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STRUGGLE  作者: 春巻き系男子
34/54

33rd Card 銃と槍と長刀

剣一以外の視点での話です。

 ああ、モンスターがここに来るな、という気はしていた。病室でゆっくり休んでいる身分でも、さすがに守護者の力は衰えていない。来るんだろうなと思ってはいたものの、それでも本当にH.O.P.E.に来るとは思ってなかったが、サイレンが鳴ったうえに、館内放送で避難指示も出されてしまっては認めざるを得ない。

 屋上のほうは木崎が行ったようだからいいとして、H.O.P.E.へ向かってくる他のモンスターはどうしたものか。オレが戦うのもありだが、木崎から分けてもらったばかりで充分なマナがあるとは言えない。

 ここは無理に戦うより逃げたほうが得策かな。向かってくるやつらのなかには上級モンスターがいるみたいだし。足手まといになるのは好きじゃない。

 でも、この本部がなくなるのは決して小さな損失とは言えない。それならやっぱりモンスターを倒してしまうのがいいか……。

 気になるのは、モンスターがどうしてここに攻めてきたのかということ。まあ、オレたちがモンスターにとっての敵だからという理由が妥当かもしれない。じゃあ、モンスターはどうやってここを知ったのか、という話に繋がるけど。

 病室で悩んでいるのも時間の無駄だ。実際にモンスターはここに来る。ひとまず、部屋から出て外の様子をうかがうことにした。

 ドアを開ければ、逃げ惑う人の群れがあった。この瞬間にモンスターに攻め入られたら、戦いづらいだろうな。さっさと逃げてもらわないと。

「絢十くん!」

 人混みのなかから呼ばれた。人々の流れを逆走してくる男が一名いる。普久原という、木崎の高校の友人。

 あんまり、こいつには馴れない。オレは人嫌いというわけではないが好きになれなかった。多分、どこか気取った態度が気に入らないんだと思う。

 木崎はオレの態度の違いに気づいていそうだけど、こいつは気づいてなさそう。それもまた好きになれない理由の一つかもしれない。

「モンスターがここに近づいてきてるんだ。絢十くんは職員の人たちを安全な場所に逃がしてもらえるかい?」

「……あんたはどうするんだ」

「ぼくは、モンスターがここに来ないように食い止めるよ」

 一体ならともかく、複数を相手にするのに普久原一人じゃ無理だ。こいつの実戦での成績を考えればはっきりわかる。

 普久原を止めてやろうか迷ったとき、北条さんが人混みをかきわけてやってきた。

「北条さん、どうしたんですか?」

 普久原の話を遮るのにちょうどいいタイミングで来てくれたと思い、北条さんに声をかけた。

「先ほど、木崎くんにも渡したのですが、お二人にも切り札を渡しておこうと思いまして」

 そう言って北条さんが出したのは二枚のカードだった。青のカードと黄色のカード。オレは青のカードを受け取り、普久原は黄色のカードを受け取る。

 この力は……。

 オレが持っているカードのどれか一枚のモンスターと融合し、その能力と姿を手に入れるというもの。

「金澤くんのカードは『フュージョン』で、普久原くんのカードは『マルチプル』です。効果は……」

「もうわかりました! 大丈夫ですから、北条さんも早く逃げてください!」

 普久原が北条さんの言葉を遮った。たしかに、モンスターが近づいてきているのに、悠長な時間はない。そこは同意する。

「そうですね。すみません。お二人とも、気をつけてください」

「はい」

「ありがとうございます!」

 北条さんはオレたちに頭を下げると、人混みの後ろについていった。

 それで、だ。

 オレが普久原を止めてやる必要はない。モンスターと戦いたいと言うのならやらせればいい。それに、こいつがモンスターと戦っていたり、オレが人を逃がしたりしている間に、オレのマナが少しでも増やせるのなら得な話だ。

