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STRUGGLE  作者: 春巻き系男子
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19th Card カウントダウン

 モンスターをカードへ戻し終えた絢十がモニタールームへ戻ってきた。北条にそのカードを渡したのを合図に、北条はアーマードソルジャー三人の簡単な紹介を始めた。

 紺色でパワータイプのアーマー、パワードアーマーの装着者であり、おれを助けてくれた警察官の名前は相川和真という。灰色のガードアーマーの装着者はハーク・レイモンド。そして、スピードアーマーの装着者は沖田信司。

 彼らに続いておれたちも自己紹介をしようとしたが、向こうはおれたちのことはすでに知っていたためその必要はなかった。一体どこまで知られているのやら。

「先ほどの戦いを見てくれてわかったと思いますが、アーマーの性能とそれを操る彼らの力はたしかなものです。どうか協力させてください」

「よろしくお願いします!」

 雅志が真っ先に握手を求める。それをするということはおれたちが彼らの協力を許すということにほかならない。おれはそれを止めなかった。

 すぐに北条が握手に応じる。おれたちもするべきだろうか、と考えていたが、結局、向こうから手を差し出してきたため全員が彼と握手をすることになる。

 それからは雅志だけがアーマードソルジャーに握手を求めた。一号アーマー装着者から、という雅志なりのこだわりで、まずは相川に手を差し出した。その気さくな人柄のおかげか、すんなりと雅志に応じていた。

 次に二号アーマー装着者のレイモンド。無口そうな外見通り、すぐに握手に応じることはなかった。雅志の顔を一瞥してからゆっくりとその手を握った。

 最後に三号アーマー装着者の沖田信司に手を差し出す。沖田のことだからすぐに握手に応じてくれるだろうと思ったが、その予想は見事に裏切られてしまった。

「すみません、握手はしない主義なんです」

 どこの殺し屋だよ。

 雅志は特に残念がることもなく、手を引っ込めた。

「ごめんな、こいつちょっと変わってるんだよ」

 相川は芝居がかったように謝った。

「変わってるって、それはお互い様でしょ、相川さん」

「沖田くんほどじゃないよ」

 二人が冗談を言い合えるほどの仲であることはよくわかった。

「相川さん、警察のほうはどうしたんですか?」

「ああ、この組織は各機関から人材を集めているんだよ。俺は警察からここへ志願して入ったんだ」

「なぜそんなことを」

「給料がいいから」

 うわあ、ちょっと意外な一言。そう思ったおれを見た相川は、笑顔でこう言ってきた。

「っていうのは冗談。街にモンスターが襲撃してきたとき、俺も君たちみたいに人を守れる力が欲しいと思ったんだ」

 どうやらからかわれてしまったようだ。

 いや、それよりも。

 おれたちはこの人に少なからず影響を与えてしまった、ということになる。人を守ることのできる力が欲しいと思って行動を起こしたのはこの人だが、そのきっかけを与えたのはおれたちで間違いない。

 しかしその結果、それを実現させることができた熱意と実力はきっと本物なのだろう。この人はまるで、人を守ることを役割とするべくして生まれた存在であるかのようだった。そんな人が守護者に選ばれなかったことが不思議なくらいだ。

「君たちの力には劣るけど協力は充分させてもらうつもりだ。よろしく」

「はい、よろしくお願いします」

 相川と握手を交わす。

 そのとき、モンスターの存在を感じ取った。人間が襲われている。それがわかったのと同時に部屋にサイレンが鳴り響いた。火災報知器ではないらしい。相川たちアーマードソルジャーはその意味を理解しているようで、全員が素早くヘルメットを被り、モニタールームから出ていく。

「モンスターが現れました」

 北条が教えてくれた。そのことを知らせるサイレンだった。よくモンスターが出現したことがわかったものだ。一体どのように情報を得ているのだろう。

 おれたち四人はいつもと同じく、自分たちの足で現場へ向かおうとした。途中、おれ以外の三人が北条からカードを返してもらう。

「待て。俺たちと一緒に乗り物で行ったほうが早い!」

 廊下で相川に止められた。彼らから協力してもらえることに決定していたが、移動の面でもそれは適応されるということだったのか。

 おれたちは相川についていく。どこへ行くのかと思いきや、向かった先はなんと屋上。そこで待ち受けていたのはヘリコプターだった。すでに回転翼は動いている。準備が早い。

 アーマードソルジャー三人と守護者四人が乗り込むとすぐに発進した。

 人生で初めてヘリコプターに乗ったという感動を充分に味わえないまま、機内の小さな液晶画面にモンスターの姿と思しき映像が映し出された。画質は粗い。どうやらこのモンスターは翼を持っているようだ。しかし、あの上級モンスター、ウェアドではなかった。

