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STRUGGLE  作者: 春巻き系男子
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28th Card ワールドオーバー/天地騒々

 バイクに乗るために駐車場へ向かう。途中、偶然にも絢十と合流した。彼も駐車場を目指している様子だ。

「よう、来てたんだな」

 なにか意味を含ませて言ったわけではなかったが、ひょっとしたらそう捉えられるかもしれない言葉だと言ってから思った。

「ああ。お前こそな」

 ううむ、誤解されただろうか。出だしとしてはよくない感じだ。

 駐車場に着くとそれぞれのバイクに乗る。携帯端末をバイクにセットし、自動操縦機能を作動させた。

 絢十はバイクには慣れているので、さっさと駐車場を出て車道を走っている。おれが車道に出たときには、すでに姿が見えなかった。モンスターが現れたのがおれの住んでいる地域に近いということは絢十の地域にも近いということになる。あいつもそれなりに危機感を感じているのだろう。

 スピード違反云々をこの状況で言うつもりはないが、自動操縦の厄介なところは制限速度を守る点だろう。早く行きたいのだが、おれはバイクを運転できないのでこの速度で向かうしかない。おれも免許を取ったほうがいいかもしれない。いや、それだとまるでスピード違反をするために運転免許を取ろうとしているみたいだな。

 段々目的地に近づいてきたことが、モンスターの気配を察知することでわかった。もうすでに絢十は到着しているだろう。

 距離が近づくにつれて崩壊した建物が姿を現した。同じ高校のやつらが学校の帰り道に通るところだ。嫌な予感がする。

 バイクが停車した。建物の残骸で道が塞がれているため、これ以上走行することができなかったからだ。絢十のバイクがあることから、あいつはここで降りたのだろう。おれもバイクから降りてモンスターの気配を頼りに進んでいく。残骸にのぼり、先の状況を肉眼で確認する。


 眼前に広がる景色は一体のモンスターによって破壊された跡だった。モンスターはまだその場に留まっている。

 茶色の身体、黄色の瞳、頭部に生えた二本の角、ミノタウロスを連想させるモンスターだった。力を使ってしまったからなのか、一歩も動かない。やるならいまだ。

 そう思ったのだが、近くには逃げ後れた一般人がいた。モンスターからは死角となっている物陰に隠れている様子だった。見知った顔もいる。伊部だ。そちらには雅志がついていた。その場からは逃げ道が塞がっているため、モンスターを警戒しつつ逃がす機会を伺っている様子だ。

 絢十はモンスターが動いたときのために常にモンスターの背後から照準を合わせていた。

 人々を逃がすのなら、モンスターが動いていないこのときしかないだろう。絢十が雅志にそれを伝えてやれたらいいのだがモンスターが気づいてしまっては本末転倒。

 障害物を飛び越えながらおれは雅志がいるほうへ向かった。それに気づいた一般人の一人が大きな声を上げる。

「……木崎! おめーなにやってんだ!」

 おれのクラスメイトだった。ええと誰だったかな。そんなことはどうでもいい。いちいち答えている暇も考えている余裕もなかった。

 モンスターが微かに動いた。

 気づかれたな。

 次の機会を待っている暇はないし、後ろに一般人が隠れていては充分に戦えない。さっさと行動を起こすべきだ。進路をモンスターへ変更する。

「雅志、早く逃がせ」

「わかった!」

 雅志が人々を誘導する。同時に、モンスターが一歩動き出した。酷く重たく感じられる動きだ。

 絢十がモンスターの背後から光弾を撃つ。肩に当たり、前のめりになった。続いておれも刀で一撃食らわせ、相手を仰け反らせた。

 手応えはあるのに、効果があるようには感じられない。まだ相手に余裕が見られる。もう一度斬撃を試みた。これも相手は食らうが、倒れるまで何度も浴びせる。端から見ればどちらが悪者なのかわからない光景だろう。

「なんだこいつ」

 このモンスターは見た目から予想してパワータイプなのかと思ったが、どうやら耐久力のほうが高いようだ。再び絢十の発砲も直撃するが倒れない。先ほどの反応とは違って、前のめりにもならなくなっていた。

 敵の手に、自身の身体の倍近くはある長さの斧が現れる。いよいよ本領発揮というわけだ。そのタイミングで絢十が足を狙い撃つが相手の進行は止まらない。こうなったら、いつかのときと同じく一点に集中した攻撃に切り替えたほうがいいかもしれない。

「絢十、一点集中攻撃だ」

「硬いからな」

 ちょうどおれと絢十の間にモンスターがいるという一直線上に並んでいた位置から、絢十が迂回しながらおれのところへ来た。

「どこを狙う?」

「腹だろ」

 即答された。以前と変わりないが特に変える必要はない。

 絢十が狙いを定める。直後、敵が急に速度を上げて近づいてきた。先ほどを一とするなら、いまは八かそれ以上まで上がっている。光弾を放って応戦するも避けられてしまった。どうなっている。こいつは防御タイプじゃなかったのか。

 守護者の銃は七発の光弾を撃つことができる。絢十は四発消費していた。弾を補充するためにはマナを消費しなければならない。

「これを使え」

 赤のカードを投げ渡した。マナを吸収する力のカードだ。

 正面まで迫っていたモンスターから振り下ろされた斧を押さえるも、おれは殴られて吹っ飛ばされた。なんて力だ。瀬戸が倒したパワータイプのモンスターといい勝負だ。やはりこいつは見た目通りのやつなのか。

