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社畜だって異世界転移したらフリーター  作者: 蒼乃ゆら


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第二話 触らぬドラゴンに祟りなし

目を開けると、見たことのない景色が広がっていた


耳に届くのは、静かな波の音


規則正しく打ち寄せる水の音が、やけに心地いい


「……ここ、どこ?」


体を起こすと、そこは海岸だった


白い砂浜がどこまでも続いていて、足元には小さな貝殻が転がっている


潮の香りがふわっと鼻をくすぐった


ゆっくり顔を上げる


視線の先――


海の向こう側に、小さな町が見えた


赤い屋根が並ぶ、どこか絵本みたいな港町


船がいくつか浮かんでいて

煙が上がっているのも見える


「……すごく綺麗な街」


思わずつぶやく


こんな景色、見たことない


「……あ」


ふと、昨夜のことを思い出す


召喚儀式

田中

謎の魔法陣


「……もしかして」


嫌な予感がする


「……ここは異世界?私が召喚された?」


しばらく沈黙


そして、ふと気づく


「……今日、仕事は?」


頭の中が止まる


「……行かなくていいの?」


ゆっくりと、理解が追いつく


「サービス残業も……ない?」


「田中も……いない?」


――――


「……最高じゃん」


私はその場に寝転がった


空が広い

風が気持ちいい


「もう、頑張らなくていいんだ……」


じわっと、涙がにじむ


「ちょっとのんびりするかー」


そうつぶやいて、目を閉じた


――ぺしっ


(……ん?)


顔に何かが当たった。


紙?


ゆっくり目を開けて、それを手に取る。


「……なにこれ」


そこには、大きくこう書かれていた。


『これであなたも召喚士!』


「……は?」


思わず二度見する。


『初心者歓迎!誰でも簡単に魔物を召喚!今なら入会金無料!』


「いやいやいや」


私は思わず笑ってしまった。


「こんなんで召喚士になれたら誰も苦労なんてしてねぇですよ〜」


紙をひらひらさせる。


(いや、でも召喚士になって好きなもの好きなだけ召喚して自由に生きていくのはアリかも……)


なんて考えが頭に浮かぶ


「……あそこ、行けるのかな」


目を細めて距離を測る


海を挟んでいるけど、よく見ると――


「……あ、つながってる」


海岸線はぐるっと続いている


このまま歩いていけば

向こうの町まで回り込めそうだ


「ん〜」


少し考えて、ぽつりとつぶやく


「……自転車とかあればいいのに」


沈黙


そして


「自転車、召喚」


両手を空に向かって広げてみる

……何も起こらない


「……なんつって」


自分のしたことに恥ずかしくなる


「はいはい、そうですそうです、私は召喚士でもなんでもないただの人間ですよー」


そのときだった


――ゴゴゴゴゴ……


地面が揺れた


「……え?」


足元に光が広がる


見覚えのある模様


「これ……魔法陣?」


一瞬の沈黙


そして――


「あれ、これもしかして、きたこれ?」


心臓がドクンと鳴る


「やだこれ!」


思わず顔がにやける


「自転車召喚されちゃう?」


テンションが上がる


光が爆発する


「え……」


固まる


目の前にいたのは――


赤黒い鱗に覆われた

巨大なドラゴンだった


黒に近い赤の鱗は光を鈍く反射していて、どこか不気味で、圧倒的な存在感を放っている。


思わず息をのむ


「……ドラゴン?」


その身体は、ただ大きいだけじゃない


よく見ると――


鱗の隙間から、無数の傷が見えた。


抉れたような跡

焼け焦げたような跡

まるで、何度も何度も戦わされてきたみたいに


「……なにこれ」


静まり返るその場


風の音だけがやけに大きく聞こえる


一歩、後ろに下がる


「……と、とりあえず」


「一旦ここから離れよう」


(うん、それがいい)


「触らぬドラゴンに祟りなしって昔から言うしね」


私はそっとその場を離れ始めた――が


(……いや、待てよ?)


足が止まる


振り返る


ドラゴンは微動だにしない


(私、自転車召喚したはずだよね?)


腕を組んで考える


(……やけに静かだし)


暴れる様子もない


むしろ、おとなしい


(……あぁ!そっかそっか!)


ひらめいた


(たしかに、こっちの世界には自転車って無いのかも)


一人で納得する


(だからこれが“自転車”みたいな?)

(気軽に乗って移動できますよーてきなね)


(本物のドラゴンだったら、こんなに静かにしてるはずないよね)


私はくるっと向きを変えて、ドラゴンの元へ戻った


「あ、あの〜」


恐る恐る声をかける


返事はない


当然だけど


それでも、次の瞬間


ドラゴンの瞳だけが、すっとこちらを向いた


顔は動かさない


巨体は微動だにしないまま――


ただ、赤く透き通るようなその瞳だけが

ゆっくりと私を捉える


思わず息をのむ


宝石みたいに綺麗なのに、どこか冷たさを感じる


ドラゴンはわずかに目を細めた


まるで値踏みするみたいに


それとも――


警戒しているだけなのか


「……っ」


心臓がドクンと鳴る


「で、できればあっちの街に行って見たいんだけどさ〜」


街の方を指さしながらごまかすように笑う


「乗せてくれたりするかな?」

「背中、ちょっと借りてもいい?」


ーー沈黙


ドラゴンの反応もない


「い、いやぁ〜ね、私、初めてこの辺来てさぁ〜、まぁ、来たって言うか飛ばされた?ちょっと土地勘なくて困ってたんだよね〜」


私はそっとドラゴンの尻尾に手をかけた


「よいしょ……」


高い


でも登れる


「ちょっと、失礼しますよー」


尻尾からよじ登り、鱗に手をかけて――


「おお……すごい!」


なんとか背中にたどり着く


広い


安定感がすごい


「あ、おっけーでーす」

「進んでもらって大丈夫ですよー」


満足げにうなずいた、そのとき



ピィィィィィィィィッ!!


警笛の音が響く


次の瞬間――


ドドドドドドド……!!


地面を叩く音が近づいてくる


「……なにあれ」


振り向いた先


土煙を上げながら、馬に乗った兵士たちが一斉に駆けてくる


鎧を身にまとい、槍や剣を構えたまま


その数は、一人や二人じゃない

数十人?ーーいや、数百人はいる


「いたぞ!!」

「封印が解かれたというのは本当だったか」


「うわ、めっちゃ来る……」


嫌な予感しかしない


あっという間に距離が詰まる


逃げ場なんてない


完全に――囲まれていた


(……これ詰んだ?)



最後まで読んでいただきありがとうございます。

次回は騎士団長とのやり取りや、ドラゴンとの関係にも少しずつ変化が出てくる予定です。


引き続き、ゆるく見守っていただけたら嬉しいです!

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― 新着の感想 ―
蒼乃先生はじめまして(●´ー`●) 読ませていただきましたぁ! 保育士さんが、異世界に転生!見た事ない設定で 面白そうですね! 多分、チート能力とか付いたわけじゃないと思うので、 保育士の経験を活かし…
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