「じゃあ、モンスターのほう、任せた」

「うん。絢十くん、気をつけてね」

 お前が一番気をつけなきゃな。


 モンスターが来る方向はわかりやすい。正面から三体、反対側から一体。

 職員を逃がすのは、必然的に敵の数が少ない裏口となる。一体くらいなら、百歩譲って、いまのオレでも倒せるまではいかなくても、人を逃がすために食い止めるくらいならできる。よっぽど相性が悪くなければ倒せるのは間違いない。

 北条さんの一声で、裏口から逃げようとする集団の先頭を歩くことになっていたオレは、前方に注意を向けながら職員を誘導する。正面入り口のほうはまだ戦闘に入っていないようだ。職員が逃げる余裕は充分ある。

 出口に近づくにつれて敵の気配もはっきりと伝わってきた。

 裏口から出たすぐ近くにそいつはいた。茶色の体、人間に似た胴体だが目は白く、短剣を持ったモンスターだ。見てわかる。上級モンスターじゃない。

 だが、目で敵の姿を確認できたとき、オレは自分の考えが甘かったことに気づく。モンスターの隣には瀬戸もいた。

 ここにはいない上級モンスターに操られている瀬戸は、逃げようとしている職員を狙って長刀を振ってくる。オレはその人を庇い、背中を斬られた。覚悟していたことでも、痛いものは痛い。顔には出さないけど。

「いまのうちに逃げて!」

 オレの言葉を聞いた職員たちが走って建物から離れていく。その後を、茶色のモンスターが追おうとしたので、そいつの足を撃ってやった。動きが止まったものの、そこまで効いているようには見えない。防御力の高い敵なら以前戦った記憶がある。あのときと同じ手順でやれば倒せるな。

 モンスターは短剣をオレに向けてきた。オレに狙いを定めてくれたことはいいけど、二対一はちょっとなぁ……。しかも、瀬戸を攻撃するのはかなり抵抗があるぞ。仲間だし、なにより女の子だし。

「瀬戸さん、目を覚ませよ。オレたち、仲間でしょ」

 一応、言ってはみたが、オレの声は届いていないようだ。長刀で攻撃された。続けて、モンスターも短剣で攻撃してくる。

 こいつ、うざったいな。先に始末しよう。

 オレは青のカードを使って武器を強化した。雑魚相手に黒のカードを使うまでもない。

 光弾を三発まとめて同じ箇所に撃ち込んだ。モンスターは身体を青く光らせて、カードへと戻った。

 青のカードを拾う間も与えずに、瀬戸が攻撃してくる。銃で長刀を受け止めて、それを払った。反撃できる瞬間はあったが、距離を取られてしまう。

 問題はこっちだ。雑魚モンスターなんかはどうでもいい。

 ひとまず、オレは攻撃を避け続けるしかない。隙を見つけたら彼女を気絶でもさせよう。



 三体のモンスターが、H.O.P.E.本部の正面入り口から出て少し離れたところにいるぼくの目の前に並んでいる。ライオン型のモンスター、トラ型のモンスター、ゴリラ型のモンスター。この三体のモンスターは、上級モンスターの雰囲気を漂わせていた。

 ライオン型のモンスターは、頭部に真っ直ぐ伸びた朱色のたてがみが生えているのが目に映りやすい。どうでもいいけど、南アフリカのトランスバールという地方に生息しているライオンはたてがみが発達していることで知られている、という話を思い出した。青と薄黄色でできた模様がある身体で、金色の鎧を身に纏っている。武器は両刃の剣なのだけれど、ちょっと違う。刀身部分が横に幅広く、外側に向いた刃が二つあり、それを挟む形で中央部分に黄色く光る刃がある。あの剣にはなにか仕掛けがあるに違いない。