 刀を地面に刺し、地面を滑っていた勢いを殺して立て直す。すると絢十がこちらに飛んできておれと衝突した。同じくモンスターから一発もらったようだ。

 防御もスピードもパワーも段違いに上だ。もしかすると、上級モンスターよりも、その点だけ見れば勝っているのではないだろうか。

 おれたちが立ち上がったときには、すでに敵は目の前に来ていた。斧が振り回される。刀で防ぐことはできても、その衝撃に耐えることはできずにまた飛ばされてしまう。続けて次の狙いである絢十に攻撃が加えられようとしていた。その瞬間、光弾がモンスターに直撃する。いつもよりも大きめな光弾に見えたのだが気のせいだろうか。

 気のせいではなかった。モンスターが後方へ押され、背中が地面についたのだ。絢十の右手には青のカードが握られていた。すぐにマナを吸収できたとは思えないから、赤のカードは使っていないのだろう。

「そのカードは……」

「武器強化のカードだ。H.O.P.E.で倒したモンスターの力」

 そうか、あのときのカード。

 北条たちが密かに捕獲していたモンスターを倒したのは絢十だった。だから、絢十が北条からの返却先となっていたのだろう。そのおかげでモンスターに効果のある攻撃をすることができたわけだ。

 再び絢十が引き金を引く。しかし、すでに起き上がっていたモンスターは光弾をかわして絢十に向かっていた。攻撃力で勝てたとしても、やつにはまだスピードがある。このままでは近距離戦になり、絢十が不利になってしまう。おれはモンスターと絢十との間に入ろうと動いたが、間に合いそうになかった。が、運良く雅志がモンスターの攻撃を受け止めた。

「みんなは安全なところに逃がしたよ!」

 ナイスタイミングだ。

 おれはモンスターの背後へ周り、やつの動きを封じる。当然、モンスターは離れようと抵抗してきた。雅志は弾かれてしまう。敵との力の差は明らかだ。

「絢十! 雅志! 黒のカードを使え!」

 敵が前進するたびに、おれの足が地面を滑っていく。動きを封じていられるのも時間の問題だ。

「馬鹿、そんなことしたら木崎まで攻撃食らうぞ!」

「そうだよ、剣一!」

 モンスターがもがくのを押さえながら声を大にする。

「他に手がない! いまならこいつも攻撃を避けることはできない!」

「いや、でも……」

 ためらう絢十。

「早くしろ! 雅志、お前もだ。伊部を守るのがお前の役割なんだろ!」

 おれの目からは二人がどんな表情をしているのかはわからないが、絢十がこちらに向けて照準を合わせているのは視界の端に映った。だが、絢十の攻撃よりも早くモンスターがおれを払いのけた。力の真っ向勝負では全然話にならなかった。

 強化された光弾を撃たれてもなお、モンスターは攻撃に耐えた。やつはこの状況で防御に力を割いていやがる。上級モンスターではないが、判断力のあるやつだ。

 二人のほうへ向かおうとするモンスターに向けて、おれは黄色のカードを使った。重力を操る力。この力であいつの周囲を重くする。

 ところが、それでもあいつは進んでいく。スピードはかなり落ちたものだが、絢十の弾丸をかわすことならできそうだった。

 おれは後ろからモンスターに掴みかかり、再び黄色のカードを使う。おれ自身の周囲の重力も重くしてあいつの動きを少しでも鈍くさせてやる。さすがにこの重さではモンスターも速く動くことはできまい。

「いまだ、やれ!」

 長い時間、この重さに耐えているのも難しい。さっさとこのモンスターに必殺技をぶちかましてくれたほうが楽と言えるかもしれない。

 絢十と雅志が苦い表情でこちらを見ていた。

「オレは……木崎を守りたかった。なのに、こんなのってあるかよ……」

「そうだよ。ぼくだって里花は守りたいけど、だからって剣一を犠牲になんかできない!」

 たしかに、おれはいま絢十と雅志に残酷なことをさせようとしている。ある意味では、エルーを始末させようとした北条と同じ。二人にはそんな役割を背負わせてしまって申し訳なく思う。

 それでもだ。

 おれたちにはやらなくてはならないことがあるだろう。

「……守護者の役割を果たせ、二人とも!」

 声が裏返ってしまう。

 絢十が銃口を向けた。

 雅志が槍の先端を向けた。

 二人の手には黒のカードが握られる。

 そういえば、おれはエルーと約束していたのだったか。古代から変わっていないものを一緒に探しに行こう、と。どうやら叶えられそうにない。この言葉は彼女に届くことはないだろうが、それでも心のなかでは言っておきたい。


 すまない。


「エルーを頼む」

 一方に向けた言葉ではない。おれがいなければ、あいつはこの世界でどう暮らしていけばいいのかわからない。だから、彼女のことを知っている二人に頼むしかなかった。

 黒のカードが手から消え、銃口から出た光が雨となりおれとモンスターに降り注がれた。視界が輝きに満ちる。絢十の必殺攻撃を受けてもなお敵に発光現象は見られず、雅志の必殺技で空中から槍を貫かれてようやくモンスターは光り出した。

 地面に叩き付けられたおれは、清々しいまでに青い空が広がっているのを目にした。


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