 相川が作戦について短く話す。

「衛星が捉えた敵の映像だ。姿から言って、飛行能力があると見ていいだろう。

 敵が飛行していた場合、以下の作戦を取る。まず絢十くんの攻撃で敵を地面に落とす。落ちた先で俺とハークで敵を押さえる。次に沖田くんがやつを攻撃し、最後に君たちがトドメを刺す。しかし、金澤くんはいつでも上空から攻撃できるようにヘリに残っていてくれ。

 たとえ敵が飛行していないとしても、俺とハークが敵を押さえて、沖田くんが攻撃するといった流れに変わりはない。そういった作戦で行こうと思う」

 全員がうなずく。まずはモンスターと戦い易い場所へ移ることが先決、ということを理解しているのはもちろん素晴らしいが、各々の特性を活かした作戦内容を考えたことも、おれのなかでは好印象だった。なんと上から目線な感想だろう。

「目的地上空に到着しました」

 操縦士が告げた。

 機体の外を見ると、夜の歓楽街の車道の上で、羽の生えたモンスターが人を襲っているのが目に映る。それを知るや、絢十は敵に発砲した。その攻撃は命中し、敵の動きが鈍くなる。振り返っておれたちの存在に気がつくと襲っていた人間を置いて、上空へ逃げようとする。そこで絢十が再び狙撃。光弾は見事命中し、モンスターは落下した。

 ある程度の地面に近い距離までヘリが降下すると、着陸を待たずにアーマードソルジャーの三人が飛び降りる。続いて、絢十を機内に残しておれたちも降りた。

 羽モンスターは上級モンスターのように他者を圧倒する威圧感や、それに似た雰囲気は持っていなかった。

 先ほどのデモンストレーションと同じく、アーマードソルジャーの二人がモンスターを捕らえようとする。モンスターだってもちろんただで捕まるつもりはなかった。二人を払いのけると再び空へ飛び上がろうとする。ところが、ヘリのなかから三度目の光弾が放たれ、羽モンスターはまたしても落下。ついに二人のアーマードソルジャーによって捕らえられてしまう。それでももがくモンスターを見て、瀬戸が彼らに青のカードを使用した。途端、彼らの押さえが強くなる。

 ここで沖田が押さえられた敵に向かうのは先ほどと同様の流れだが、今回は守護者四人も加わり、さらにカードの力もある。圧倒的にこちらが有利な立場で、敵がむしろ可哀想に思えてきた。だからといって逃がすつもりなんて微塵もないが。

 沖田がモンスターを斬りつける。それが続くうちにモンスターは動かなくなった。いよいよ守護者の出番となったわけだが、なにもここにいる全員でトドメを刺す必要はない。今回はその役目を雅志に任せた。

 雅志の攻撃、【天空突破】を食らった羽モンスターは青のカードに還元した。

「もう終わった。早いね」

 雅志が拍子抜けしたような調子で言った。雅志の気持ちがわからないことはない。おれたちは毎度、生きるか死ぬかの戦いを繰り広げてきた。しかし、いまのような弱いモンスターが相手の戦いはそれとはかけ離れた、遊びみたいなものだろう。とてつもなく楽な作業と言える。もっとも、アーマードソルジャーにとってはそうとも限らないわけだが。

 上級モンスター相手に、果たしていまのような戦いが通じるのだろうか。


 基地に戻ると最初に来たときに通されたなにもない部屋へ向かうことになった。そこで北条は待っていた。

「お帰りなさい。彼らとの共同戦線はいかがでしたか」

「文句なしですね」

 そう、被害の少なさは文句なしだった。おれたちが自分の足で向かっていたら、このような結果では済まなかったかもしれないし、ヘリコプターから絢十が攻撃できなければもう少し的を倒すのに時間を費やしていただろう。

「それはよかった。しかし、今回の敵よりもレベルの高いものがいるはずです。いまのままではアーマーは不十分のままでしょう。より強力なものとするためにはモンスターの力を研究する必要があります。木崎さん、一時的で構わないので、どうか回収したカードを我々に貸していただけませんか?」

 すっかりカードのことを忘れていた。

どうもおれはそのことに迷いを感じている。この人たちを信用していないわけではないが、おれの第六感が「貸すべきではない」と告げているのだ。

 雅志が先ほど得たばかりの青のカードとこれまで集めてきたカードを北条に渡す。続く形で絢十と瀬戸も、自分が持つカードを手渡した。

 おれが持っているのはコピーの力と衝撃波の力の二つだけ。衝撃波の力は渡してもいいが、コピーの力はやめておこう。他のカードをコピーされて悪用する人間の手に渡ってしまったら困る。

