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第8章 29 冬フェス ヴァーチャルリンク開催

各チームが、ポイント獲得を目指して一斉に駆け出す。


ヴィクトリアに続こうと、


それぞれが最短ルートへと突き進む――が。


次の瞬間。


各ルートの各所で、


足を止められるチームが続出した。


「なんだよこれ……!?」


「マジかよ……!」


橋を守るように配置された、


武装ゴーレム。


接近と同時に警告音を鳴らし、


迎撃モードへ移行。


無機質な巨体が、


容赦なく襲いかかる。


さらに――


赤く走る無数のセンサーライン。


それに触れた瞬間、


都市そのものが変形する。


壁がせり上がり、


道が閉ざされる。


進路が、消える。


「これじゃ進めないじゃない……!」


開始直後から、


各チームは足止めを食らい、混乱に陥る。


阿鼻叫喚。


思うように進めない絶望感が、


空気を支配していく。


――その中で。


一つのチームが、前へと飛び出した。


ラリーチーム。


愛ロイドのアイドル、ラリーを中心としたチームだ。


卓越した運動神経。


変化する都市構造を即座に読み取り、


それを“足場”として利用する。


パイプを蹴る。


壁の隙間を踏む。


崩れかけた足場すら、次の一歩へと変える。


障害物も、壁も、


そのすべてが“ルート”になる。


「凄いぞラリーチーム!


 華麗なパルクールで都市を攻略していく!」


解説の声が弾む。


それを支えるように、


サポートするギルド“ストリートロード”のメンバーたちが連携する。


最後の難所。


高くそびえる壁。


一歩、届かない――


その瞬間。


ストリートロードのリーダー、クランプが手を伸ばす。


ラリーの手を掴み、


一気に引き上げる。


――そして突破。


一方、別のルートではゴーレムの群れを前に、


別のチームが進路を切り開いていた。


愛ロイドのティーナ率いるチーム。


その先頭を走るティーナは、ゴーレムを前にして


微笑みを崩さない。


背後では、


ブレイブワルツのメンバーが武器を構える。


「――皆、フルセッションだ!」


リーダー、カツラギの号令。


メンバーの1人が弓を引く。


――音が、鳴る。


弦を引くたびに響く音は、


矢の代わりに空間を駆け抜ける。


その“音”を受けたゴーレムは、


痺れたように動きを止めた。


間髪入れず、


別のメンバーが手にした鉢を振り下ろす。


衝撃が内部に伝わり、


ゴーレムの身体が内側から崩壊していく。


一体、また一体。


まるで演奏のように。


リズムを刻むように、ゴーレムを破壊していく。


さらに。


カツラギが弦楽器を奏でる。


その旋律が、


チームメンバーの身体能力を引き上げる。


強化された動き。


鈍重なゴーレムの攻撃を翻弄しながら、


ティーナたちは一気に駆け抜けた。


――突破。


両チームは、それぞれ中ブロックへと到達する。ティーナチームはホテル街へ。


ラリーチームは高級商業街ブティックストリートへと到達する。


圧倒的な突破力。


その勢いのまま最前線に躍り出た両チームに、


観客の声援が一層強くなる。


ホテル街――


ティーナは足を止め、


静かに周囲を見渡した。


その視線は鋭く、


空間そのものを測るように動く。


「……あそこにしよう!」


指差したのは、


ホテルの一角にあるテラス席。


「大丈夫なのかい?


 ただのテラスに見えるけど……」


ブレイブワルツのメンバーが、


不安げに声をかける。


ティーナは、迷いなく頷いた。


「大丈夫。――私を信じて」


にこやかな笑顔。


その一言に、迷いはなかった。


引き寄せられるように、


メンバーたちはティーナの後に続く。


テラスに立つ。


何の変哲もない空間――


だが。


ティーナが立った瞬間、


景色の意味が変わる。


風を受ける角度。


光の当たり方。


背後に広がる都市のライン。


すべてを計算した立ち位置。


「――撮るよ」


シャッターが切られる。


「……これ……」


「うん……いけるかも!」


モニターに映し出された一枚。


そこには、


“ただのテラス”ではなく――


舞台のように成立した空間があった。


ティーナは自然に表情を切り替える。


柔らかさと強さを同時に持つ、


完成されたアイドルの顔。


「仕上げるね」


指先が滑る。


光が加わり、


色が整い、


一枚の写真が“作品”へと変わる。


「――はい、アップ」


迷いなく投稿。


――一方。


ブティックストリート。


高層の建物が並び、


光が反射し合う、華やかな空間。


ラリーはそれを見上げ、


わずかに眉をひそめた。


「……うーん。


 ここ、ギラギラしすぎて私好みじゃないなぁ」


あっさりとした一言。


「もう、路地で撮っちゃおっか」


「はは、身も蓋もねぇな」


ストリートロードのメンバーが笑う。


「でもまあ、俺らにはこの場所は似合わねぇしな。


 路地裏の方が、よっぽど居心地いいぜ」


ニヤリ、と笑い合う。


迷いはない。


彼らは自然に、裏通りへと足を向けた。


光の届きにくい、静かな路地裏。


壁に背を預け、並ぶ。


無理に作らない。


飾らない。


そのままの空気。


「――いくよ」


シャッター。


出来上がった一枚は、


まるで音が聞こえてきそうな――


ジャケット写真のような完成度だった。


「いいじゃん」


ラリーは満足そうに頷き、


そのまま登録する。


――その瞬間。


デバイスに通知が走る。


《同エリアにて他チームが写真を登録しました》


《投票バトルに移行します》


画面が切り替わる。


カウントダウン。


その下に表示されたチーム名。


ラリーチーム。


そして――


汐花チーム。


「……汐花……!?」


ラリーは即座に顔を上げ、


路地を抜けて周囲を見渡す。


視線の先――


ホテルの屋上。


風に揺れる髪。


静かに立つ、


汐花と葵時雨の姿があった。

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