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第8章 26 冬フェス ヴァーチャルリンク開催

パフォーマンスが終わり、

盛大な拍手に包まれる中、


汐花はにこやかに手を振りながら、

静かにステージを後にした。


――画面が切り替わる。


映し出されたのは、

解説役のDBディービー


「以上でパフォーマンスタイムは終了です!」


「いやぁ、アイドルたちのクオリティの高さに、

 私、感無量でございました!」


「この後は準備時間に入りますので、

 13時30分までしばしお待ちください!」


「なお、事前投票による優勝予想も実施中です!

 デバイスからぜひご参加ください!」


アナウンスが終わると、

会場は一気にざわめきに包まれる。


紗良と美咲は、

同時に大きく腕を伸ばしながら席へ腰を下ろした。


その横で、


迅はふと、

会場の後方へと視線を向ける。


観客席の奥は壁がなく、

大きく開けた吹き抜けになっていた。


その向こうには――


青く輝く地球。


仮想世界だと分かっていても、

ここが月面であるという実感は、

いまだに薄い。


そんな中――


デバイスに着信が入る。


『やっほー、見てくれた〜?』


リリカの声。


少しだけ呼吸が早く、

興奮がまだ抜けきっていない様子だった。


「見たよ。凄かったな」


『ほんと!?ありがと!』


迅の言葉に、

リリカはほっとしたように声を弾ませる。


『控室にいるから、

 今からみんなに転送コード送るね』


すぐにデバイスへコードが届く。


タッチした瞬間――


視界が反転した。


次の瞬間には、

控室の前へと転送されていた。


あまりの速さに、

三人は思わず顔を見合わせる。


その直後、


後方に、もう一つの転送エフェクト。


キャットが現れた。


「何や!ビックリした……!?

 リリカから連絡来た思ったら、

 いきなり目の前に皆おるやん!」


状況を把握できず、

きょろきょろと周囲を見回すキャット。


そのとき――


控室の扉が開く。


中からリリカが顔を覗かせた。


「いらっしゃい!入って入って!」


まだステージ衣装のままの姿。


それを見た瞬間、


「か、可愛い……!!」


美咲が悶絶する。


迅は呆れたように息をつきながら、

美咲を軽く押して中へ入らせた。


――そして。


一歩足を踏み入れた瞬間、


目の前に広がったのは、

南国のリゾートのような光景だった。


白い砂浜。

揺れるヤシの木。


遠くからは、

波の音と海鳥の鳴き声が聞こえてくる。


想像していた“控室”とは、

あまりにもかけ離れた空間。


「驚いた?」


リリカは楽しそうに笑う。


「スタッフさんに頼んで、

 私の個人待機室と同じデータにしてもらったの」


「ここで普段、

 曲の練習とかしてるんだ〜」


慣れた様子で、

パラソルの下にあるテーブルチェアへと腰を下ろす。


そして――


「さ!最終確認、始めよ!」


空気が一気に切り替わった。美咲は、各自の役割を改めてデバイスへ転送した。


全員の視界に、

作戦内容が同期される。


それぞれが、役割を再確認する。


・迅/紗良

 偵察担当。

 先行して移動ルートの確定、

 および妨害の排除を行う。


・美咲

 全体指揮。

 リリカと共にチームの中心に位置し、

 ルート指示とイレギュラー対応を担当。

 キャットのサポートも兼任。


・キャット

 撮影/演出担当。

 小道具や演出の準備、

 ロケーションの選定とアイデア提案を行う。


・リリカ

 被写体兼情報収集。

 撮影に集中しつつ、

 待機時間には他チームやアイドルの動向、

 SNSなどから情報を収集。

 その内容を美咲へ共有する。


さらに――


予測される転送位置や、

想定される移動ルートもすでに組み込まれていた。


全体マップには、

いくつものルート候補が表示されている。


その徹底ぶりに、


「……すごい」


リリカは思わず息を呑む。


そして、


「美咲、本当にありがとう。

 こんなに一生懸命手伝ってくれて……」


「あなたたちに頼んで、本当に良かった」


改めて、まっすぐに言葉を向けた。


「お礼なんて言わないでよ!」


美咲は即座に首を振る。


「絶対勝とうね!」


その声は、少しだけ震えていた。


「任せとき!」


キャットが胸を張る。


「リリカは私がしっかり撮影する!

 八雲商会が全面バックアップするよ!」


力強くポーズを決める。


「リリカ、安心して」


紗良が静かに言う。


「私と迅で、ちゃんと道を作るから」


その隣で、迅も小さく頷いた。


言葉は多くない。


だが――


そこに迷いはなかった。


礼も、遠慮もいらない。


ただ、やるだけだ。


その空気を受け取ったリリカの瞳に、

強い意志が宿る。


ゆっくりと、拳を差し出す。


それに応えるように――


四人も拳を重ねた。


五つの拳が、ひとつに重なる。

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