前世の自分の一生が驚くほど脚色されていてワロタ
多分短編で連載予定は無し
『白雪姫』の物語をご存知だろうか?
雪のように白い肌、黒檀のように黒い髪、血のように赤い唇を持つ美貌の姫君はその美しさを妬んだ継母によって幾度となく死の危機に陥るも、最後には王子様と幸せになるハッピーエンドストーリー。
某会社の子供向けの内容と原作のグリム童話で内容違いすぎじゃないというツッコミはこの際置いておいてほしい。
大事なのは白雪姫v.s.継母の構図なのだ。
何でそこが重要かって?それはこれが事実と全く違っているからだ!
自分より美しい白雪姫を妬む?
嫉妬のあまり日陰者にしていた?
城を追いだした揚句に幾度となく殺害を目論む?
いやいや、違うから!!
むしろ継母と『私』は同じ苦労を分かち合う同士であり、苦境から逃亡する為の協力者同士だ!!
ちなみに『私』とは白雪姫のことであり、前世の私のことだったりする。
つまり、私の前世は白雪姫である。
はい、今「妄想乙www」とか「電波www」とか思ったそこの人。
「やだわ~、痛々し~。」とか笑った後ろの人。
違うから!本当に違うから!!むしろ私の中の妄想だったらどれだけ良かったか!!!
正確には私の前世をモデルにして出来たのが白雪姫であり、実際には違う名前だった。他称は白雪姫で通っていたけどね。って言うか私を名前で呼んでたの継母だけだっだ。
この際はっきり言わせてもらうけど、この渾名で呼ばれるのすごく恥ずかしい!
確かに、確かに前世の私は姫だよ。
でもね、名前+姫ならともかく恥ずかしい渾名+姫は本人的にはめっちゃくちゃ恥ずかしいんだよ!!現代風に言うと厨二病時代のペンネームで呼ばれるぐらいに!!
まぁ、名前についてはこれぐらいにして本題に入ろう。イントロダクションとして前世の私の両親について語り始めようと思う。
私の父は素晴らしい国王だった。普段は冷静沈着かつ公正で聡明な賢王として、有事の際は兵を率いて勇猛果敢に戦う指導者としてとても優秀な人だ。容姿も艶やかな漆黒の髪に切れ長の藍色の眼、逞しくもしなやかな長身痩躯を持つ文句のつけようのない美丈夫。老若男女問わず国中の人々から絶大な支持を集める彼に一見何の問題も無いように思うだろう。確かに、彼は国王としては何の問題も無かった。むしろパーフェクトと言って差し支えない人だ。
ただし、父親や夫としては最悪の人物だった。
何より独占欲が強すぎる。
私や継母の交友関係は徹底的に監視され、お付きの侍女と女騎士以外と会話はおろか見ることすら許されなかった。おかげで私は病弱な姫君と言うレッテルを張られた。本当は風邪の一つもひいたことがない健康優良児です。夢壊してスンマソン。
一度だけ我慢できなかった継母と私が城下に遊びに行った事があるのだが、その結末たるや悲惨極まりない物だった。コソ泥のように忍び足で抜け道を通り、城内に入ろうとした私達が見た物。
それは・・・・・・満面の笑みを受けべて仁王立ちする国王その人だった。
その後のことは思い出すのもおぞましい。
私はまだいい。自室謹慎でトイレや入浴も監視付きだったが、それでもまだマシ。行動制限されるし監視の視線で落ち着かないけど、継母が父から受けたお仕置きに比べたら自宅謹慎なんて本当にマシだ。
城を抜け出した翌日から一ヶ月の間、継母は父の部屋に軟禁、いや監禁された。その間の出来事は私も知らない。数年後にそれとなく聞いてみたが、聞いた途端に顔面蒼白でマナーモードの携帯のように震え出した継母にはとてもじゃないが聞けなかった。ただ、一ヶ月後に見た継母はまるで幽鬼のように生気がなく、全体的に痩せてゲッソリしていた。反対に父は艶々テカテカでもうHPMAXみたいな様子だった。何があったかは語るまでもないだろう。
そう、我が父は重度の束縛系ヤンデレ男。いや、あれは人ではなくて野獣だな、野獣。
それからも父の重い束縛と激しい嫉妬は容赦無く私達(特に継母)を苦しめた。異性とは見ない・聞かない・話さないの3無いを実行させるのは当たり前。外出は基本的に禁止で例外は国民の為のパレードやどうしても参加しなければいけないパーティーだけだった。
本当に大変だった。特に継母の苦労はとんでもない物だっただろう。最年長の侍女長は父に食いつくされ、目の下をどす黒くした継母を見ては目に涙を浮かべ、「ああ、先の王妃様と同じく御苦労なさって・・・・・・。お労しや。」と言っていた。
え?マジか?・・・・・・どうやら私の生みの母も苦労したらしい。病弱な母は産後の経過が悪くて死んだと聞いていたのだが、今思うにそれって本当だろうか?何か疑わしい。
しかし、私達の長年の謎が一つだけが解けた。継母がこの国に嫁いできた時に古参の家臣や侍女達があれほど喜んだのは、国王の唯一の欠点である重度のヤンデレが向かう矛先が我が子である私以外に出来たからだ。彼らは国王がいつか近親相姦の罪を犯すのではと戦々恐々としていたらしい。それにしたって、私への束縛もきついと思うのだが・・・・・・。これ以上とか本当に勘弁。
そんな私達の生活に転機が訪れたのは私が13歳になった時。
国の最北端の村で反乱が起こったのだ。そこらには結構重要な役目があるらしく、我が父である国王がわざわざ鎮圧に向かった。国王自身あまり行きたくなかったようだが、やはり事情が事情なだけに行かざるを得ないらしい。しぶしぶ国の精鋭を連れて反乱の起こっている地に向かった。
シリアスな展開の途中で悪いが言わせてもらおう。
ビバ!自由!!
