20th Card 北条のレポート
今回は、復習回となります。
【古代の世界】
我々が繁栄している文明よりも以前に、優れた文明を持つ世界があったという事実は驚くべきことではない。そのような事実よりも、その文明が残した遺産のおかげで現在まで恩恵を享受することができている現実のほうが驚くに値するし、感慨深いものがあるといえる。だが、現代まで受け継がれてきたものは、決して正の遺産ばかりではなかったのだ。
私は数年前より古代世界についての調査を続けてきた。現在の人類の進化の道を切り開いていくためには、過去の反省を活かさなければならないと考えたからだ。
古代世界の景色は我々の目には映らない。それでも、なにが起こったのかという事実を、間接的であるにしろ四次元的な手段であるにしろ知ることはできる。調査を続けていくうちに、興味深い書物を発見することに成功したのだ。
【脅威となる存在】
要約すると「古代の世界に目覚し『強大な力』が人間を襲った」という事実が書かれていた。内容の完全な解読に成功したわけではないが、脅威の存在の正体は、「マナ」と呼ばれるエネルギー体であることも判明した。生命体に宿るマナと大気中に漂うマナを、マナが宿っていないものを媒体として混ぜ合わせることで、脅威の源であるカードは誕生する。本来ならカードは人々の幸福のために使われるはずのものだったが、時が人の心を変えてしまい、争いにおいて他者を排除するために使うようになってしまった。カードは使い手の悪意に染められ、いつしか力が実体化するまでに至ってしまった。実体を持った力は使い手の歪んだ意志を受け継いでしまった。
強大な力に溺れた人間が引き起こした事件によって、古代世界は壊滅的危機に陥ってしまった。だが我々の時代まで文明が続いていることから完全に滅びることはなかったようだ。理由は、後述する人間を守るために存在した「守護者」という存在にある。
ところが、守護者が人間を守れるほどの力を持ちながらも、脅威となる存在がエネルギー体という存在ゆえに完全に消し去ることは不可能だった。そんな彼らが人間を守るために最終的に取った手段は、脅威を還元して封印することだった。
【強化装甲服】
いつの日か人間が様々な環境下で活動を行うことを可能とするため、数年前より特殊なアーマーの開発を我が機関は続けていた。非力な人間の力を十二分に補うためのアイテムである。
これを脅威に対抗するために改造することを急遽決定した。いまにしてようやく完成したアーマーだが、脅威に関する明確な情報に欠けていたために開発には何度も行き詰まっていた。
平穏は突如終わりを告げた。脅威が現代に蘇ったのだ。同時に奇妙な子供たちも現れた。彼らは武器を手に、脅威であるモンスターと戦闘を繰り広げた。情報を聞きつけた我々は、モンスターの情報収集もかねて密かに彼らの行動を観察することにした。
【守護者】
子供たちはモンスターを倒し、それをカードへ変えていたことが判明した。また、手に入れたカードを使ってモンスターと戦っていることも明らかになった。彼らが書物に記されていた「守護者」なのではないかとの予想から、我々は彼らに接触することを試みたのである。
木崎剣一。刀状の武器を持つ。最初に守護者の武器を手に入れた十六歳の少年。地方の高等学校に通う一般人であった。モンスターから友人を守ろうとする意志に呼応して武器が現れたという。
金澤絢十。銃状の武器を持つ。木崎剣一と同じく十六歳の高校生である。彼は木崎剣一をモンスターから助けようとしたときに守護者の武器を手にした。
瀬戸紫苑。長刀状の武器を持つ。現代に現れた守護者のなかでは唯一の女性である。年齢は前述の二人と同じ十六歳。彼女は友人と家族をモンスターに襲われてしまい、彼らを守ろうと思ったことで武器を手に入れた。
普久原雅志。槍状の武器を持つ。木崎剣一と同じ高校に通う十六歳の少年。モンスターに襲われかけた友人を守ろうとしたとき、守護者の役割を得た。