 ゴリラ型のモンスターは、真っ黒な全身で、上半身を包み込む茶色の鎧を装着していた。ローランドゴリラかマウンテンゴリラのどちらに似ているか考えると、マウンテンゴリラが一番近いんじゃないかな。手に持っているのはハンマー。見たところ、大型ハンマーの部類だろうけど、頭部(打つところ)がやけに大きいのに対して柄が短い。もう少し長いほうが扱いやすそうなのに。

 トラ型のモンスターは、トラと言っておきながらも見た目は、イラストでしか見たことがないけど絶滅したサーベルタイガーの一種、スミロドンに近いかもしれない。白に近いグレーの身体に、口を閉じても隠せない長大な犬歯が特徴的なモンスターだ。青白く輝いている鎧を着ていて、半透明なサーベル状の武器を持っている。半透明だから片刃か両刃かはわからない。それよりも気になるのは刀身から白い煙が出ているのが見えることだ。もしかして、湯気か冷気かな?

「悪いけど、ここから先には行かせないよ」

 格好つけて槍を構えたのはいいけど、ぼく一人で彼らを相手にしようとするのは無茶かもしれないと思えてきた。かもしれない、じゃないよね……。

「お前は、フクハラ・マサシだな」

 ゴリラ型のモンスターが言った。確認のつもりではないみたい。

 へえ、ぼくの名前、知っているのか。

「お前一人で私たちと戦うって気なのかい?」

 今度はサーベルタイガー型のモンスターが言った。話し方は女性らしいけど、声は男性のものとも女性のものとも聞き取れた。どっちかわかるまでは、彼とも彼女とも言えない。

「面白くない冗談だなー。こんなの無視しようよ」

 抑揚のない調子で言ったのはライオン型のモンスター。

「待て、ガミオ。こいつが『解放の力』を持っている可能性もある。建物の制圧よりも、フクハラ・マサシを倒してから仲間を取り戻すことが先決だ」

 そうか、モンスターたちは「解放の力」を求めてH.O.P.E.までやってきたのか! なおさらぼくがここで彼らを食い止めなくちゃいけないわけだ。

「えー。じゃあさー、ファジニを倒したのってこいつ?」

「いや、フクハラ・マサシもその場にはいたようだが、彼ではない。カナザワ・ケントという射手だ。彼を倒した先にいる」

 ライオン型のモンスター、ガミオの問いに、ゴリラ型モンスターが答えた。あの戦い、もしかして遠くで見られていたのかもしれない。

「なら、さっさとこいつを倒して、カナザワ・ケントも倒しに行こうじゃないか、アーザングよ」

「もちろんだ、フェンリー」

 ゴリラ型のモンスターの名前はアーザングで、サーベルタイガー型のモンスターの名前はフェンリーということがわかった。

 でも、そんなことはどうでもいい。

 ぼく、サーベルタイガー型のモンスターに思いっきりなめられたことを言われたよね。否定はしないけど、なんだか悔しいな。

 ぼくは無言で槍を構えた。同時に、向こうも各々の武器を構える。一対三で戦うのは厳しいけど、せめて絢十くんが逃げる時間稼ぎになれればいい。


 背後から窓ガラスが盛大に割れる音が聞こえた。上級モンスターが攻撃してきたのだと思ったけれど、向こうは音がした方向を見ている。あれ、自分らが割ったわけではないの?

 ぼくも、後ろを見てみた。H.O.P.E.の建物からなにかが落ちてくるのが目に入る。

「残念だったな、モンスター。俺たちもいる!」

 落ちたわけではなく、降りてきた、アーマード・ソルジャーの三人が。

「相川さん! レイモンドさんに沖田さんまで!」

「俺も自らモンスターと戦うことを決意した身だ。逃げるわけにはいかない」

「手出し、させてもらいますよ」

 相川さんと沖田さんの言葉の後に、レイモンドさんは黙ってうなずくだけだった。

 ぼくは、一人じゃない。

 前に向き直る。

「お願いします!」

 ガミオが前に出てくる。

「はっ。雑魚がいくら増えようと、俺たちを倒すなんて無理に決まってんだろー!」

 ガミオが身体に稲妻を帯びて、高速でこちらに向かって移動してくる。ぼくや、相川さんとレイモンドさんはその攻撃を避けるしかしなかったけれど、沖田さんは避けずにガミオを捕まえた。それでもなお、ガミオの動きは止まらない。

