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STRUGGLE  作者: 春巻き系男子
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2nd Card 守護者の役割

 滅多に起こらないことが一旦起こってしまうと、それは連続して起こってしまうものなのだろうか。悪いことは続く、という言葉があるが、それは珍しいことにも言えることなのだろうか。

 つまりなにが言いたいのかというと、我があばら屋に客人が来ているのだ。そう、三名ばかり。普久原雅志、伊部里花、そして古代人エルー。全ては雅志の一言が原因だった。「外で話すのもどうかと思うから、近くにある剣一の家に行こうよ」とやつは提案し出したのだ。人をあげることに抵抗はなかったし、現在住んでいるのはおれだけだから問題はなかったものの、なかなかに急展開なことだ。

 家に辿り着くまでも、長い道のりであった。現代のものは、どんなものであっても大変興味深いようで、口に出して「これはなんですか?」と尋ねたりはしないが、なにかを見つけるたびに立ち止まることが何度もあった。実にわかりやすいやつだ。いまも、彼女はテレビに釘付けとなっている。そろそろ本題に入りたい。おれは古代人にそっと声をかけることにした。

「そろそろ話の続きをしないか」

「はっ、そ、そうですね」

 ようやく我に返ってくれた。

「話すことはまとまったのか」

「ええ、そのことですが……」

 答えに窮していた。

 ははあ、この場合次に来る言葉は二通りに絞られる。「全くまとまりませんでした」か「まとまりはしましたが、忘れてしまいました」だ。さあ、どちらが来る。どちらかが来たとしても、またまとめてもらえればそれで充分ではあるが。

「私、どうやら記憶の一部が欠けているんです。それをふまえたうえで、聞いてもらえますか?」

 予想外の答えだ。随分と過去の出来事だと考えられることだし、記憶がないのは仕方がないこともあるだろう。しかし、それでもどうやらしっかりと話すことはまとめていたようだ。こいつ、案外侮れないのではないだろうか。

「もちろんさ」

「大丈夫です」

「ではどうぞ」

 雅志、伊部、おれの三人が続けざまに言った。

「ありがとうございます」

 古代人は一呼吸置いてから説明に入った。

 私がいた古代の世界では、人々はマナという力の源を使って生活していました。マナには、生命に宿るマナと大気中に存在するマナの二種類があります。これら二つを、マナの宿っていないものを通して合わせることができれば、強大な力を得ることができると考えられてきました。

 私が生まれるより少し前の時代にこの二つのマナを、石を媒介にすることで混ぜ合わせることに成功しました。そこで生まれた大いなる力は、人々の強く望む事象を具現させる可能性として私たちの前に、札として現れたのです。あ、「札」じゃなくて「カード」というのですか。

 初めのうちは、本来の目的である、人々の生活を豊かにするために用いられていました。ところが時が経つにつれて、人々を傷つけるために使う者が増えていきました。私が生まれた時点では、もうこの争いは始まっていましたね。

 大いなる力は、完全に本来の目的を見失い、人々を傷つけるときに、その効果の全力を出す使われ方をされていきました。大いなる力は破壊の力へと堕ちてしまったのです。

 やがて破壊の力は自己を持ち、ついには姿形さえも手に入れました。それが先ほどの「力の化身」です。この時代では「モンスター」と呼ばれているようですね。モンスターは、カードだったときの最も強い「人を攻撃する」という記憶のもと、人々を襲いました。彼らはもともとマナという存在故に完全に倒すことができません。二度とこの地上に彼らを出さないために、私たちに残された手段は、モンスターを封印することしかありませんでした。

 封印の役割は私が担いました。多くの犠牲を出しつつも、なんとかモンスターの進行を止めることで封印に成功しました。モンスター同士を近くに封印したとしても、すぐに破られてしまうことを恐れた私たちは、モンスターを一箇所だけに封印するのではなく、分散させて封印することに決めました。はい、さっきの場所以外にもモンスターは封印されています。私は、モンスターの何体かと共に自身を封印し、悠久のときを過ごすはずだったのです。え? なぜ私も一緒に封印されたのか、ですか? 封印されたのではなくて、内側から封印したのです。そのほうが、封印は強固なものとなるので。

 しかし、封印は破られました。ええ、私の力不足のせいでもありますね。ですが内側からの封印はモンスターによって破られることは絶対にありません。その代わり封印の力が、周期的に弱まることがあります。その弱まったときに破られてしまいました。しかも外側からです。つまり、なんらかの原因で封印が解かれたということになります。


「その結果として、私はモンスターと共にこの時代に現れたのです」

 古代人はそう言って口を閉じた。まとめたことはすべて話したということだろう。記憶か欠けていることなどあまり意識させないものだった。古代世界の状況や、モンスターが現れた理由はなんとなくわかったのだから問題ないだろう。

