姫様の暴走と怪しい黒ずくめ
「姉上、誰に吹き込まれたか・・・は予想が付きますが、そういう行為は夜にやるものです。いいですか?」
ファルに言われて落ち着いたメリリア姫はしょんぼりとしている。
「グスン・・・じゃあ、夜にならしてもいいのね?」
「ええ、もちろんです」
「うー!むぅぅぅぅーーーー!!!」
いいぞもっとやれファル!
僕は心の中でファルとメリリア姫を応援しながら腕の中で何かを言おうとしているキョウの口をふさぐ。
「分かったわ・・・また夜に。勇者様」
ぺこりと一礼して出て行く・・・わけではなくベッドに腰掛けるメリリア姫。そういえばここは彼女の部屋だった。
僕はキョウの口をふさぎながら部屋を出ようと進む。するとドアを開いてくれたファルに軽く頭を下げて廊下へ連れ出す。
僕達は次にファルの部屋へと案内された。疲れた腕を下ろしてからため息をつく。
「疲れ」「リュー!なんで止めた!」「面白そうだったから」
後ろから大きな怒鳴り声が聞こえてきたので軽くスルーしながら一息つく。
「あ、サンキュ」
紅茶を優雅な手つきで入れてくれたファルに感謝の言葉を述べて一口すする。
後ろでは廃人のように壊れた「どうしよう」しか発言しないロボットが音を鳴らしていた。
「で、今のうちに逃げると」
夜になり、夕食を王家の皆さんと共にとった僕達は客室へと通された。
キョウは僕と二人になるなり窓から逃亡しようとした。
「そして捕まると」
僕の目の前には黒ずくめの人間とぐるぐるに縛られたキョウの姿があった。ちーん。
「ちーん、じゃねぇよ!助けろよ!どう見ても怪しいだろ!?」
「いや、多分それ姫だし」
そう、雰囲気や物腰や体型などが酷似しているのだ。どこぞの暗殺者のように素早かったのは言うまでもない。
「メリリア姫、どうぞご自室へと連れ帰ってください。なんなら私がこの席を外しましょうか」
「そうして貰えると助かります、リュー。どうやら貴方はとても素晴らしい方のようです。私のことは呼び捨てでよいですよ」
ふわりと外見には似つかわしくない妖艶な笑みで返された僕はすぐさま退散した。向かうはファルの寝室だ。
「リュー!裏切ったなぁぁぁ!!!」
裏切るも何も初めから味方になった覚えはない。