「ガミオの相手は僕がします。残りは任せました!」

 沖田さんはアーマーのフライングユニットを起動させ、ガミオと共に空中に舞う。そして、H.O.P.E.の三階に突っ込んだ。

「沖田さん!」

 相手は上級モンスター。一般人の沖田さんが一人で大丈夫なのか?

「あいつは大丈夫だ。俺たちはこいつらを倒そう」

 沖田さんは自分でガミオの相手をすると言った。なら、それを信じるべきだろう。ぼくたちが心配しては、彼の思いを踏みにじることになる。

「はい!」

 ぼくはアーザングに向かう。他の二人は、フェンリーに向かっていった。

 アーザングはハンマーを出し、それを振って攻撃してくる。ぼくは攻撃を防ぐのをやめて、避けることにした。

 ハンマーと槍じゃ、相性が悪い。向こうの攻撃を直接防ぐのは厳しいものがある。でも、それは頭部を押さえるときに言えることであって、柄の部分なら負けることはないと思う。その点に気をつければ、勝機を掴めるはずだ。

 アーザングが左手を地面に向け、次に空に向かって上げる。すると、ぼくの立っている地面が揺れ、さらにその場所がまるで大木が突然生えてくかのように盛り上がった。バランスを崩したぼくはそのまま落下することになったけれど、青のカードを使うことで空中に浮かぶ。落ちたところをハンマーで攻撃しようと待ち構えていたようだけど甘かったね。でも、甘かったのはぼくも同じだ。

 相手はモンスター。武器は目に見えるものだけではない。彼には能力がある。

「地を操る力、それが君の能力だ」

「ほう……その通りだ」

 まあ、ここで隠したところで意味はないよね、わかりやすい力だし。それにしても、彼と戦うにはどう立ち回ればいいのかな。



 わたしはいつも同じ夢を繰り返し見る。

 いや、これが夢なのか、現実なのかはわからない。


 朝。嫌な夢を見て起きる。目覚めがいいわけではないけれど、よく晴れた日だった。リビングに行けばテーブルには朝ご飯が並べられている。お母さんが作ってくれたベーコンエッグとイチゴジャムを塗ったパンが一枚、それと牛乳。

 食べ終えると、お母さんからお昼の弁当を渡してもらった。黒い猫のイラストが描かれたお気に入りのお弁当箱。鞄のなかにある教科書やノートを全部片方に寄せてから、中身が崩れないように、そっと鞄の底に入れる。

 すべての準備を終えて外に出ると、親友の奈美が家の前で待っていた。奈美は空色のシャツを羽織っていて、青いジーンズを履いていてとても涼しそうな格好をしている。わたしは、もう少しで夏だというのに、黒いパーカーに黒いズボンを履いていた。奈美はなにも気にしないし、わたしも気にしない。

 奈美とは小学校の頃からずっと、家族のように一緒にいた。わたしは、あまり友だちの多い人間ではないし、長く続く友だちもそんなにいなかったけれど、奈美だけはずっとわたしの友達でいてくれた。だから、これからもずっと、奈美とは関わっていくのだろうと根拠も無しに思っていた。

 遅れて、家のなかからスーツを着て白黒な格好のお母さんも出てくる。お母さんは、女手一人でわたしを育ててくれた。朝から晩まで働いていて忙しいけれど、せめて朝だけは一緒にいる時間を作ろうということで、学校へ行く道を通って通学してくれる。今日も、いつもと同じように、お母さんと奈美と、三人で登校する。


