暗雲立ち込めて
一晩経って気づいたこと。それは・・・。
「役目って・・・何?」
その役目を知らない僕は途方にくれていました。
「ん?魔王を倒す役目だ」
やつれたキョウとつやつやとしたメリリアが席に現れていじられたこと以外は特に何もなかった。
朝食の間の話しとして勇者の役目の話題が出たので聞いてみたんだ。
「でも、魔王なんていません」
メリリア姫がきっぱりと断言する。
キョウは魔王を倒す役目だと断言して、メリリア姫は魔王は居ないと断言する。
不毛な争いは食事後にまで長引いたが、僕は先ほどから思っていたことをようやく発言することが出来た。
「これから魔王になる・・・とか?」
一番考えたくないことでもある。いままで魔王ではなかった。一番見つかりにくく、一番道のりが長そうなこと。
そして、勇者と共に魔王の居ない世界へと産み落とされた僕が魔王ではないのか?
可能性が大きいだけに、そして戻れる期待があっただけに不安が増大していく。
「「なるほど・・・」」
二人は納得すると姫の自室へと入っていった。いつからそんなに・・・昨日か。
「調べの進んでいない海、もしくは貴方でしょうか」
いままで何も喋らなかったファルが突然核心を突いてきて、多少は動揺してしまった。
「海、だと期待しておくよ」
曖昧な笑みを浮かべながらこの日、僕は王城から姿を消すことになった。