以上四名が、現代に蘇りし守護者の役割を与えられた。
守護者の武器は誰もが使える物ではなく、選ばれた人間にしか扱うことが許されていない。彼らに共通しているのが、なにものかを「守る」という意志があったということである。それが守護者の武器を扱うのに必要な条件の一つである可能性は高い。
また、守護者はこれまでの戦闘で幾度もカードを使ってきたが、力が実体化することはなかった。このことから、彼らがカードを使ってもモンスターが生まれることはないものと考えられる。
【カード】
守護者がモンスターを倒すことで、モンスターはカードへと姿を変える。なお、我々がモンスターにいくら攻撃を加えてもカードに還元することはない模様。
カードには種類がある。
自分やその周囲に効果を与える青のカード。たとえば自分の腕力を高めたり、移動速度を速めたりする、といった身体能力を上昇させる効果が得られるものがある。『スキルカード』と名付ける。
対象物に対して影響を及ぼす赤のカード。いまのところ一枚しか手に入れていないが、相手に向けて衝撃波を放つものがある。『エフェクトカード』と名付ける。
また、守護者がモンスターに強力な一撃を与える際に現れる黒のカードについても言及しておく。通常、そのカードは守護者が持っているものではなく、なんらかのきっかけによって出現するものと考えられる。黒のカード自体からエネルギーが計測できたことから、一定以上のマナを集めなければ使用できないのだろう。そのカードを使用することによって、モンスターに対して強力な攻撃を加えることができることから、いわゆる必殺技のトリガーとなるカードのようである。『ブレイクカード』と名づける。
【古代の少女】
守護者とは別に、実に興味深い存在がいる。モンスターを封印する役割を担っている、古代の世界よりやってきた少女のことである。名前をエルーという。部下の報告によれば、彼女は常人とはかけ離れたマナを備えているとのことである。木崎剣一たちも、たしかに大きなエネルギーを秘めてはいるがそれとは種別が異なるものだった。彼女のマナは、モンスターのものと等しいのだ。必然的に、彼女もモンスターなのではないかという疑いが我々のなかで生まれた。だとすると疑問が浮かんでくる。
なぜ、守護者と行動を共にするのか。
仮説を立てるうえでこの情報は欠かせない。上級モンスターという存在だ。守護者の子供たちが苦戦を強いられたという敵である。彼らがいままで戦ってきたモンスターのなかでは間違いなく、群を抜いて優れた頭脳と強大な力を兼ね備えていた。
エルーは木崎剣一に上級モンスターの何体かを伝えたようだ。風、炎、氷、地、雷といった自然の力を操るものがそれぞれ五体(我々は『エレメンタルシリーズ』と名付けている)、幻を操るもの、人の行動を操るもの(モンスターからは『女帝』と呼ばれている)、力を解放するもの、そして擬態するものがいるという。どの能力も使い方次第で大変な脅威となることは間違いないが、なかでも擬態するモンスターに注目したい。
封印の古代人がもし、このモンスターだったらどうだろうか。つまり、木崎剣一の前に現れた彼女の姿は本来のものではないということである。ただ、そうすることのメリットがわからない。単純に、油断させて守護者を倒す、ということも考えられるが自らの能力を教えてしまっては意味がない。
そこで再び補足しなければならないことがある。エルーは記憶の一部が欠けているのだ。これが己の正体に関することであれば説明はつく。彼女は本来の自分を忘れ、擬態した少女が本来の自分であると認識しているのだ。だからこそ、敵であるはずの守護者に一切の攻撃を仕掛けないのではないだろうか。
いずれにせよ、解明させなければならない。エルーは本当に我々の味方なのか明らかにする必要がある。彼女を検査することでモンスターに対抗する方法も明確に浮かんでくるかもしれない。彼女が我々の未来の鍵を握っているのだ。だから、我々は知ろうとする。
明日の、進化のために。