 後ろからなにかが足音を立てて迫ってきた。振り返って見ると、足音の主はオオカミかと思った。でも二本足で走っている姿を見て、普通じゃないと思った。オオカミでなければ、なんだろう。得体の知れない怪物が、いま、わたしたちに近づいてきている。逃げたくても、恐怖で動けなかった。

 動けない獲物は捕まえやすい。子どものとき、枝に止まっているトンボを捕まえようとして思ったことだ。それが、いま、わたし自身に起こっている。

 怪物はその手にある鋭く伸びた爪で、わたしを傷つけようとする。手が真上に上がったとき、反射的に目を閉じてしまった。嫌だ、絶対に痛い。

 でも、痛みは来ない。代わりに、うめき声が聞こえた。

「に、げて……」

 目を開けて見ると、目の前にはお母さんが立っていた。膝を曲げて、変な姿勢になっている。

 こんなときになにをしているの?

 あれ、おかしいな。今日のお母さんの服って赤かったっけ。スーツだったから白と黒しかなかったよね。なんで赤くなってるの?

 お母さん、なんで赤い服を着ているの?

「おかあさん?」

 やっと出たわたしの声は、なにを言ったのかわからないくらいかすれていた。それで、はっと我に返った。お母さんが血まみれになっている。怪物の攻撃からわたしをかばってくれたのだ。

 お母さんの手がわたしに伸びてくる。掴まなきゃ。お母さんを助けなくちゃ。でも、わたしがその手を掴むよりも早く、お母さんの腕は下がってしまった。

 奈美が叫び声を上げた。怪物は、お母さんのお腹から爪を引き抜き、奈美のほうへ歩いていく。

 嫌だ。この怪物は奈美も奪う気だ。もう、わたしの周りの人たちが傷つくところを見たくない。

 そのとき、わたしの手に、金色に輝く一本の長刀があった。これであの怪物を倒さなくちゃいけないと感じた。行動は早い。すぐに怪物に近づいて、長刀を振る。

 でも、怪物の動きが速過ぎて避けられてしまう。

 奈美まで倒れていたことに気がつく。そばへ駆け寄って、抱き起こす。そこで何度も名前を呼んでみたけれど、彼女は返事をしない。

 怪物がわたしに攻撃してきた。長刀で、怪物が進んでくるのを妨げ、突いてたろうと、一旦、腕を引いた。すると、攻撃を察したのか、怪物は逃げてしまい、なにもできなくなった。

 倒れた二人を見て、現実に戻された。

 二人を助けたい。どうすればいいの。そうだ、救急車を呼ばないと。

 十数分で救急車が来たけれど、すでに手遅れ。二人は即死だった。

 あの怪物は、絶対に許さない。

 街のほうでなにかが起きているのを感じ取った。直感的に、さっきの怪物の仕業だと判断して街のほうへと向かう。

 そこでは、同い年くらいの男子が怪物と戦っていた。また他の人を殺そうとしている怪物を見て、許せなくなった。

 怪物に突っ込み、長刀を存分に叩き付けてやった。いつの間にか、怪物はカードに変わっていた。怪物を倒した証ということでそのカードを拾ってみるも、わたしの心は全く晴れない。

「こいつじゃない」

 あの素早く動く怪物を倒さないと、わたしは自分自身を許せない。


 そして、わたしは二人の仇を倒すことができた。木崎剣一という男子が、オオカミモンスターを逃がしてしまったと告白してきた。本当は殺してやりたいくらいだったけど、そうしたところでなんの解決にもならない。

 モンスターは他にもいる。そいつら全員を倒さなければわたしの戦いは終わらない。もう、わたしは戦いのなかで生きることしかできない。モンスターはすべて倒す。そう決意した。

 H.O.P.E.という機関が、わたしたち守護者に協力してくれると申し出てきた。別にそれは構わなかったが、わたしには、わたしの手で倒したいモンスターがいた。女帝と呼ばれていたモンスターだ。女帝はわたしを操り、木崎たちの足を引っ張ることになった。おまけに、木崎に借りまで作ってしまい、わたしの気持ちはぼろぼろになった。

