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異世界からの帰還  作者: 東波 広
序章【勇者召喚】
12/19

勇者召喚の真相

「よくぞ来た。勇者よ、そして異世界人よ」


 王は玉座から立ち上がり階段を下りてくる。


 兵士達は止めようとすらしない。普通なら止めようとするはずじゃないかな?


「我が国での召喚は初のことで、な。海の上に落としてしまいすまないと思っている」


 王様は僕達の前で見事な土下座をしてきた。




 そんなことになった経緯を説明しようと思う。


 朝。僕達が目覚めると女将さんが血相を変えて部屋に飛び込んできた。


「あ、あ、あ、あんたたち!すぐ逃げな!」


 僕は寝ぼけ眼で女将さんを見つめ続ける。何かを叫んで僕の肩をゆすっているのは・・・わか・・・ぐぅ・・・。


「女将さん落ち着いて。何があったか説明してくれ」


 朝に強いキョウが女将さんを宥めはじめたので惰眠をむさぼることにしよう。そうして意識をふわふわの海に漂わせた。



「おい、リュー起きろ」


 ペチペチという音と共に頬が叩かれる。


「あと・・・5時間・・・」


「そこは5分だろ!?じゃなくてさっさと起きろ」


「あぁぁぁあ~」


 ペイッと布団をはがされてしまう。


「王から令状が下った。王城へと出頭しろだってさ」


「ん?ああ、うん」


 王から出頭命令?それがどうしたー、僕は今眠いんだー。


「王から出頭命令だって!?」


「ああ、だから早く準備しろ。行くしかないだろうな」


「ん、ちょっとまって・・・。ああ、そういうことか。大体の事情は分かった」


 あのストーカー達は王の手先だったって訳だ。あの老紳士は王の回し者か?理由は今はなんともいえないか。


「よし、行こう。理由は分からないけど行かないと後々面倒になりそうだし」


「分かったって・・・王からの召集なら何も考えずに受けるべきだろう」


 それも一理ある。朝ごはんは抜きか。



 僕達は、宿の入り口で待っていた騎士達に連れられて王城に強制出頭させられた。


「ここで王がお待ちだ、失礼があったことを王に代わってお詫びしよう。さすがに重鎮達の前で謝りは・・・しないといいが・・・」


 謝ってきた騎士により大仰な門が開かれる。


 奥の玉座に座るのは国王と思われる白髪と白い髭が目立つ人だ。典型的な王様だ。


 その斜め後ろに妻と思われる女の人、その後ろに侍従服を着た女の人。


 逆側の斜め後ろには二席。王に近いほうに王女と思われる人物が、遠いほうは空席となっている。


 そこまでの道には兵士が配置されている。


 さらに兵士の後ろには、おそらく重鎮達がいるのだろう。薄暗くて見辛い。


「こちらです」


 件の騎士に先導されて歩いていく。僕は堂々と、キョウも堂々と胸を張っている。


「止まってください。ああ、膝は付かないでもかまいません」


 騎士が敬意を示すように膝を突いたのを真似ようと二人で動くと、騎士が制してくる。


「お連れいたしました、国王陛下」


「よくぞ来た。勇者よ、そして異世界人よ」


 王は玉座から立ち上がり階段を下りてくる。


 誰もが止めようとすらしない。普通なら止めようとするはずじゃないかな?


「我が国での召喚は初のことで、な。海の上に落としてしまいすまないと思っている」


 王様は僕達の前で見事な土下座をしてきた。


「王が頭を下げる必要はないのではないでしょうか」


 僕が発言すると王が顔を上げて正座をする。


「今回はこちらの不手際であり、勇者でないものまで巻き込んでしまった。素直に認められぬ者が王として君臨したとしても一代で滅びるであろう。そして勇者と王は対等な関係であると神により定められておる。心配しなくとも大丈夫だ」


 なるほど、勇者はかなりの地位にいるのね。


「なら僕は下がりましょう。勇者様、あとはお任せします」


 慇懃に礼をすると一歩下がってキョウを矢面に立たせる。


「俺に任されてもな。王様は謝ってくれたし周りにいる人たちも一部を除いて問題に思っていないようだ」


 スッとキョウが流し目を送ると重鎮の何人かの焦る空気が感じられた。


「俺の待遇は良いようだが、リューの待遇もきちんとしてくれ。どうやら巻き込まれただけのようだし、彼がいなければ俺は海で精神が参っていただろう。これでも感謝してるんだぞ、リュー」


 だからその無駄にイケメンオーラをやめろ。それで微笑まれても女しか落ちないぞ。


 苦笑いを返すと視界の端に王女の赤くなった顔が写る。もちろん僕じゃなくてキョウにやられたんだろう。


「分かった、それは約束しよう。他の要望はそこの騎士に言っておくといい。出来る範囲ならかなえよう」


 国王は立ち上がり、もとの椅子に座って国王の雰囲気をかもし出している。


 嫌いなタイプじゃないな。そんな風に思いながら騎士に連れられて謁見室をあとにした。

序章終了です。

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