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3-2

 四限の授業のあと、涼葉と会う約束になっていた。


 朝の出来事を伝えれば、一方的に言われっぱなしだったことを叱られる。その話題にならないことを祈りつつ、待ち合わせのカフェテリアに向かう。


 すぐに姿を現した彼女は、顔を見るや、携帯を取り出し、綺里に向かって連写を始めた。


「何してるのさ」

「普通、撮るでしょ。不良が心機一転、就職活動始めました、って場面なんですし」

「この格好なら、試着のとき、見てるじゃないか」

「午前中、会社に報告に行ったんですよね?スーツに何かコメント、ありました?」

「あーしの日常を完璧に把握するの、いい加減やめてよ。プライベートがなくなるだろ」

「何言ってるんですか。同行したとかならともかく、予定を知ってたくらいで。本当なら箸の上げ下ろしまで監視したいくらいなんですから。それで、どうだったんです?」


 いきなり退路を閉ざされ、事情を話すしかなくなった。


 あったことをできるだけ感情をこめずに伝える。途中からあきらかに不満そうな表情になっていた彼女は、話し終えるや、またしても机を叩いて立ち上がった。


「何ですか、その女はっ」


 半沢直樹のシーズン3にでも出るつもりか。


 今回も、周囲の視線を集めているが、まるで気にする様子がない。


「髪型とかに口出しするなんて、昭和の会社ですか。だいたい、どうして綺里姉は反論しなかったんですか」

「無理だよ。相手は社会人のプロみたいなやつだったんだから。とりあえず座って。上から威圧されると怖いんだって」

「どこがプロですか。いいですか、初対面の相手にそんな口の利き方をする段階で、すでに社会人失格じゃないですか。あと、飲み物を自分の分しか出さないとか、失礼にもほどがありますっ」


 彼女はどうにか腰を下ろしたが、腕と脚を組み、怒りが収まらない様子だ。


「だけど、名刺を片手で受け取るとか、あーしにも落ち度はあったわけだし――」

「誰だって最初は未経験なんですよ?丁寧に教えればいいじゃないですか」


 その言葉に、はっとした。


 なるほど、仮に綺里が新入社員としてあの場にいたなら、相手の態度もまた違っていたかもしれない。


 だが、今は仮にも、社外取締役という立場。社員たちの上司ではないが、ときに経営に関与することもあるのだと、参考書には書かれていた。


 下座ではないが、完全な客という立場でもない、微妙な立ち位置だったのだ。


 あのとき、飲み物を自分の分しか出さなかったのは、きっとそれが理由だ。


 後輩が熱く文句を言ってくれたおかげで、多少は冷静に考えることができた。


 悔しくはあるが――態度は別にして、あの女に、責められるべき落ち度がほとんどなかったことを、改めて認識させられた。



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