22nd Card 重力の縛り
森林地帯に着くと、沖田とその部下が出迎えた。
「ちょうどいいところに来てくれました。相川さんからたったいま連絡が入り、モンスターがこちらに向かってきているそうです。ここで待ち伏せして一気に倒しましょう」
「はい」
こちらに来ているのはマナを吸収するモンスター、ドレン。そして正体不明の一体。
「モンスターの情報は届いていますか」
「そうですね……二体とも空中を移動しているようです」
沖田が送られてきた映像を見せた。一体の姿はドレンだが、もう一体はウェアドではなかった。てっきり、ウェアドがまた移動係をしているのかと思ったが、別のモンスターがその役割のようだ。すでに飛行の力は倒してしまった。ならばこいつはどんな能力を持っている。
「隊長、モンスターが現れました。十一時の方向です」
沖田のヘルメットより音声が聞こえてきた。
「みなさん用意を」
沖田が言うよりも早く、部下の隊員たちは銃を構えていた。
「木崎くんは最前線をお願いします。他のみなさんはあくまで木崎くんのサポートをお願いします」
もちろん、守護者としてそれは当たり前だろう。普通の人間に戦わせることは避けたい。おれはうなずくと指示通り、前方十一時の方向へ向かう。
モンスターの気配を感じながら森林地帯のなかを駆ける。そろそろ向こうは着陸をするだろう。動きを止める。後ろについてきている戦闘員たちもおれの動きに従った。
「来ます」
おれが一言言うと彼らは一斉に散らばり、陰に隠れて様子を見守った。
前方より二つの姿が現れる。モンスターだ。
おれは、まずドレンから先に攻撃した。こいつを先に倒してしまえば、一応封印の塔への不安は減ると考えたからというのもあるが、能力が分からない相手を攻めるよりかは幾分か気が楽だったという理由のほうが大きい。
スピードに関してはドレンよりもおれのほうが上であることは前回の戦闘で証明された。今回もそうだ。おれの最初の一撃が命中した。
久しぶりに思い切り動いてみたが痛みも消えている。調子がいいぞ。
続けて二撃、三撃と攻撃を浴びせる。攻撃を受けるたびにドレンは後ろへ下がった。
おかしい、ドレンはここまで防御力が低かっただろうか。マナを吸収してきた分、攻撃力と耐久力は上がっているはずなのだが。
もう一体のモンスーがこちらに向かってくるのを視界の端で捉えた。いまは余計なことを考えている場合ではない。
このモンスターの攻撃は簡単に回避することができた。
武器で攻めるわけでもなく、なにかを飛ばしてくるわけでもない素手での攻撃なのだから動くだけで充分だった。それどころかこちらに反撃する余裕まである。その機会はいただこう。
攻撃を受けた二体のモンスターがおれをにらんでくる。
二体同時に攻めてくるか、と思いきや、攻めてきたのは能力不明のモンスターだけだった。そちらに気を取られた隙に、ドレンが塔のほうへ走っていく。木々の陰に隠れていた隊員たちがドレンに対して発砲するが、やつはまったく意に介さない様子だった。
二手に分かれられると守護者一人では無理がある。
モンスターを刀で払いのけ、敵との間に距離を作る。さっさとこいつを倒してドレンのところへ向かおう。
おれは黒のカードを出した。
すると突然、おれの身体になにかがのしかかってきた。重さに耐え切れず、地面に伏してしまう。身体全体に重さが伝わり、動くことができない。押しつぶされそうだ。
こいつの能力であることは間違いない。重さを操る力……重力を操っている。能力がわかったところで、こちらの身動きがとれない状況が最悪なことに変わりはない。
モンスターがこちらに近づいてくる。空気を伝って感じ取った。
起き上がろうとする力を右手だけに集中させる。所持しているカードを一枚だけ取り、その効果を発動させたい。持っているカードの効果はコピーと衝撃波。どちらが来ても切り抜けることはできる。
敵がすぐ近くまで来ている。
カードを確かめる暇はない。
先に触れたカードを使った。
途端、身体が宙に舞った。使ったカードは衝撃波。敵にとってもおれが急に飛び上がることは予想外だったようで、呆然とこちらを眺めていた。そのおかげか、相手の能力の効果は途切れた。身体が一気に軽くなる。
空中で黒のカードも発動させる。敵の上空から【瞬速斬】で攻撃した。一撃では足りないと思い、もう一撃加える。連続で【瞬速斬】を出せた。
黄色い光を身体に帯びて、モンスターはカードへと姿を変える。地面にある黄色のカードを拾い、おれはドレンの後を追った。
沖田とレイモンドを含む戦闘員たちが銃でドレンの動きを封じようとしているが、効果がある様子はなかった。おれが沖田に手を振る。その意味を理解した沖田が銃撃をやめるよう指示した。指示通り攻撃がやむと、おれはドレンに背後から近づいて斬り伏せる。敵が前のめりになった。やはり手応えがある。
ドレンは進路を、塔からおれへと変えた。敵が近づくまでわずかに時間がある。そこで青のカード、コピーの能力を発動させる。ドレンの能力であるマナ吸収、それを真似させてもらおう。近づいてくるドレンから距離を取りながらマナを吸収していく。
少ししてから、ドレンが動きを止めて自分のマナが吸収されていることに気づいた。向こうも同様にマナを吸収しようとしてくる。
残念ながら、おれの目的はマナの吸収合戦ではない。あいつが動きを止めた瞬間を見計らって瞬時に黒のカードを出す。ドレンのマナを吸収したおかげで、この短時間の間にもう一度発動することができた。
手応えあり。
先ほどやってみたように連続で【瞬速斬】で攻撃する。これも手応えあり。試しにやってみた技が二度も成功した。今日は本当に調子がいい日だ。
振り向けばドレンが赤い光に包まれて倒れていた。そのまま起き上がることなく、カードとなった。
ついに、以前苦戦を強いられた敵を倒すことができた。勝てた喜びよりも、なぜ勝てたのか疑問に感じつつ赤のカードを拾う。いつか見た夢、おれが強くなるために特訓した夢は、もしかしたら夢ではなかったのかもしれない。
沖田とレイモンドが部下を引き連れてやってきた。
「木崎くん、お疲れさま。これより作戦を第二段階へ移行します」
「第二段階?」
「ええ。あの、モンスターを封印している塔を本部へ持ち帰るんです」
北条にそれを頼まれていた。本来の目的はあれを回収することなのだから、第二段階と言われると違和感があるが、モンスターを倒して塔を持ち帰るというのが作戦の全貌だろう。
「ただ、あの塔の近くにいるのが非常に辛くて、どうしたらいいでしょうね?」
封印の塔はその封印を解かれないために、一般人には近寄り難いオーラを纏っているとエルーから教えてもらったことがある。
そんなことを言われても、おれだってどうしようもないぞ。




