38th Card 孤軍奮闘 槍の章
vs エレメンタルシリーズ!
雅志編です。
地震が頻繁に起きている地域を訪れて、まさか念願のアーザングとの戦いができるとは思ってもみなかった。モンスター討伐の旅に出てから早三ヶ月が過ぎた。三体のモンスターを倒した。ぼくの直感では、この地域はアーザングで最後だ。最後の相手がアーザングという展開、実にぼく好みで胸が高鳴る。この前戦ったときは勝てなかったけれども、いまは違う。ぼくは前よりも強くなった。それにアーザングとの戦いを、何度もシミュレーションをしてきた。
絶対に負けない。決着をつけてやる。
大きくてカラフルなゴンドラの観覧車が見下ろす海岸沿いの町。
ハンマーを振り下ろそうとしていたアーザングが動きを止めて振り返り、ぼくを一瞥する。
「フクハラ・マサシ、以前とは顔つきが変わったな」
ここは褒められたと捉えておこう。
「かもね!」
ぼくはにこやかに槍を構えた。潮風が髪を撫でていく。こんな戦いがなければ、良い町だ。今度里花と来よう。
「だとしても、ここでお前の旅は終わりだ。逃がしはしない」
それはこっちの台詞だよ。
ハンマーが振り下ろされた。衝撃が地面に伝わり、揺れがこちらに迫ってくる。
アーザングは地のモンスター。地面を盛り上げたり、揺らしたりするのはお手の物だ。地面を自由に操ることができるとなると、地上戦はこちらの分が悪い。ぼくは青のカードを使って飛行することにした。
地上から離れていれば影響を受けない。地面タイプの攻撃が飛行タイプには届かないというのはゲームで有名だけど、それだけで済む話ではないみたいだね。
空中を移動しながらアーザングに槍を突き出す。そこは上級モンスター、ひらりと身を翻した。ごつごつした見た目とは裏腹に、随分と柔らかい動きをする。
……感心している場合じゃない。伸ばした腕を引っ込めようとしたが、それよりも先に槍の先端を掴まれた。そのままアーザングに引っ張られ、拳の突きをもらう。吹っ飛んだぼくだけど、飛行の力で体勢を立て直す。
痛いなあ、口のなかで血の味がする。殴られた勢いで回転するなんて初めてだよ。油断したぼくが悪いのだけど。
「その程度か」
「ははは……。かもね」
渇いた笑いしか出ない。
どうしようかな……。あれをやってみるか。できればもうちょっと後で出したかった。でも、出し惜しみをして勝てる相手じゃない。
デザートイエローのカードを出す。北条さんが用意してくれたエナジーカードの一枚だ。名前はマルチプル。効果は、手持ちのすべてのカードの能力を同時に引き出せるようになり、使用者のマナを増幅させるというもの。要するに強化カードというわけだ。
使ったことはないけれど、いまを逃していつ使う?
「でも、ここからは本領発揮といくよ!」
マルチプル、発動。
光の波が生じる。その衝撃に対してアーザングの踏ん張る姿が見えた。
身体の底から力が溢れ出す感覚がする。そして、マナの流れが見える世界に変わる。ぼくの手を見てみればマナが凄まじく増大したことがわかった。ついでに見た目も変わったみたいだ。鏡がないから全身はわからないけど、手足や胴体は黒くなり、黄色いラインが走っている。
「なんだ、その姿は」
「君を倒す姿さ」
飛行の力、武器強化、パワーアップの三枚を持っている。全部同時に使えるなら、どれから使おうか考える必要はない。再び空中を移動してアーザングに近づく。
アーザングはハンマーを地面に振り下ろす。飛行している相手に地震攻撃をするつもりなのかな、と思ったけどそうではなかった。地面が壁のように盛り上がる。ぼくの進行を妨げようという魂胆だ。
でも、いまのぼくと武器の攻撃力は上がっている。壁なんて関係ない。
ぼくが立ちはだかる土の壁を壊したことで姿を見せたアーザング。彼に槍で斬りつけた。回避できずに攻撃を受けて後退りする。
やった、初めて一撃を与えた!
心の底から湧き上がる高揚感。槍を握る右手が僅かに震えていた。落ち着け、まだ倒したわけじゃない。
それでも、言わずにはいえられなかった。
「どうだ!」
「たしかに腕を上げたようだ。よろしい、ならばこちらも本領発揮といこうか」
ああ……。
やっぱり、いままで本気を出していなかったのか。これでようやく、お互い本気でぶつかり合える対等な関係になれたというわけだ。
上級モンスターと対等な関係に立てたということで、ぼくは思う。剣一は一人目の守護者ということもあって戦闘経験が多い。金澤くんは初めて上級モンスターを倒した守護者だ。瀬戸さんはモンスターに対する感情を力に変えることができる。でも、ぼくにはなにがあるだろう? ぼくは多分、四人の守護者のなかで一番弱い。
でも、ぼくは嬉しく思うよ。
ぼくが強くなったことを。ぼくの強さを認めてくれたことを。
アーザングは得物であるはずのハンマーを投げ捨てる。代わりに、両手にボクシングクローブほどの大きさの手甲をつけた。ハンマーよりも小ぶりなそれを見て、ぼくの頭には疑問符が浮かぶ。
随分と迫力不足な武器だけど、それで本当に本気?




