書けない日本語
嘘、だろ。
「なんで、なんで・・・」
陸地が寝る前より広くなってる。さらにもう一つ。
「これ・・・動いて・・・」
異常なスピードで進む島。
「キョウ。起きろ、キョウ」
となりで未だに爆睡中のキョウの肩をゆする。
「後5分・・・」などとのたまったキョウを文字通りたたき起こす。
「いっ!!!てーなリュー!なにするんだよ!?」
跳ね起きたキョウに事情を説明すると驚きと仮説が組み立てられた。
このさらさらと綺麗な砂がある島は、生き物の上なんじゃないかという仮説だ。
あながち間違いないのではないかと思っている。海に落とされたり変な魚がいたり巨大鮫に追いかけられたり、散々な目にあってきた。
そういえば僕は死んだはずだったのに、ふと思い出した光景に怖気が走る。
その記憶を思い出さないように首を振り、これからの計画を立てていく。
地面の砂に日本語を書こうとするが、ローマ字を崩したような文字が書かれていく。
「キョウ」
それを見ていたキョウが落胆したような様子になったが、そんなものは関係ない。
「日本語、書いてみろ」
僕の言葉どおりに書いていくキョウ。ただしローマ字を崩したような文字だ。
落胆の表情が少しだけ和らぎ、代わりに困惑の割合が増えていく。
「”今日はさんざんな目にあった”か。日本語を書けも話せもしないのは確かにおかしいよね」
キョウはさっきの僕の言葉でようやく気がついた。ここでは日本語が一切使えないことを・・・。