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 一月ほどして、新しいラベルのデザインができあがった。


 名称はアゲハビール。オナガアゲハのシルエットで、価格は七百円だ。


 貼付のQRコードを開くと、山椒の生育環境や、アゲハの飼育状況が閲覧でき、さらにユーザー登録し、一定の本数を購入すれば、名付けと、現地で見学できる権利を獲得できる。


 世間への周知は、身近な人脈をすべて使った。


 まずは、中之島トレーディングの公式サイト。ただし、ここは普段、ほとんどアクセスがないそうだ。


 桜井は予想通り役に立たず、意外にも三国が戦力外だった。


 もっとも影響力があったのは、やはり涼葉だ。彼女の友人とその知人、合わせて数百の若い女子が、繰り返しネットで拡散してくれた。


 結果、SNS上での認知度が、少しずつではあるが広まりを見せ始める。


 幸運に恵まれた点が二つ。一つには、秋が長かったことだ。本来であれば、サナギになって越冬する時期になっても、多くの幼虫が動く姿を見せることができた。


 予想外だったのは、飼育環境モニターに対しての反応が、おおむね好意的だったことだ。それなりに大がかりな仕組みの割に、イモムシを見るだけという無駄さが、逆に注目を集めることになったらしい。


 さらに二ヶ月ほどした頃、関西のローカルテレビ局で、わずか三十秒ほどではあるが、取り上げられた。


 廃棄されるはずだった葉を無駄にせず、希少種の飼育に使うという点を、やや大げさにではあるが、高く評価する内容だった。


 それをきっかけに、雑誌からの取材や、居酒屋からの問い合わせが徐々に増え始め、年が明ける頃には、地元の高速道路のサービスエリアにも置かれるほどになった。


 社員となった藤阪の活躍は予想以上だった。


 豊能町の作業場から箕面まで、片道一時間の道のりだ。


 山田のチームを脱退した村野から譲り受けた自転車で、リュックに幼虫と葉っぱを詰め込み、放課後に行き来するだけでもかなりの労力だったはずだが、加えて、土日には、理科大の大学生とともに、バックヤードツアーの案内係りも引き受けた。


 さらには、女性がいない職場に、十代の女子がやってきたことで、村野の言葉を借りれば、枯れる寸前の木に液肥をやったときのように、先輩従業員たちが生き生きとし始めたという。



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