

「封印は最後にまとめて行います。本来なら私が管理しますが、持っていても構いません。ただくれぐれも悪用しないでくださいね」

「なら絢十が持ってなよ。それ、戦いでも使えるみたいだから」

「おう」

 懐にカードをしまい込む。

「なあ、さっきのカード、おれも持っていていいか?」

 いちいち戦闘中に古代人の手を借りるのはよくないだろう。古代人は、いつの間にか拾ってくれていた青のカードをおれに手渡してくれた。

「で、あの子誰」

 絢十が小声で尋ねてきた。めざといやつだ。

「古代人だよ。モンスター封印の役割を担う」

「へえ、すげえ」

「あの、お取り込み中のところ申し訳ないのですが、私は、けんいちさんのお家に泊まらせてもらうということでよろしいんでしょうか?」

 この女に対して、おれは侮れないやつだという印象を持った。そうかと思えば、ちょっと物足りないところもあり、よくわからないやつというのが現在の正直な感想だ。そしていまのこの発言、絢十にとっては充分すぎる笑い話だ。その質問、いまでなければいけないのか?

 おれは拒否しない、本来ならば。やつには頼れる親戚も、知り合いも、友人も、なにもかもいないのだから、泊めてやるのが世の情けというものだ。しかしこの状況で、しかも金澤絢十の前で、それを言うのは完全に失敗だろう。なぜいまその質問をしたのだ、古代人よ。

「頑張れよ」

 なに言ってやがる、ふざけんな。

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