 しばらく、単独でモンスターを捜していた。人里離れた山や森に潜んでいるのではないかと予想し、その辺りを探っているとあいつらの気配を感じることができた。木崎たちを呼ぶことを考えてみたものの、その間に逃げられてしまってはどうしようもないと思い、一人で気配の出所へ向かうことにした。洞窟の奥底で、案の定、女帝が待ち構えていた。逃げる様子もなく、わたしの戦いに応じる。

 女帝の力は、人の行動を操るものだ。そんなことを知ったところでわたしにはどうすることもできない。最初からこっちが全力で勝負を仕掛けて、向こうの力を発揮される前に倒してやるくらいしか思いつかない。パワーを上げるカードとスピードを上げるカードを使い、相手の目に止まらない速さで迫り、防ぎ切れない力でねじ伏せる。

「以前よりも力を増したか」

 違う。前回よりも本気なだけ。絶対にお前だけはこの手で倒すと決めた。

 女帝に長刀を当て、後ろへ飛ばすことに成功した。お腹を押さえているところを見ると、少しは効いているようだ。

「名前はなんと言ったか」

「モンスターに名乗る名前なんかない!」

「威勢がいいな。気に入ったぞ」

「黙れ!」

 わたしはジグザグに素早く移動し、女帝に長刀を振り下ろした。しかし、どこかから取り出した赤い刀身の剣でわたしの攻撃を防いでいた。

「倒してしまうにはもったいない強さだ。妾の僕にしてやろう」

 女帝の目を見たとき、わたしは身動き一つ取れなくなった。そのとき、この場にもう一体のモンスターが現れる。ヘビのようなモンスターだ。そいつが持つ杖から出る光を見た瞬間、わたしの意識は消えた。


 朝。嫌な夢を見て起きる。目覚めがいいわけではないけれど、よく晴れた日だった。

 わたしはこれを、何度繰り返したのだろう。


「もう、終わりにしよう」


 突然、どこかで聞いたことのある声が聞こえた。

世界が、ぐるぐると絵の具をかき混ぜたかのように、混ざっていく。住宅街、街中、洞窟、様々な空間が溶け合い、わたしのいる場所が不安定になる。

 目の前に女帝とヘビのモンスターが立っている。わたしはこいつらに縛られていた。逃げようとするも、身動きが全然取れない。

 なにかが破裂したような、甲高い音が響く。少し遅れて、わたしを縛っていたものが解けた。その瞬間、世界が一気に輝き出す。

 わたしは見逃さなかった、金色の銃を持った男が光の向こう側にいたことを。顔までは見えない。でも、見えなくてもいいと思えた。眩しくも温かい光に、わたしの身体は包まれているから。


 目の前に、金澤くんが地面に膝をつけた状態でいる。わたしに、黄色のカードを向けたまま動かない。

「金澤くん?」

「……戻ったのか」

 そうだったんだ。金澤くんが、わたしを助けて……。

「ありがとう」

 涙が溢れてきた。わたしはようやく、永遠に続くと思われた悪夢から解放されたのだ。



「別にいいよ。でも、ちょっと休ませて」

 瀬戸を助けるためにはどうしたらいいかと頭を働かせたとき、一つの妙案が浮かんだ。多分、普久原だったら絶対に思いつかなかったアイディアだ。

 それは、瀬戸に対して解放の力を使うこと。散々北条の実験に強力したことで、どんなことでも「解放」ができるということを知っていたからこそできた発想だろう。瀬戸がされている「操作からの解放」をオレはやったわけだ。正直なところ、ギャンブル要素は大きかった。

 オレは一か八かの賭けに、勝ったってわけだな。

 あーあ、病み上がりだって言うのに、マナを消費しちまった。木崎に起こられても仕方がないな。

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