「一つお願いがあります。戦闘時には返してください。おれたちもこの力を半ば頼りにしているんです」

「承りました」

 北条が下げた頭を戻したところで、おれは一枚の赤のカードを北条に渡す。絢十と瀬戸も続いてカードを渡した。

「ありがとうございます。しっかりと研究を活かしてみせます」

「お願いします」

「そうだ、相川くん。例のものを渡してください。私はこれから別室へ向かいます」

「わかりました」

 北条は言い終えると、どこかの部屋で向かったようだった。沖田とレイモンドもヘルメットを脱ぐと部屋から出ていく。

 その後ろ姿を見送っていると、相川がおれたちに声をかけた。

「とりあえず、今日はお疲れさま。これからみんなはどうする?」

「オレは帰るつもりです」

「わたしも」

 瀬戸がいま誰と生活しているのかは知らないが、絢十は家族と暮らしている。さすがになにも言わずに帰らないでいるのはまずいだろう。だからといって、家族に対してなにを伝えればいいのかわからないが。

 もちろんおれも帰るつもりだ。エルーに晩飯を作ってやらなければならない。

「実は君たちに、とっておきのプレゼントがあるんだ!」

 北条が言った「例のもの」のことだろうか。なにもそんなに楽しそうに話さなくてもいいのに。沖田のほうが幼いと思っていたが、もしかしたら内面的には相川のほうがそうなのかもしれない。あえて相川の幼さに釣られてみることにした。

「なんですか?」

「ついてきて」

 また移動か。

 行き先は駐車場。おれたち四人の前には四台の乗り物がある。オートバイだ。

「もしかして、このバイクをぼくたちにくれるんですか!」

 雅志が驚きの声を上げる。相川は笑顔でうなずいた。

「うわあ、やったあー!」

 喜ぶのはいいが、雅志は一つ大事なことを忘れている。

「わたし、免許ない……」

 そう、絢十を除いたおれたちは免許証を持っていないのだ。このバイクをもらったところで意味がないように思える。まさか、いまから免許証を取れとでも言うまい。

 こういったとき、免許証を持っている絢十にとってはラッキーだろうけど、あいつはすでにバイクをもっていた。果たして受け取るのだろうか。

「自動操縦で、しかも特権付きだから免許証がなくても大丈夫! モンスターが現れたとき、これで現場へ向かうといい」

 これまたとんでもないメカだな。自動操縦って、一体どんなテクノロジーだよ。しかも、免許証がなくても乗ることが許されているとは、やりたい放題な気もするが。

「このバイク、手動でも動かせますか?」

 絢十が尋ねた。オートバイを運転できる人間にしてみれば、自動操縦よりも手動で動かしたいと思うのが自然だろう。

「もちろん」

 自信たっぷりに相川が答えた。

「さらに、このバイクには人工知能が埋め込まれている。自動操縦ができるのはそのためなんだ。さらに君たちがバイクを呼べば勝手に来てくれる」

 バイクに乗ってきていないときに、それが必要な場面に遭遇したらさぞ便利だろう。

「ありがとうございます。受け取ります」

 絢十はそのバイクをとても気に入ったようだ。おれはバイクに関する知識はないから、どこが素晴らしい、どこがすごい、といったことはなにも言えないが、絢十なら語れるだろう。

「あと、この携帯端末を渡すよ。なにかあったらこれで俺たちに連絡できるし、君たち同士でも連絡が取れる。バイクを呼びたいときもこれを使うといい」

 四人にスマートフォンのような携帯端末が配られる。徹底的に向こうは協力する態勢のようだ。なんだかとても申し訳ない気分になる。

「どうする。今夜は家まで送っていこうか? それともこのバイクで帰るか?」

 この特殊なバイクをもらっておきながら、それを試さないでいるというのは非常にもったいない。もちろん、おれたちは後者を選択する。

「よし。乗り心地は俺が保証するよ」

 相川が言うとそんな気がしてくるから本当に不思議だ。

「俺たちが君たちに協力すれば、きっとモンスターなんてすぐに倒せる。だから一緒に頑張って世界を救おう!」

「はい!」「はい」「はい……」とみんなが答えるなか、おれだけは素直に返事ができなかった。

 相川の言葉が楽観的過ぎるというのではない。あれはおれたちを励ますための言葉だろう。そうではなくて、ただ一つ思うことがあったからだ。

 それぞれお礼の言葉を相川に述べて、バイクで帰路につく。

 特に走行中に操作することもなく、バイクが勝手に道を選んで進んでいく。目の前に自動車が走っていたら、無理がないようにそれを避ける。人工知能は素晴らしい。

 走っているうちに、瀬戸と分かれ、絢十とも分かれ、雅志とも分かれ、一人になった。

 今日、協力者を得られたことでおれたちは大きな変化を迎えた。このおかげで全てのモンスターを本来よりも早く倒すことができるようになるだろう。それは当然いいことだ。早くモンスターを倒してしまえば、それだけ傷つかない人が増える。喜ばしいことじゃないか。

 しかし、そう思えば思うほどに、やがて来るエルーとの別れを感じずにはいられなかった。

第一部、これにて終了です。第二部でお会いしましょう。

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