 もう一つ詳しく知らなければならないことがある。少なくともおれにとっては。

「おれが持ってるこの刀。守護者の得物とかいう、どうやらモンスターをカードに戻すことができるもののようだが、これも古代の物なのか?」

 おれは古代人に刀を見せた。まじまじと見てくる。

「私の時代にもありましたが、さらにそれ以前からあったものです」

「なら、これを持ってる人間がどんな役割を背負うことになるのかも知ってるな?」

「はい。人間を守る、それが守護者の得物に選ばれた人間の役割です」

 打てば響くような返答だ。このまま質問を続ける。

「ならぜひとも訊いておきたい。どうして得物はおれを選んだんだ?」

 その理由を知らなければ、おれは現状に納得できない。確信と呼べるものが欲しかった。

「……私には、わかりません。ただ、けんいちさんにその意志があったから、持つことが許されたんだと思います」

「お前の意見は聞いてない」

 それと、気安く名前で呼ばないでほしいものだ。そこまで言うつもりはないけど。

「すみません」

 おれに人間を守る意志があったから、刀はおれを選んだ……。たしかにおれは二人を守りたいと思った。真実かどうかはわからないが、いまはこれを信じておくしかない。

「でもすごいじゃないか、剣一。守護者の役割だなんて」

「そう、なのかな」

 表立って言えることではないが、満更でもなかったりする。こういうときほど、後で大きな失敗をするものだ。いまのうちから注意が必要だろう。これまでの行動で、失敗の原因はあるだろうか。

 待てよ。あのとき、たしか……。

「そういえば、さっきモンスターに出くわしたな……」

「え? どうなされました?」

「向こうが逃げた」

「それは他の人が危険です。早く見つけてカードへ還元しなければ、多くの人々が傷つくことになります!」

 その可能性は大きい。

 最初のモンスターとの遭遇は、突然のことで驚いていたこともあり、どうすればいいのかわからなかった。それに、二人を守れればそれでいいと思っていた。でも、それだけではいけなかったのだ。早速の失態か。

「……モンスターを探してくる。お前らは帰れ」

「待ってよ、剣一。ぼくも手伝うよ」

「あたしも」

 雅志と伊部の厚意はとてもありがたいが、こいつらがいてもモンスターと戦うときには足手まといになる。火を見るより明らかなことだ。誰かを守りながら戦える自信はおれにはない。それに、二人になにかできるとは思えなかった。

「お前らはなにもしなくていい」

「どうしてだよ」

 雅志は口を尖らせる。

「さっきはたしかにお前のおかげで助かったけどな、あれが何度も続くとは限らないんだよ」

 せいぜい無愛想に言い放った。

「それは……そうだけど」

「そういうことだ。話は終わったな。早く帰れ」

「ちょっと木崎くん、その言いかたは酷いんじゃない?」

 伊部に諭された。気遣いが足りなかったかもしれない。とはいえ、これくらい言わないと雅志は帰りそうになかった。

「いいんだよ、里花。ぼくたちは帰って、記事の代替案を考えよう」

 そうしてくれるとこちらとしてもありがたい。

「……剣一、また学校でね」

 言い残して、二人はおれの家から出ていった。雅志の後ろ姿はどこか寂しげだったのは当然のことであろうか。やはり言い過ぎたようだ。二人を傷つけたくないという気持ちもあるのだが、どうにも自分だけの役割に舞い上がっているおれがいるのではないだろうか。これではいけないな。

「よし、おれも行くか。モンスター退治に」

「私も一緒に行ってよろしいでしょうか?」

 駄目に決まっている、と喉の奥まで来た言葉を飲み込んで、ふと考えてみる。おれはモンスターを全体的に把握していない。しかし、古代人がそうであるとは限らない。ひょっとしたら一緒に来てもらったほうが得策かもしれない。

「モンスターについて詳しいのか?」

「はい。ほとんどのモンスターの能力を覚えています。先ほど戦ったあのモンスターの能力は、生命ではないものを模写するものでした」

 そいつは大した情報だ。とても助かるだろうな。

「じゃあ、一緒についてきてくれ」

 おれたちも家を後にした。

 外に出てからふと気づく。モンスターを探すといってもどこをどう歩けばいいのか皆目見当がつかない。

「モンスターは人を襲うんだよな。なら人通りが多いところに現れるってことなのか」

「個体によります。強力な力を持つモンスターなら人が多いところで大暴れしますが、能力的に低いモンスターは人の少ないところで活動することもあります」

 やはりこういった情報を得られるだけでも、古代人を連れてきたことは正解かもしれない。しかし、おれと年齢の離れていなさそうなこんな少女が封印の役割を担わされるなんて、古代の世界もなかなか酷い場所らしい。守護者はそんな人間たちを守っていたのだろうか。

「守護者のことについてはなにか知らないか? どんなやつだったとか、どうやって戦ったとか」

「私、記憶の一部が欠けていると言いましたよね? 実はあれ、守護者のことだったんです。たしかに私の時代にもいましたが、それが誰でどんな人だったのかまったく覚えていないんです」

「なら、どういった力を持つのかも知らないのか?」

「私が知っているのは、ほんの一部、先ほど話したことぐらいです」

 守護者やそれが持つ力の詳細までは知らないのか。一体どうしてなのだろう。気にしても仕方のないことではあるが。独力で守護者について学ばなければならないようだ。なんとなくの使い方は先ほどの戦闘や、謎の声で把握したつもりではいるが、より詳しく知るためには回数を積み重ねるしかない。

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