いや、だってあのヤンデレ野獣の拘束から解放されたんだよ!嬉しくなっても仕方ないじゃん!
継母も超ハイテンションになって知らせを持ってきた者が下がった直後、小躍りしてた。私も一緒に踊りましたとも。秘儀!喜びの舞!
それから2年間はもう天国だった。
継母はこの国に来てから禁止されていたことしまっくって楽しんでた。今まで行けなかったお茶会行ったり、私と一緒に城下へショッピングに楽しんだりして。いや、本当に楽しそうでなによりです。
私?私も好き勝手させていただきました。
実は私の趣味って家事全般なんだよね。お姫さまらしくないのはわかってる。でも好きなんだよなぁ。料理もお菓子作りも掃除も庭弄りも。綺麗なドレス着てお茶会に精出すより普通の服着て城中の雑用する毎日に生き甲斐を感じます。この頃の私は多分今までの人生で一番輝いてたよ。
私達の幸せが崩れたのはあの男が現れてからだ。
たまたま見掛けた私を見初めたあの男。隣国の王子であるそれはそれは美しい容姿―絹糸のような金髪に澄んだ碧眼、透き通るような雪白の肌と形の良い紅唇―を持つ外見は天使のようなアイツが。中身?中身はあのヤンデレ野獣とどっこいどっこいさ(ケッ)死体愛好家で嫉妬しいで束縛きつくて、本当に最低最悪な奴だし!
しかもかなり狡猾なんだよね。手回しとか本当にヤバいの何のって。いや、本当に危なかった。もう少しで外堀埋められて知らないうちに結婚する所だった。はっきり言ってうちの大臣共は頼りない。それは国王の病んだ愛情表現に継母(と私)を生贄にするあたりでわかるだろう。今回も例にもれず触らぬ神に祟りなしと言わんばかりに私を差し出そうとしやがった。大臣ェ。
唯一の味方は継母のみで、本当に敵ばっかだった。悪い人達ではないんだ。ただ事なかれ主義なだけで。でも恨むよ、怨みますとも。
だって結局結婚することになったんだもん(号泣)
逃げる努力はしたんだよ。継母の協力の下で猟師に扮した執事と逃げたり、ボディーガードの小人達を雇って森の奥にある小屋で籠城したり、仮死状態になって死を装ったり。もう、手を変え品を変えて色々したんだ。もう考えて考えて目の下が隈で真っ黒になるほど考えて実行しまくったさ。
でも全部駄目だった!!
何あのしつこいの。
どうやったら離れられるの?
どうやったら諦めんの?
あれだけやって何故心が折れないんだ?
あいつの心は何製で、本当に私達と同じ赤い血が流れている人間なの?
もう、本当に嫌です。
途中から帰還した我が父であるヤンデレ野獣国王とヤンデレ変態王子のWヤンデレを相手にしなければならない私と継母の戦いは熾烈を極めた。それは私とヤンデレ変態王子が国同士の和平という建前で結婚することになっても続いた。結婚は仕方ないにしても何から何までヤンデレに支配される人生なんて絶対に嫌だ。継母だってそうだ。私達にだってある程度の自由を手にする権利がある。
そう信じて私達は生涯ヤンデレな旦那と戦い続けたのだった・・・・・・。
そんな前世を過ごした私は現在、一般高校に通うごく普通の16歳の女子高生『雪宮 真白』として生まれ変わりました。
継母も生まれ変わっていたりします。『雪宮 紗夜子』っていう私の一つ年上の姉です。前世も美人でしたが、今生も継母もとい姉は美人です。前が茶髪碧眼のゴージャス美女なら、今は黒髪黒眼のアジアンクールビューティー。流れるような黒髪と涼しげな目元が堪らないらしい。(友人♂談)でも前世が前世だけに男性不信でラブレター貰うだけでもマナーモードになります。本人的には今生こそ普通の男性と恋したいらしいです。不憫な。(ホロリッ)
あっ、ちなみに私は普通です。前世が絶世の美少女で容姿Lv.100なら今はLv.55ぐらいの「よく見たらちょっと可愛くね?」レベルの顔です。でもスタイルでは姉さんに勝ってますが、何か?(ドヤァ)着痩せするからわかりにくいけど、ボンキュッボンのナイスバディだぜ。フゥゥゥ!!
まぁ、姉さんみたいに恋愛したいとかは全くないけど、それでも自由に生きたいとは思っていた。
・・・・・・思っていたのに、これは何の冗談だろうねぇ?
「ああ、やっと見つけた!さぁ、我が家へ帰ろうではないか!!」
「見つけましたよ、姫様。今度も、いえ、これからも永遠に共に生きましょう。」
目の前には元父親と元王子(旦那)のWヤンデレ
後ろには土気色の顔&涙目で全身に鳥肌状態でハードマナーモードの姉
「どうしてこうなった。」
どうやら今生もヤンデレと戦わなければいけないようである。私達姉妹の未来に救いあれ。
そしてこんな運命を背負わせた神よ、てめぇなんかヤンデレの天使共に監禁されちまえーーーー!!!!