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異世界からの帰還  作者: 東波 広
序章【勇者召喚】
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図書館に勇者に魔法

「キョウ、どこ行こうか?」


 僕は地図を見せながら聞いてみる。


 マントの下はギルドに用意してもらった一般的な洋服、よりも少し上等な服だ。


「そうだな、50銀貨がいくらか分からないし、魔物の詳細も知りたい。図書館に行こう」





 王立図書館が目の前に聳え立つ。華美な装飾こそないが、威風堂々とした様相を呈している。


「小さいな」


 キョウがつぶやく。いやいやいや、どこの御曹司ですか!どこからどう見ても東京の某都立図書館より大きいですよ!


「いや、十分大きいでしょ」


 キョウは周りを見渡し納得する。いや、日本でも同じだからね?


「確かに周りの家に比べれば大きいな。貴族の屋敷並みの大きさはある。建築技術が進んでないのか?」


 まさかとは思うけどキョウと僕は生まれた時代が違う?可能性はあるけど。


 新事実に愕然とした僕を気にする風に覗き込んでくる、やめろ僕はそっちの気はない。


「顔が近い!」


 周りの女の人の一部が熱い視線を送ってくるのを感じてキョウの顔を押し返す。


 いいから、離れろ!


「それだけ力が出せるのなら大丈夫だな」


 にこっと笑いかけてくるキョウに恐怖する。じょせいはめろめろだ!


「いいから、行こう」


 図書館の前に人だかりが出来るのは好ましくない。人だかりから逃げ出すように中へと入っていった。




「フレアウルフは炎の牙を持つ魔物、討伐ランクはC。手負いになった時の周囲への火炎放射は危険。牙に当たると剣や人の体は簡単に溶けてしまう。狙いは首・目・足がオススメか」


 キョウの言葉を聞き作戦を立てる。


「古典的だけど落とし穴を作って上から攻撃するってのは?」


 思いついたことをすぐさま提案する。


「落とし穴を作る時間、脱出される可能性を考えなければ範囲攻撃も牙も当たらないからいいかもしれない」


 採用のようだ。すぐに罠系の魔法の本を持ち出す。


「落とし穴は地属性の魔法でどうにかなるから、『スパイダーネット』を買おう。今日と明日は魔法の試しうち。この作戦でいい?」


 ある程度決まった作戦を確認のためにまとめる。


「ああ、それで行こう。念のため水属性の魔法も覚えたい。明日試してみてダメなら誰かに教えてもらうか冒険者を雇う」


 図書館で魔法書があるのだが、魔法には適正というものがある。一般人で一つ、魔術師が二つ、天才がそれ以上持っているのが一般的た。


 僕達の考えではここは異世界で、なぜ召喚されたかは不明。魔法があり、科学技術も日本には及ばないもののそれなりにはある。世界には魔物や魔獣、亜人なども住んでいるだろうということ。


 こちらは根拠がないため保留となっているが、過去に勇者の召喚がされたらしい。異世界から来た彼らは揃って黒髪黒目の者達だそうだ。


 おかげで元々迫害されていたこの国の黒い者達は立場を良くし、いまでは他の色よりも優遇されているらしい。


 僕達はこの勇者召喚をされた、もしくは勇者召喚に巻き込まれたかもしれないのだ。


 異世界から来た勇者は、百年に一度現れる魔王を倒してからの消息はつかめなくなっている。基本装備に全属性の中級魔法までは全て使えて身体能力が異常向上している勇者の足取りをつかめないのは当たり前かもしれない。


 10000銅貨=100銀貨=1金貨で、その上に晶貨がある。晶貨は大きな取引に用いられるため特に考える必要はないだろう。物価は日本とほぼ同じで、1銅貨が10円程度だという予想だ。


 危険度は高いが、冒険者の(低ランクを除く)収入は一般の2倍~3倍程度だ。装備や宿代などを考慮すると減額されるが、一般人より高い収入を得ているのである。


 つまり、要約するとこういうことになる。


「異世界人の職業冒険者、超稼げるじゃん」


 さっそくスパイダーネット(クモ型魔物の糸から作った粘着性のネット)を買って街の外へと出る。


 魔法とは詠唱を行う、またはそれに準ずる行為によって魔法陣を形作り現象を発動させることを指す。


 適性がなければ発動しないし、体内の魔力が足りなければこれまた発動しない。


 初級・中級・上級・古代魔法がある。初級が民間人の精一杯、中級が魔術師の精一杯、上級が天才達の精一杯、古代魔法は何人もで発動するものである。


 いまでこそ単体でも戦闘できる魔法であるが、威力の高い魔法を使おうとすると長い時間がかかる。古代の魔術師は数十人規模で一字一句間違えることなく詠唱を行い、大軍団を退けたとあるためにもともとの役割は戦略兵器なのだろう。


 魔力は使わなければ1時間程度で全回復し、魔力消費は初級魔法100発=中級魔法10発=上級魔法1発。威力は初級1=中級5=上級10程度だ。


 これとは別に精霊と契約をして力を貸してもらい、空気中のマナを使用して発動する精霊術というものがある。こちらは細かい操作は出来ないが威力は最低でも中級魔法クラスで、契約した精霊によって古代魔法まで魔力無しで発動できるという優れものだ。


 そしておそらく勇者はキョウだろう。先ほどからバンバンと中級魔法を連発している。魔力のそこが知れない。


 僕はというと、初級魔法が精一杯で中級魔法まで手が届かない。


「僕って役立たずだよね、魔法に関しては」


 初級魔法で雑魚魔物を集めながら言う。


「体術に関しては負けるけどな!」


 詠唱を行い魔物を吹き飛ばすキョウ。もれた魔物に間接技を決めてから、蹴り飛ばして他の魔物ごと吹き飛ばす。


「確かに、キョウは近接戦はからっきしだね」


 キョウには魔術師の才能があった。だから最初はただ見ているだけだったのだが、討ちもらした魔物と相対してフルボッコにされかけたキョウを見かねて僕がキョウを守ることになった。


「これならフレアウルフも楽勝だな」


 キョウが調子に乗りたくなるのも分からなくはないが油断は禁物だ。


「準備してから。あの鮫みたいな魔物かもしれないでしょ」


 釘をさしておく。あの鮫は恐怖の対象だった。


「それは怖い。あのタコみたいなやつだったら勝てる気がしないな」


 飄々とした言葉の割りに足が震えている。怖いのか、怖いんだな。




 結局僕達はこの日数百匹の魔物を狩って剥ぎ取りを行い、採取依頼によりギルドランクがF+へと上がってしまった。

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